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実は神託を受けられる人が今3人居たりしますよ

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聖女アーニャはとある国に呼ばれていた。
何とこの世界唯一の王権神授の国である。
教会の元締め、聖国よりも神に近い国じゃないの?

この国の王権は初代が神から頂いたとかでは無く、次代が神託によって選ばれる。
その神託を確認する会議にアーニャは呼ばれたのだ。
他には聖国の法皇だか教皇だかと、この国の神官長が神託を受けられる。
聖女や勇者が存在しない時代にはふたりでの確認になるそうです。

部屋にはその3人の他に記録を取る聖国の人とこの国の教会の人。
それ以外は入室禁止とされている。
談合でいい加減な王を指名すれば神罰執行されるので監視などは必要ない。
むしろ神事なので他の者の入室は固く禁じられている。


「王子おやめください。
現在神託の儀が行われている部屋には何人なんびとも入れません。
王子と言えども神罰が降るでしょう。」

扉の向こうで騒ぎが起こっている。

「あれがそう?」

「ええ、聖女アーニャ、あれが件の王子でございます。
どちらにしろ神罰が執行されることは決まっていたのですね。」

神官長が呆れたように答えた。
その直後、扉が乱暴に開かれた。

「何が神罰だ。
何も起こらんではないか。
わたしこそが神に選ばれたのだから当然であろう。」

何を勘違いしているのかおバカが現れた。
後ろでは取り巻きらしき男たちに抑えられた、扉を守っていた衛兵が見える。


「さて、衛兵さん、その馬鹿と取り巻きを捕えてください。
期待に応えて神罰が執行されます。
次代の神託よりも神罰の宣告の方が長い儀式って何なのよ。」

「衛兵、聖女様のおっしゃる通りにしなさい。
そうですね、伝えられている神託の儀式にはこのような前例は有りませんでした。
それだけ神は今回の事態を重く見て居られるのでしょう。」

「聖国としても興味深く見せて頂こう。
神託での王権を受け入れるのであれば罪人の宣告も受け入れるのであろう?」

「当然受け入れますよね?
都合の良いものしか受け入れないとか言いませんよね?
第一、現行犯なのだから神託が無くても死罪ですよね。
無視するならば王権の神授も途絶えることになるでしょう。
特大の神罰執行も行われますよ?」

応援の衛兵も到着して王子と取り巻きは捕えられた。
うるさいので王子と取り巻きは音を出せないように魔法で縛った。


「では、罪人の神託の方から。
王子と取り巻き4人は王城前の広場にて貼り付け。
申し出た被害者から被害の内容を聞いた上で、その者に拳大こぶしだいの石を与えなさい。
被害者は王子らに気が済むまで石を投げつけることが許されます。
大丈夫、被害者が居なくなるか1年の月日が経つまで王子たちは死なないようになってますから。

もし、虚偽の被害を申し出たり、王子たちを逃がそうとする者はその場で神罰が執行されます。
逃がすことには殺して苦しみから逃がすことも含まれます。
1年くらいは飲まず食わずで治療もせずに生きていられますから存分に苦しみなさい。
既に人としての命は尽きる神罰が執行されていますから王侯貴族どころか人扱いもしなくて良いですよ。
元から化け物の所業だったらしいので相応しい末路ですね。」

場所を公の場に移して神託の説明をした。
神罰と言えば聖女のわたしらしいのでわたしが発表しました。

わたしたちは王子たちの罪は聞いていないのです。
この国の神官長は何となく知っているようでした。
それでも神が罵っていたのですから相当なものでしょう。

「さて、それから王権の方ですね。
お気付きのように王が健在な現在、神託の儀が行われたのはその王子たちの罪の責任を現王に取ってもらい、王が交代するからです。
そのような愚か者たちを育てた責任は重いですよ?
そして放置してきたことも。
神が責任有りと認めた者たちは既に王子たちと同じように人ではなくなっています。
自死もできません。
顔を見れば分かるようになっているそうですから、そのまま檻に入れ王子たちの横に置いておいてください。
ああ、見れば分かりますね。
顔にバツ印とか分かり易す過ぎです。
そちらに石を投げるのも有りだそうです。

最後に次代ですが、侯爵令嬢のマリーさんだそうです。
こちらも既に王冠が与えられているそうですから、気付かれていますよね。」


王子たちはその地位を笠に着てやりたい放題してきたそうです。
王子とは王の子だけの意味しかない国で継承する訳でもないのに何で見逃されて来たのやら。
責任有りと判定された者も多かったそうです。
愚か者が一掃されてマリーさんもやり易くなったことでしょう。

王権神授の意味も見せつけられたので国民の意識も変わったそうです。
今までは神から王を頂いた唯一の国で有るとの驕りだけでしたが、罪も指摘されることを知り神に見張られていることを知ったようです。


1年経って王子たちが業火に包まれるまで石を投げつける被害者は途絶えなかったそうです。
多くは殺された被害者の遺族であり、石を投げる回数制限は言い渡されなかったので何度も通って石を投げていたとか。
遺族にも石を投げる権利を認めたのは、神のグッジョブです。
最初に伝えておきましたけどね。
回数制限が無いことを皆気付いていなかったみたいなので聖女たるわたしが教えてあげました。
気が済むまでとしか言われてませんよね?
グッジョブでしょう?

それからしばらくは国の犯罪率も下がっていたそうです。
また忘れて前と同じくらいに戻っているそうですけどね。
神官長を始めとする国の教会は事あるごとにこの件に触れ、言い伝えて行くようです。
聖国もしっかり便乗して神の御業を讃えているそうですよ。

どうせなら神が即罰を与えれば良いのに。
面倒とか言ってないでくださいな。
折角一部地域で讃えられてるのに、真の姿をバラしちゃうぞ。

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