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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

90.超能力!?対決①

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「ピッピッ」
 視聴覚しちょうかく室に切り替わった。病気がちで見学するのも、
億劫おっくうになってしまった人がこっそりと集まっており、運
動場を見渡せる場所として有名の場所だった。

 タカフミはカーテンで閉め切られた部屋の窓際にいる
落ち着かない哀川を発見すると隣で大丈夫だからと連呼
している立花も視界に入る。入り口には白衣を着た見知
らぬ生徒が居たが立花の知り合いだと紹介され”科学博士はかせ
と読んで欲しいとの事だった。

「大山くん。すっげー緊張するんだけど大丈夫か?」
「まぁ、博士って呼ばれてる人もサポートに来てるんだ
し何とかなるんじゃないかな」
「他人事だと思って皆冷たいよ~」
「はいはい。グチはその位にして、この双眼鏡そうがんきょうでしっか
りと確認してね。後で答え合わせするんだから肝心の柄
が分からないと話にならないからっ」
「あぁ、そうだったな」
 気持ちを落ち着かせて深呼吸をした所で科学博士と紹
介された男が同学年である事を話した後に双眼鏡のピン
トは調整済みである事と覗く部分のレンズが汚れるのは
我慢ならないという事で眼科にある眼圧検査に用いられ
る様な目の周りに当てる樹脂じゅし部分と6本のパイプを連結
させた物が装着されており、約2センチのすき間が生ま
れている事を告げられた。過度の潔癖症けっぺきしょうであるからとの
説明であった。

「コホンっ。科学博士から一言。じゃあ、あらかじめ床
にビニールテープでバツ印を作って置いた場所に立って、
そこからカーテンを少しだけめくって覗いてくれるかな」
「分かった。移動するよ」
 科学博士の役目は一旦終わった様で教室の入り口付近
に待機する事となった。

「ポスト投稿とうこう時間は本日の昼休み中の12時半~13時
の30分に設定して今、12時30分だから、一人位は
来ても良い頃だと思うわ」
「で何人に招待状を渡したんだい?」
「あらっヤダ。言うの忘れてたわ」
 頬を赤らめながら話を続ける立花。
「えーと。全部で4人に出したわ」
「そっか何人来るかは、13時にならないと分からない
って訳だ。って言うかギリギリに現れたら俺たち遅刻ちこく
ないか!?」
 立花のキュート表情に鼻の下を伸ばしてたのも束の間
緊急事態が予想される事に気付いて表情が強張こわばる哀川。

「それは大丈夫、この後は2組合同の体育の時間だから
この学園では女子が体操着に着替える為の時間をある程
度確保してるから遅れても大丈夫」
「いやいや、女子は良くても男子にそんな制度無いって、
しかも普段、真面目に参加してる俺が今日に限って遅刻
してきたら明らかに怪しまれるだろう!?」
「そうか、全然気付かなかった……」
「……」
(どこまで天然なんだよ) 
「まぁ、その時は僕が付き添って腹の具合が悪くて保健
室に居た事にしよう」 
「成程、その手があったか。分かった。問題が起きたら
大山くんのアイデアを借りよう!」

 覚悟を決めた哀川はカーテンをそっと開けて双眼鏡を
覗き込むと運動場のど真ん中に設けられた階段がある特
設ステージと端にある投函ポストを目にした。
 



 
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