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第一章:始まりの世界 ”チーム対抗戦” 

♯92.チーム対抗戦の始まり⑭ 不審者登場10

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 パーカー男が、のたうち回っている間に救急箱を持
ったヒカルと城ヶ崎が一緒に来てヒカルが大きく腫れ
上がった右手の治療を始める。城ヶ崎は汚れた顔を水
を含んだコットンでキレイに拭き取る作業に取り掛か
かっていた。

「宮間、どうでもいい話かもしれんが格闘技ゲームの
派手な技にこだわりすぎるのは時と場合にして貰いた
いもんだがなー」
「まるで見てたみたいな言い方だな」
「違うのか?」
「嫌、違わないさ。大正解だよっ。可愛い愛弟子だと
扱いが違うんだなと思ってな」
「弟子は、取らない主義だった考え方を改めて取る事
にした最初の弟子だから大切に育てたいと思っていた」
「一度で良いから俺も言われてみたいもんだね~」
 両腕を組んで話し込み始める宮間。
「恥ずかしくてダチに言えるかよ。それより、ずっと
気になったんだが両手、両足首に装着した重りは何時
外すんだ?」
「あっちゃー。やっぱバレてたかっ」
 右の掌で額を触って恥ずかしそうな顔をすると装着
した4個の重りを素早く外してみせた。
「見た感じだと両手が片方5㎏で両足の方が片方3㎏
位か?」
「あぁ、その通りだ。計16㎏の負荷が掛かっていた」
 ドヤ顔を見せる宮間に近くで聞いていた立花は耳を
疑う程、信じられなかった。重りを装着した人の動き
には到底見えなかったからだ。

 コールドスプレーで患部を冷やしてから包帯に取り
掛かろうとした所で手間取るヒカルに宮間が割って、
入るとテキパキとスムーズに巻き始める。

「まぁ俺の責任もあるし、包帯巻くのは得意だから、
ここは俺に任せてよ」
「はい。お任せしますっ」
 ヒカルが宮間と交代して少し経った頃に、城ヶ崎も
顔の緑色に汚れた部分をキレイに拭き終わっていた。
「こっちは終わったよ」

「さてと俺は別の用事があるから別行動するけど宮間
は何かあった時の為に付き添ってあげてくれ」
「おうっ、ーーー」
「あ~何だよ。宮間ちゃん。本気じゃ無かったのかよ。
俺ちゃん。ショックだぜ!」
 カッコ良く返事をしようと思っていた所にパーカー
男の発言で言葉をさえぎられてしまった宮間が憤怒の
形相へと変わる。
「今、しゃべってる途中でしょうがっつつつぁああー」
 いつの間にか起き上がっているパーカー男の右ボディ
を左腕から繰り出す高速のボディブローで突き刺す。
「ウゥッ」
 瞬きしていたら見逃していたレベルの動きに対して
パーカー男は両ひざから崩れ落ちて再びヨダレを垂ら
していた。
 
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