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第一章:始まりの世界

39.銀貨と”にらめっこ”②

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 文字については姉に聞くとして銀貨の事が知りたくな
った所でタイミング良く父親がドアをノックする。
「タカフミ。入って良いか?」
「良いけど……。何?」
「銀貨についての説明を私が書いておいた物を渡そうと
思ってな。要らないならてようと思ってるが……」
「捨てる事ないって! 読みたいから勉強机に置いとい
てほしい」
 おさええられない探求心たんきゅうしんによって大きな声がもれてしまう
タカフミ。
 ギクシャクしていた関係がうそのように父親は嬉しそう
な顔をしながら、さっと用事を済ませて退席たいせきしていた。

 父親がその場から居なくなると急いで階段を下り、自
身の勉強机に向かう。途中で足をみ外したが興奮こうふんして
いるので痛みもなく椅子に座って封筒から便箋びんせんを取り出
して横書きされている文章を食い入るように見た。

「サイズは金貨に使われる直径約33ミリ 1/2オンス
(約15.5グラム)銀貨は直径約65ミリ 5オンス
(約155.5グラム)最高品位の純銀じゅんぎん(.999)で鋳造ちゅうぞう
完全未使用・無疵むきずのプルーフ品質 英連邦クック諸島政府しょとうせいふ
発行 法廷貨幣ほうていかへい  銀貨の価格は約八万円」
 
 どうして銀貨のサイズより小さい金貨サイズが採用さいよう
れてるのか不思議に思ったが答えは赤字で書かれていた。

「銀貨の裏面を上にして、中央の部分に対して指で連続
した動作を三回繰り返すべし、リズムは一定である事。
元のサイズにする時は同箇所どうかしょを一回だけ叩くべし」

 さっそく試しに五芒星の中央部分に人差し指で、3回
連続でタッチしてみる。
「ドゥッ」
 奇妙な音と白い煙が出て銀貨が目の前から消えたかと
思うと視界が晴れた瞬間、便箋に書かれていたサイズの
銀貨が現れていた。

*プルーフコインとは贈答品ぞうとうひんや記念品向けに特殊な技法
駆使くしして発行する貨幣であり、模様を鮮明せんめいにするため
に極印(型)を二回以上打ちつけるなどして入念にゅうねん製造せいぞう
されるものである。



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