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第一章:始まりの世界

31.故郷の記憶

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 視界は小学生の背丈せたけになっているので不思議ふしぎな感覚で
はあるが何処どこなつかしい感じがした。この感覚を味わう
為にNリバイバルを使用しているのかもしれない。祖父
が亡くなって父親から本と銀貨を貰う日までは自発的に
誰かに話しかける事はせず、聞かれた事に対してのみ答
える事を繰り返していた。なので、この時は未だ感情かんじょう
流れを感じる事が出来ない。

 次の再生映像が流れるまで時間がありそうなので自分
の生まれ育った町を簡単ではあるが紹介するとしよう。
隠岐の島町は島根県隠岐郡の町(島後に位置する)であ
り、およそ人口1万7千人で面積は242.83 k㎡(琵琶湖
の約36%)である。
 隠岐の島町の北西約158kmには竹島がある。面積
の約80%を森林が占めている自然豊かな場所で町の花
に美しいピンクや白い花をつける”隠岐しゃくなげ”が
ある 。島はほぼ円形に近い火山島なのも特徴だ。夏冬の
気温差の比較的少ない海洋性気候で厳寒期を除いて通年
温暖なのだ。

 小学校に通うことになった頃、祖父と同居していた実
家を離れて新築の五階建てのマンションに移り住んだ。
一人だけ、心を許せる存在の人物が小学3年生に進級し
た時に隣の部屋に引っ越してきた”おじさん”だった。
 家計を助ける為、パートタイマーの仕事を母親が始め
る時期と重なり、仕事で遅くなった時は、おじさんと遊
ぶ事が多かったが嫌な顔一つせずに毎回受け入れてくれ
た。おじさんと遊んでいると心が凄く落ち着く感じがし
たのを今でもハッキリと覚えている。


島後=隠岐諸島中最大の島
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