エルフで聖女で転生者

もぶぞう

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第1章 聖女、働くってよ

第4話 シャルロッテさんエルフの里へ来る

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治療から3ヶ月後シャルロッテさんがエルフの里近くまで来ていると精霊が教えてくれる。
里長さとおさには一応シャルロッテさんが里に入る許可をもらったけれど、連れの人数が多そう。
護衛が10人居るけど、さすがに枢機卿の旅ともなると必要なんだろうね。
聖女のわたしは一人旅だったけれど護衛は断ったからね。
見ず知らずの護衛なんて信用できんわ。

後、女性がふたり。
神官服を着ているらしいけど、侍女みたいにシャルロッテさんのお世話をするのだろうか。
長に相談してみたけれど、女性神官はOK、護衛はNG。
ま、里の結界近くなら護衛の手に余る魔物は出ないでしょうから野営をしてもらおうか。


お迎えにドイテ王国付近まで行こう。
早く行けば護衛はドイテ王国内で宿を取れるかもしれない。
何か有れば里のみんなも飛んできてくれる距離なんだから護衛は要らんでしょ。


「やっほー、シャルロッテさんの馬車かな?
お迎えに来たよー。」


「何者です。」


御者をしているのは女性神官。
馬に乗った護衛と共に馬車は止めている。
わたしは剣とか弓とか杖とか武器を持っていないからあまり警戒はされないわよね?
そんなもの無くても精霊がやっちゃうんだけどね。


「聖女シャルテ、迎えに来てくれたのね。
皆、この方が聖女様ですよ。
失礼の無いようにね。」


扉を開けてシャルロッテさんが顔を見せてくれた。


「おひさー、もう旅ができる程良くなったんだね。
シャルロッテさんと女性ふたりの許可はもらってるけど、護衛さんたちはどうする?
町へ戻るか里の近くで野営するか。
もう、里が近いから何かあったら里の皆が来て対処してくれるだろうし、安全だよ?
ここまで来れば精霊も山盛りだしね。」


「そう、エルフの里近くでは不埒者ふらちものなど排除されているでしょうし、護衛だけを野営させるのも可哀そうですね。
護衛は皆、先ほどの町で宿を取って待機してください。
帰るときには神殿に連絡を入れます。
そうね、7日は滞在すると思ってくださいな。」


7日で見て回れる程狭くない里だけどね。
護衛はごねることも無く町へ戻って行った。
エルフに対してよこしまな気持ちを持つ者はさすがに選ばなかったよね。
枢機卿のご威光が凄いのかもしれないけれど。


さて、御者台にわたしも乗ってナビしますよ。
馬車など使ったことは無いので操縦はできない。
里に馬車なんて無いのだもの。

あっ、厩舎作らないといけないじゃん。
家の横に建てちゃえば良いか。
精霊がうずうずしてるので魔法でやるかー。


結界を抜けて里へ入った。
ひとまず長と顔合わせかな。


「ようこそ、枢機卿。
そちらの神官さんもね。
シャルテが外へ出たがらないからわざわざ来てもらって悪いわね。
何せ里を出るとエルフ狩りがうるさくて聖女のお仕事どころでは無いでしょう?
わたしたちも安全に外へ行けると良いのですけれどね。」


里長はサラッと嫌味を入れてあいさつした。
聖女として働かせたかったらエルフ狩りを何とかせいや、ってことよね。
わたしは元々外へ行きたい訳でもないのだけれど。
聖女のお仕事も熱心にするつもりも無いし。


「はじめまして、里長さん。
シャルロッテと申します。
お世話に成りますわ。
シャルテなら全部殲滅せんめつしても構わないでしょう。
一目で聖女と分かる服も用意致しましたから、自由に出かけても問題有りませんよ。」


わたしに投げないで。
シャルロッテさん、わたしを働かせる気満々じゃないの。
創造神様からわたしがやる気の無い聖女だと聞いてるはずよね。


「そんなことではシャルテは外へ出ませんよ?
わざわざ世の為人の為に動こうとはしないのですから。
何故聖女とされたのか不思議な程です。
しかもシャルテはそう伝えてあるとか。
人材不足なのでしょうかね?」


里長、創造神様にまで嫌味言わないで。
まあ、人族の問題はそちらで解決してもらいたいのはわたしも賛成だけども。


「ええ、わたくしも聞いておりますわ。
神の御心はわたくしたちでは計り知れませんけれど、変革の時期なのかしら。
各国にも取り締まりを強化するよう言ってあります。
聖女シャルテを害すれば世界が滅ぶかもしれませんのにねぇ。
エルフが表に出なくなって怖さを知らない者が増えたのでしょう。
シャルテが怖さを教えても良いのですよ?」


オフランに行くだけでもあれだけ面倒だったのだもの、嫌よ。
そんな事言ってると精霊がやる気になって大精霊が出て来ちゃうわよ?


「シャルテ、呼んだ?」


ほら、大精霊が来ちゃったじゃない。
呼んでないわよ?
わたしの意識を読まないで。
シャルロッテさんはあまり驚いていないけれど、神官さんふたりは固まってるわよ?
宙に浮く美女が突然現れれば驚くわよね。
わたしたちは気配で分かるから驚かないけど、子供の頃は楽しそうに驚かされたわ。


「シャルテがやりたいなら協力するわ。
そろそろ精霊の怖さも思い出してもらわないとね。
シャルテがやる気になってくれたら神も喜ぶわよ?」


どの〈やる気〉よ。
聖女をやる気になれば喜ばれるかもしれないけれど、殲滅の方だったらヤバいんじゃない?


和やかな?会話を終え、シャルロッテさん一行はお客さん用の建物へと案内されて行った。
そちらには厩舎もあるそうだ。
建築の魔法は火を噴かなかった。
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