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第百九十一話

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久々の王城からのお呼び出しだ。
何でも俺の親が見付かったとか。
おい、俺の親も転生してたのか?
まあ、偽物なんですけどね。
俺がこっちに来たのは数か月前で地球で生まれ育ったのは神アマリア様の保証付きだ。

「ダライ王国で5歳のときに行方不明となったナギサが10年経ってフォレスティエ王国に居るなんてね。
しかも証拠と言えるものは黒眼黒髪だけとは。」

ミュリエルが王城からの書状を読みながら呆れている。
ダライってカダイ王国の隣だったっけか。
10年でどうやってこちらまで来たのかの設定は無いのか?
フォレスティエと通商や人の行き来は無いらしいよね?
Lv.5のままフォレスティエまで辿り着くのは無理だと思うよ。

「ダライの王族がナギサの噂を聞きつけて黒眼黒髪の男女を探し当てたそうよ。
普通は異世界から来たとは思わないでしょうから、悪党の想像力の限界だったようね。
エルフが周りに沢山居るのに情報を集めない訳が無いでしょうに。
彼らの情報集めに対する意識の低さが分かるわね。」

精霊さん情報で全部バレちゃうのも知らないのかもね。
何にしても下調べが不足し過ぎだろ。

「カッセル商会としてもダライへ食料が流れるのは止めてしまいましょう。
カダイに回す分がこれで増やせますね。
王族が犯罪を仕掛けて来たのですから因果応報です。
放置すれば神罰が降りますよね?」

ミランダとしても俺を利用しようとしたダライの王族に厳しい対処をするようだ。
神罰まで行くかどうかは知らないけれど、ダライ王国として痛い目には会ってもらおうか。
大体、親が見つかったとして、そのあとはどうするつもりなんだか。
精霊樹が有るから、俺、本拠地移動しないよ?

「精霊樹のことも知らない可能性が有るわ。
杜撰ずさん過ぎてどこからツッコんで良いのやら。
騙す方にはそれなりの知性が必要なのね。」

王族と言うけれど、これじゃあお店の経営もできないだろう。
本国に残っている王族も関わってるなら完全取引拒絶でよろしく。

「さすがにカダイ王国と血の繋がりの有る国ね。
放っておけばカダイ以上に国が荒れるのではなくて?
教会も爺さんも忙しく成るわね。」

国境を接しているか知らんけど、爺さんの国は近いからカダイと一緒に抱え込むことになるな。
もうひとつの血縁国マダイ王国も同じようなら爺さんの国が破綻するわな。

そうか、近いカダイ王国、マダイ王国、ダライ王国からのお布施が期待できないから爺さんも破綻を危惧していたのか。
持ち出し一方になってそうだものな。
瘴気で大変なのに北の国々の人心が乱れていれば滅びが早そうだ。


俺と同じ年ごろの子供を集めて王城見学だ。
もちろん子供たちは黒眼黒髪に偽装した。
アルバイト代も出しまっせ。

ミランダは既に詳細な報告書を書き上げている。
もちろん親子関係を否定するものだ。
異世界のことは内緒にしても十分否定できる。
そもそも記憶喪失でも無いんだし、5歳児だって親のことは覚えているだろう。

「ダライに居る王族は噛んでないようね。
来ている王弟が王位を狙って暴走したようよ。
帰国する途中で病死しそうね。」

本国の精霊さん情報も入ったようだ。
苦しい国で王位を取っても大変なだけだろうに。
ちやほやされたいのかね?
王弟なら十分ちやほやされて来ただろう。
その結果が馬鹿の出来上がりだな。


「それで、ダライの方が我が子だとおっしゃるのはどの子のことでしょうか。
黒眼黒髪と言う情報しか頂けなかったので候補を全員連れて来ましたわ。
確認のためなので、名前を呼ばれても反応しないように言ってありますのであしからず。」

ミランダさんお怒りモードです。
胎教に悪いから抑えて、抑えて。

しれっと俺も偽装して金髪ナギサで付いて来ている。
顔とかも調べてないんだろうな。

自称親は鑑定で見ると婚姻関係も無い赤の他人同士じゃん。
その辺の偽装もしてないのかよ。
王城に上がるなら鑑定されることも有るだろうに。

王弟一行は右往左往しているだけだ。
今更話し合っても正解が元々無いんだから諦めろ。

「まあ、特定するのは無理であろうな。
それにしても我がフォレスティエに対して詐欺を働こうとは舐められたものよな。
そして、そこのダライ王国の王弟を名乗る者、ダライ王国に子細をまとめて問い合わせた結果、ダライには出国している王弟など居ないとの返事が来ている。
其方らはただの詐欺師として犯罪奴隷に落ちてもらおう。」

横で宰相がダライの印章の入った文書を掲げて示している。
お仕事早いな王よ。
まあ、カッセル商会の者が飛行機で行って帰って来たのだけれど。
ダライは王弟一行を切り捨てたか。
フォレスティエ王国やカッセル商会と揉めるのは避けたいものね。
まあ、帰国途中で病死が無くなって良かったじゃん?

王も運河掘り用の犯罪奴隷が確保できた。
何しろ好景気で王都周辺の犯罪発生率が低いそうで、運河掘り要員が足りないそうだ。
普通にお仕事として募集しろよ。
そのくらいの借金の猶予はしてあげるから、ミランダ商会長が。


子供たちはお役目が終わって偽装を解き、ベランダから遠くに見える精霊樹を眺めている。
一段と大きく成ってるな。
里で近くから見上げるよりも高くなっているのがよく分かる。
ついでに王都の風景も見ているけど、里と比べたら可哀そうだぞ。
あっちは高層の建物ばかりだからな。

子供たちと王都のお店を回ってみたけれど、カッセル商会で手に入るものばかりだ。
しかも物価が高い。
そろそろ成人に成る子ばかりなので、現状を知るには良い機会だったかもしれない。
里を出ると不便になることを理解してくれると良いけど。
里よりも質の悪い剣が高値で売られているのを見ているしな。
ついでに犯罪者にも気を付けるようになるだろうか。
下手な大人よりも知識も能力も有るので騙されることは無いと思うけど。
簡単に王弟一行を撃退しているので舐めないと良いけれど。

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