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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

57.上級生の反応④

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「タカフミ。そろそろ質問タイムは終わりにしよう」
 タカフミはTシャツの中に隠していた銀貨を外に出し
て良く見えるように持ち上げてみせた。
「成程、こいつが例の銀貨か。ちょっと道具を取ってく
るから、ここで大人しく待ってろ」
 タカフミは黙ってうなずいた。手洗い場の下を見ると設置
部分周囲はタイルになってはいたが大部分は地面が広が
っていた。空を見上げると綺麗な夕焼けが見えており、
待ってると周りに人が全く来ない事に気が付いて不安に
なってきた。そこに明石が工事現場で見掛けるツルハシ
を左肩にかつぎながら右手に厚手の鉄板を持って現れた。
「何か始めるんですか?」
「まぁそうだ。パパッと終わらせるけどな」
 明石はツルハシの頭部より左右に長く張り出したとが
た先端部分を地面に当てて真横に線を引き始め、終わっ
た後にペンダントから銀貨を外すように指示すると重た
口調くちょうで話始める。
「悪く思うなよ。個人的な意見と組織そしきに所属してる時の
意見は同じではなく違う場合もある。さっきの話とは、
矛盾むじゅんしてるかもしれないがな」
「矛盾ってどういう意味?」
「意味は家に帰って辞書で調べろ。こっちの確認が終わ
るまでは、この線の内側には入って来るなよ」
 さっきまでの優しい表情は無く、眉間みけんにしわを寄せて
険しい表情になっている事にタカフミは気付いていた。 
「信用して良いんだよね!?」
「……」
 銀貨が明石の手に渡ると手洗い場の右隅みぎすみに鉄板を寄せ
てから、その中央に銀貨を置いて思いっきりツルハシを
振り上げる。
「どうして、そんな事するんだよーーーっ」
「今は分からなくても良い。俺にも立場があるんだ」

 体育館の裏側に隣接する手洗い場は運動部の洗濯物を
する為に設置されたものでラグビー部が主に使用してお
り、夜八時を過ぎてからで無いと来る事はない。後は、
早朝に利用するだけだ。
 
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