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第二百五十五話

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種から育った精霊樹も1mくらいまで伸びている。
それに伴ってか、精霊樹の広場はキラキラと光る粒子で溢れている。

「精霊が寄って来ているし、新しく生まれているからな。
夜になって王都から見える精霊樹は派手に輝いているはずだぞ。」

セラフィナの言う通り、暗くなって列車で帰って来る人たちが見る精霊樹は派手だそうだ。
実際は里の精霊樹自体じゃなくて周囲を飛び回る精霊たちの輝きなのだろうけれど。
まあ精霊樹自体も魔力を十分補充されてキラキラしているけどな。
精霊王も成人間際の子供くらいには育っているし。

「各里から精霊樹の世話をしに来るエルフが多いからな。
うちの子に過剰な分が回って来ているから精霊王も育っているのだろう。
次の種のためにも成るのだから丁度良いさ。」

前回10本の若木を育てたのと同じかそれ以上のエルフさんが世話をしに来てるもんな。
おばばたちの里は余裕ができたのだろう。

「里の教会が役立っているそうだぞ。
大精霊の満足する聖水もどきができているらしい。
元々こちらの大陸ではエルフの数も多いからな。
里を出ていた者たちもようやくこの里に着いているようだ。
乗り遅れた奴らが多目に魔力を与えているからうちの子に流れる量も増えているのさ。」

精霊さんが少ない土地に居たりしたなら情報も遅れたのかね。
普通の旅だと遠いところからはこれくらいの時間は掛かるか。

「あの列車が大陸中を走ってくれると楽なのだがな。
必要なら飛行機で迎えに行けるのだから構わないけど。」

精霊さん情報で位置が分かれば迎えに行けるか。
相手が精霊さんに飛行機のことを聞いていればだけれど。

「そうだな、精霊に飛行機のことを広めるように言っておこう。
エルフの間で情報を共有する分には大丈夫だろう。
他の大陸で未発見の里が見付かるかもしれないしな。」

他の大陸はエルフさんの数が少ないから精霊樹を植えられる場所も少ないからな。
少しでも増えないと大陸全体を浄化するのに時間が掛かり過ぎる。

「浄化が進まない内は人族が手を出せない土地が多いだろうから鉄道は引き放題かもしれないがな。
その分利用する者も少ないからもったいないか。」

投資としては魅力的だけど、他大陸だから手を出すにはハードルが高いか。
ダンジョンの有る地を結んでいれば儲かるだろうけど。
一応ダンジョンは人族が確保しているのだろうな。

「手を出せない場所にも有るからこちらで確保してしまうのも良いな。
ここのように転移陣で繋げてしまえば良いのだろうけど。」

鉄道引くまでもないか。
今でもこの里から色々買うためにダンジョンには入っているのだろうし。

「まずは他大陸への転移陣が先だな。
精霊樹の若木を運ぶにしても転移陣の方が安全だろう。」

飛行機や船よりも転移の方が若木にも負担が掛からないか。
3つ目、4つ目の大陸は特に遠いもんな。
楽に行き来できない大陸に鉄道作っても管理が大変に成るし。


「スプリングに植えた挿し木も順調らしいぞ。
あちらは領都に教会を建てた方が良いのではないか?
領民の祈りも利用できるだろう?」

利用って人聞きが悪いけど信仰の力を利用してるか。
聖水もどきを保管する場所だけ精霊さんチェックをしてもらえば良いかね。
あとでカトリーヌに建てる場所を相談しよう。
今使ってる大聖堂に保管されている聖水もどきより劣るかもしれないけど。

「偶に大聖堂のものを使えば良いさ。
必要なときは精霊王が要求するだろう。」

挿し木の方もまだまだ精霊王の管理下なのね。
別の者の管理になるのかは知らんけど。


お昼時になって食堂の出張販売が行われている。
大量に獲れているオークのカツ重だ。
銅貨5枚、500円相当と安い。
精霊樹の下に居たエルフさんたちが売り子の子供たちから2個3個と買っている。
インベントリに仕舞っておくと言うよりこの場で食べる勢いだな。
大量に買って里へと運んでいる者も居るようだ。
王都だと倍の値段で売ってるらしいからな。

各地への食料援助もこれで良いんじゃね?
メニューは変えるにしても肉はオークで。

何と言っても集めたフェンリルたちが子供への狩りの手本を見せるためにも張り切っているそうだ。
浄化された地で子育てできるのがうれしいらしい。
人と出会っても襲われないしな。

「自分たちが浄化されるのも有るが、食べるものも浄化されているから美味いのだろう。
料理されたものの味を覚えてしまったから巣立つにしてもエルフの里の近くに住むことになるな。
フェンリルの数も増えて行くぞ。」

設置されている転移陣を既に自由に使ってるしな。
狩りをする前の子フェンリルはこの里で子供たちと遊んでいるし。
子供を預けてダンジョンに行っちゃうとか、信頼し過ぎてて大丈夫か?

「ここと他のエルフの里限定だと分かっているだろう。
精霊たちからも危険な場所は教えてもらっているようだから心配は要らないさ。」

精霊さん経由でエルフさんと会話できるから子フェンリルたちも精霊さんが少ない土地には行こうとしないか。
会話できない人族の子供と遊んでるけどな。
ちょっと探せばエルフさんが見つかるこの里ならではか。

乗せてもらってた子供がフェンリルにカツ重おごってるし。
あの子らもこれから売り子のお仕事か?

中にはフェンリルに乗って配達の仕事をしている子も居るらしい。
フェンリル便は早そうだな。
フェンリルは遊びのつもりかもしれないけれど、ちゃんと対価を払ってやれよ?

「大丈夫だ。
精霊から情報をもらっているからきちんと給料は半分にしているそうだ。
それでもこなせる件数が増えるから自分ひとりで配達するより稼げるらしいぞ。」

皆マジックバッグを渡されるから多くの依頼を消化できるもんな。
いずれ他の町でもできると良いな。
馬がフェンリルを怖がるだろうから無理か?

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