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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

73.交渉=ファースト・アタック=ギア・セカンド ①

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「そうそう、返事は直ぐじゃなくて良いからさ。一週間
くらい考えて結論けつろん出してね。もちろん参加して貰って僕
と一緒にやっていく自信が無くなったら、いつでも抜け
て良いし。ただし事前に連絡だけは入れて欲しい」
「すごい好条件だな。逆にあやしまれるぞ」
「そうかもね。でもしばりを強くした所で人間的魅力みりょくが無
い人には集まって来ないし良好な関係が続くとは思えな
いんだ」
「なるほど」
「僕は僕のやり方で仲間を集めて強いチームときそいたい
と思ってるよ」
「具体的には、どんなチーム作りなの?」
「野球で例えると4番ばっかりが集まっても守備範囲しゅびはんい
重なってたら成り立たないだろ?」
随分ずいぶんとはっきり言うね! 確かに俺もそう思うけど」
「つまり、個々の個性や特技を活かして個人ではなく、
チームとして最終的に勝てば良いと思ってるんだ」
「内野手のエラーを外野手がフォローする感じかな?」
「そういう事。強い奴が集まって強いのって普通だし、
つまんないよね? だから、このメンバーで大丈夫かよ
って油断ゆだんさせといて、いざ勝負となったらカッコイイ姿
を見せたいと思ってる」
「ふーん。そういう事考えるタイプなんだね。何か軍師ぐんし
みたいだな」
「体力が無いメンバーが集まったとしたら対抗できる手
段としては戦略せんりゃくしかないと思ってるし、そこにしか僕の
存在価値そんざいかちは無いと思ってるよ」
「考え方が少し行き過ぎてる気がする発言だな」
「そんな事ないよ。本当は自慢じまんできる自信なんか何一つ
持ってないし、薄っぺらいプライドしか持ち合わせてな
いから、ハッタリをかますしかないとも思ってる」

「じゃぁ、何でそこまでするんだ?」
「単純に自分がどこまで出来るか試してみたい!」
(根拠の無い物に情熱を注ぐ事が俺たち子供にとっての
幸せなのかもしれないが……)
 タカフミの熱弁と真っ直ぐなひとみに哀川の気持ちは揺れ
に揺れていた。保身ほしんばかりを考えてしまう自分の器の小
ささが身に沁みる度に。
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