少年と銀貨 第一章：始まりの世界

プロローグ

１９．明かされる真実

「何か心外しんがいだな。今回はプラモの半壊はんかいでも無いし。ここ
だけの話。実は、タックルが当たる前に痛みを感じない
程度の掌底しょうていを左右交互こうごに放って威力いりょくを三分の一に削けずって
たんだよ。あきおはショルダータックルの加速中は真下
しか見て無いからさ」
「つまり、先に威力を削ってから当たる位置まで戻って
衝撃しょうげきを制御せいぎょしてたってことですか？」
「そういう事。俺には前を向きながら後ろに下がる”月歩げっぽ”
があるから、そんなに難しい事ではないさ」
「島に伝わる伝説の奥義おうぎを会得えとくしてたなんて……。中国
拳法も対戦相手が見えないだけで使用してたってオチで
すか！？」
　理解するレベルを超えていると思わせる頭がクラッと
した状態に陥おちいる石神ジュニア。
「正確に言うと中国武術ぶじゅつの八卦掌はっけしょうになるんだが掌底の方
がイメージが湧わきやすいだろ？」
「拳こぶしより掌てのひらを多用し直線運動よりも円運動を重視じゅうしして
る武術ですね！」
　眉毛まゆげを釣り上げる仕草しぐさをするが左手首に巻かれた白色
のGショックで時刻を確認する清武。
「ジュニア君。詳しいね。無駄話むだばなしはこれ位にして結論けつろんを
言うよ。つまり、俺にボコる理由は無い。確実かくじつに打撃だげきは
使用してるから今度は打撃無しで倒たおすよ」
「……」
（十代のパワーでは、この人は倒せないのか！？）
「返事を忘れてたけどプラモのサイズ合ってるから宜よろし
く頼む。シゲ坊に代わってくれないか？」
「はい。気合い入れて対応させて貰います。シゲさん。
清武さんから話がしたいそうです」

　シゲ松とのヒソヒソ（秘密ひみつの）話が終わると清武が、
場所を変えての提案ていあんをして決戦の舞台ぶたいが飲食店いんしょくてんの裏側うらがわに
決定した事をあきおに告げた。

＊月歩とは、上半身じょうはんしんは競歩きょうほの姿勢しせいを保ちながら後ろへと
ある程度、加速した所から大きな歩幅ほはばで走る”スライド
走法そうほう”を取り入れている。