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第一章:始まりの世界 ”チーム対抗戦” 

♯111.チーム対抗戦の始まり㉝ その後の不審者との交渉1

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 両チームによるボール投げ練習が始まろうとした
頃、フードを被って顔が良く見えない状態のパーカ
ー男と宮間&清武の旧友コンビによる一歩も、ゆず
らない睨み合いで静観状態が続いていた。

「もっと話が分かると思ってたんだけど回復する為
に開放してくれないのかい?」
 パーカー男は予定通りに物事が運ばない事に悲し
い表情を見せながら話す。
「初対面の人物に攻撃的な行動を取る不審者野郎を
まともに信用する人間はこの街には居ないぜ」
 清武は最もな意見を述べて相手の出方を待つ。

「やっぱり、B兄さんってフザさけた名前も駄目だ
っかな」
「たぶんな」
 宮間は道の真ん中に移動すると両手を広げて逃げ
道をふさいだ。

「両サイドからの圧が半端ないんですけど唯一信用
して貰える品物をアンタらに預けるよ。ほらよっ」
 パーカー男は悩んだ末にズボンのポケットから、
中身を取り出して燕尾服の男に投げつけた。
「パシッ」
 宮間は、左手で受け取ると手の平の中の物を確認
する。
「中身は何だ?」
 清武が率直に宮間にたずねた。
「年代物の懐中時計だな」
「これはどういう意味だ!?」
 清武はパーカー男の真意が分からないので語気を
強めて質問した。
「先祖代々受け継いでる家宝だ。そいつを信用して
貰うために預ける」
「お前が俺たちを信じるのか? 価値があるなら、
売るかもしれないとは思わないのか?」
 清武は先に信用するという言葉を使われるとは、
思わなかったので動揺を悟られずに相手の真意を探
るべく話を続けた。

「俺の惚れ込んだ男や連れに、そんなダサ男は居な
いと信じてる。家宝と聞いて売るならクズ同然だか
らな。俺が一週間連絡も無しに尻尾を巻いて逃げた
時は質屋にでも入れて現金化しても構わないっ」
 両手を上に広げてのオーバーアクションで堂々と
した態度を見せてくるパーカー男だった。
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