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第二百六十二話
しおりを挟む何故か俺まで4つ目の大陸へ行くこととなった。
教会の爺さんが一緒に来てくれと頼んで来たもので。
ミュリエルやセラフィナは妊婦さんなので、瘴気の濃い大陸へ行かせる訳にも行かずお留守番。
どうやら見込みの有る元王侯貴族の女性を連れ帰る密約を爺さんと結んでいるようだ。
里の建物は余ってるけど、まだ女性住民を増やす気でいたか。
爺さんとしては既に信仰復活への拠点とすると決めているようで、俺に教会を建ててもらいたいようだ。
完全に旧支配者層を排除するので統治のシンボルとしても立派な教会が欲しいらしい。
大元である爺さんの国より立派な教会を建てて良いものなのか?
「その内本国にも建ててもらうのじゃ。
借金さえ返せば寄進でどうにかなるじゃろ。」
今回のは王城に有った宝払いで済ませるそうだ。
エルフさんたちにも賠償や分け前が行ってるはずなのに、あちこちの国滅ぼして行った方が教会も儲かるんじゃね?
「民を養うならマイナスじゃ。
今回の国はたんまり王侯貴族どもが貯め込んで居たらしいからのう。
農作物が不良なので使い道が無かったのじゃろう。
普通ならば高騰するところを無理やり安く買い叩いていたようじゃからの。
そのくせ税として納められた物は高く売っていたようじゃ。」
それじゃあ農民は喰って行けないだろう。
自分たちが食べる分はこっそり作ってたのかね。
村ごと一丸となって隠さないと飢え死にするだろ。
「旅人を騙して奴隷として売っておったようじゃ。
今回のエルフたちもそれで捕えられた者たちじゃの。
税の代わりに領主へと納められたのじゃな。」
なるほど、民にも遠慮は要らないってことね?
エルフさんたちも大地まで浄化する気は無いのだろうな。
それでも爺さんたち教会が浄化するしかないのか。
「瘴気に侵された者たちはそんなもんじゃろ。
上も下も腐った者ばかりじゃ。
それでも救われるべき者は居るじゃろう。
我ら教会が手を差し伸べることでそう言った者を拾い上げるのじゃ。」
まあ環境が違えば人生変わってたかもしれないしな。
誰もがアマリア様の世界に生まれた子だし。
既に現地入りしているエルフさんたちには新製品のコカトリス焼き鳥丼とコカトリスから揚げ丼のお届けだ。
スプーンだけでも食べられるのでどんどん売れて行く。
「貴様、我らにも食べ物をよこせ。」
檻の中から叫んでいるのは鑑定によれば元王子、現戦争奴隷な男。
ちゃんと奴隷にもそれなりの食事は出されているらしいぞ。
何せエルフさんたちがとっ捕まえた分も速攻で教会に売ったらしいからな。
教会ならそれほど悪い扱いはしないだろうさ。
「いや、爺さん、こいつらの分払う気ある?」
「戦争奴隷じゃからのう。
そんな贅沢はさせられんわい。」
そりゃそうだわな。
新製品のお披露目と言うことで2種セットで金貨1枚の販売だから。
奴隷はお金どころか換金できる物も持って無いだろうし。
「あんたらのご主人さまは買い与えてくれないってさ。
働いて賃金もらえるようになってから買えたら良いね。」
「待て、ならばそれを掛けて決闘だ。」
「いや、俺が勝っても何の利益も無いじゃん。」
「王子である我の命を懸けての決闘としてやる。
名誉な事であろう?」
「元王子の奴隷が何言ってんの。
それにあんたの命さえも主である爺さんのものだろう。
既に自死さえできない契約が施されてるぞ?
じわじわと首締まってない?
決闘を勝手に決めた時点であんたの命無くなるよ?
それに爺さんが決闘を許可したとして、奴隷を甚振ったら名誉を得るどころか損害賠償を俺が払わなきゃならなくなるだろ。
まあ、銀貨50枚の価値しかないって自己申告は良いとして。
元王子、随分安い命と名誉だな。
安かろう悪かろうっぽいぞ。」
「違法な奴隷契約など無効だ。
我らが奴隷に落とされる理由は無い。」
「はいはい、現状認識ができないとの申告、ご苦労様。
あんたらはエルフさんたちに戦争を吹っ掛けといて負けたんだから立派な奴隷になってるよ。」
「戦争などでは無い。
我らは一方的にエルフ共に襲われたのだ。
従って奴隷契約は違法だ。」
「それはあんたらがエルフさんたちを奴隷にしたのと同じ手法じゃん。
知ってて黙認してたんだろ?
やり返されただけだよね。
奴隷の件を別にしても交渉に訪れた使節団をあんたらが襲ったんだから盗賊扱いで問題無いよな?
そっちの方が良いのなら犯罪奴隷に書き換えておいてあげるよ?
戦争奴隷なら国外の親戚とかが身代金を払えば自由になれるかもしれないけれど、犯罪奴隷だと刑期終えるのに何十年掛かることになるやら。
裁くとしたら被害者側のエルフさん基準だろうから百年単位かもしれんね。」
ようやく元王子に乗っかって騒いでいた奴らも現状をしっかり認識できたようだ。
元王子は理解できてないみたいだけど。
銀貨50枚の性能は伊達じゃないみたいだ。
「まあ、交渉が始まる前に襲おうとして王都外に飛ばされたんじゃ。
やっと自分らの置かれた立場が分かったようじゃの。
公式な交渉を前に襲うような野蛮な国じゃからのう。
瘴気のせいで文明も退行しとるのかもしれん。」
奴隷返還交渉前に襲おうとして返り討ちにあったからほとんどの者は事情を知らなかったのね。
ようやく捕えられた理由を知った者も多いようだ。
「と言うことで、エルフさんたちを奴隷にしてた件がエルフさんたちに宣戦布告したのと同じなのよ。
それでも交渉してあげようとしたエルフさんたちをあんたらは襲おうとした。
バッカじゃねぇの?あんたらただの野蛮人じゃん。
恩情で戦争奴隷にしてもらってるのよ?
あんたらは平民のことは気にしないかもしれないけれど、自分の国の貴族や王族が誘拐されて奴隷にされてたら戦争案件だよね?
そうでなくても無理やり奴隷としたことは普通に犯罪だよな。
だから、あんたら元王侯貴族は檻の中なのよ、分かった?
この国では犯罪に当たらないって言うのなら、あんたらを捕まえてるのも何も問題無いよね?
まあこの国でどうこう言ってもここの国民どころかこの大陸の住民でも無い俺たちを縛り付けることはできないけどな。」
「他の国もこの国の顛末を知って交渉の席に着くと良いのだがのう。
大陸全体が野蛮な者たちに支配されておったら面倒じゃの。
大陸が奴隷だらけになりそうじゃ。」
王侯貴族の男で王都に戻された者は居なかったらしいしな。
王都に居なかった者たちもその内捕まえられてこの檻の中へと運ばれるだろう。
奴隷商人とかの関係者はその場で処されちゃうかもしれんね。
他国で同じことが繰り返されると儲かりそうだけどな。
教会がこの大陸すべてを統治するのは難しそうだけれど。
どんぶりなら立ったままでも食べられるので売れ行きは好調だった。
コカトリスの時点で売れるのは分かっているから大量に持って来たけどな。
こっちでも野生のコカトリスが獲れると良いな。
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