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第二百四十話

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さて、精霊樹の種が今日中に発芽するそうだ。
大精霊たちからエルフさんたちに伝えられて、種が植えられている周辺には鈴なりだ。
ずっと待つつもりかと思ったら、大精霊が魔力を与えることで発芽するらしい。

こりゃあ今日もお祭りになるな。
食堂の方も準備を始めているようだ。
孤児院の子供たちも出前隊の準備でお昼寝の時間を多めに取る予定らしい。

エルフさんたちが皆精霊樹の方に行ってしまうので列車の運行も今日は中止。
こう言った事態も起こるのだな。
精霊樹に興味が無いエルフさんなんて居ないのだから人族だけでの運行体制も考えなければいけない。
予め精霊さんにお願いしてあるのだから、予想外の事態が起こらない限りは大丈夫なんだろうけど、予定している精霊樹のお世話が終わるまではこう言う日も有るのだろう。
精霊さんは行かなくても良いのかね?

「全部の精霊が集まったら大変なことになるでしょう?
精霊が見えるものからしたら、精霊樹の芽が見えなくなるわ。
それぞれの役割を果たすことを優先するみたいね?
精霊王か大精霊が招集を掛ければ集まるのでしょうけれど。」

まあ、近場の精霊さんが集まってきたらエルフさんたちの視界が0になるわな。
聖水もどきに集まって来るだけでも俺の姿を隠しそうになるらしいし。

今までも車や船が止まることは無かったのだから列車も動かせるか。
エルフさんが居なくてコミュニケーションが取れないだけだ。
こちらの言うことは分かってくれるので困ることは無いのだけれど。


丁度里に来ていたソフィースティア王妃も見て行くようだ。
侍女さんたちとともに念入りに浄化されていたらしい。
エステのついでだったらしいけど。

「この里の住人以外で発芽を見られるなんて運が良いわね。
王妃になるだけのことは有るのかしら。」

色々持ってはいるのだろうね。
運だけじゃないだろうけど、その地位にたどり着ける生まれで有るだけで運が良いわな。


今回の精霊樹の里は2つ目の大陸なので転移陣に魔力を沢山食う。
なので、希望者全員を連れて来ることはできなかったようだ。
転移よりもこれから精霊樹を育てる方に魔力を使いたいだろうから致し方ない。

次回はこのくらいの期間が掛かると分かったので前乗りして来るかもしれないな。
3つ目、4つ目の大陸からだと飛行機で来ることになるか?
それぞれの里の人口が減っているらしいから全員来るかもしれんね。
里は結界で守られているだろうから良いのか?


「エルフでなくとも興奮するものじゃのう。
男の神官共が来たがって五月蠅かったようじゃぞ。
人族が預かる精霊樹は特に珍しいからの。」

爺さんのところの精霊樹も今回の発芽に含まれている。
一番後回しらしいけど。
予定に無かったところに割り込んで、特例でもらえた精霊樹だから仕方ないか。
ただ、扱いが悪いのは爺さんたち人族に対してだけで、大精霊もエルフさんたちも精霊樹は普通にお世話をしてくれているのだから構わないか。

「有志のエルフが人族の土地で精霊樹を育てるようなものじゃから仕方ないのう。
元より我らのものと言う意識は捨てさせねばならんじゃろう。
神官たちとしては自分たちがもらったと思ってるじゃろうからのう。」

いくら自分たちの精霊樹だと思っても人族の神官たちのほとんどは近寄らせてもらえないけどな。
エルフさんたちはお世話させてもらってると言う意識の方が強いだろう。
里の精霊樹とは言ってるものの、所有権を主張している訳では無い。
精霊のものであり、世界のものなのを知っているのだ。
結果として精霊さんが強化され、土地が浄化されて、自分たちが住み易くなる。

元々エルフさんたちは精霊樹のために動くように本能に刻まれてるのかね?

「そうね、そのために精霊が見られる種族なのかもしれないわね。
どうでも良いことですけどね。」

ミュリエルとしては最初の神の意図など、どうでも良いらしい。

「今や多くのエルフは精霊樹よりもナギサを優先するかもしれないわよ?
ナギサが居ればまた精霊樹を復活できるのですもの、そうなるわよね。
しかもこれ程多くの精霊樹になるのですもの。
本能と言ってもその程度よ、変わることも有るのよ。」

それも結局精霊樹のための本能っぽいけどな。
人族と違って私欲じゃないから大丈夫だろう。

「あら、わたしやセラフィナは私欲よ?」

ふたりはエルフさんとしての本能に縛られていないようだ。

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