チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています

第百八十八話

要相談だと言ったのにおばばがドラゴンの魔石をうちの里へ持ち帰った。
案の定、来訪者がいらっしゃいました。

「ドラゴンの魔石を持つ者よ。
大人しくそれを渡すが良い。
しばしこの結界を破るのを待ってやるから早くせよ。」

来訪者じゃなく来訪ドラゴンでした。
一応結界の外で待っているようなのですぐに襲い掛かって来ることは無いだろう。
無いよね？

「致し方あるまい。
我らがこの魔石のドラゴンを倒した訳でも無いのじゃから、素直に話し合いといこうではないか。
結局引き渡すことになりそうじゃがな。」

相手の戦闘力も分からないしな。
持って帰ってくれるならそれでも良さそうだ。
下手にこの里でドラゴンが復活でもしたら、倒されたときの戦闘中と勘違いされて暴れられるかもしれないし。


おお？結界の外のドラゴンも瘴気にやられてね？
元の色が分からないほど、身体に黒い靄を纏っているぞ。
ドラゴンだから正気を保ってるのかね？

西洋龍タイプでしたか。
滞空して待っていた。

「ほれ、名も知らぬドラゴンよ、持って来たのじゃ。
それで、如何するつもりでおるのじゃ？」

「もちろん、復活のために持ち帰らせてもらおう。
しかし、こやつは遠い大陸に住んでいたはず。
なぜこのような姿でここに居る？」

「魔石に成った経緯はこれを渡した者も知らんのじゃ。
５０年ほど前、既に魔石に成っていたものを拾ったそうじゃ。
この魔石でそこの里との転移陣を作ろうとしておったのじゃがな。」

「ふむ、魔石に成って２００年ほど経っているか。
エルフなら事情を知っているかと思ったが拾われたのも最近なのだな。
他のドラゴンも居ないとなるとエルフや人の仕業しわざではないようだな。」

他のドラゴンが居たならさっさと回収されてるだろうからな。
ちゃんと話の分かるドラゴンが来て良かった。
５０年前が最近かどうかはエルフさんと付き合ってて麻痺してる俺が居る。

「安心せよ。
対価は払おうぞ。
かの大陸との転移陣が有れば良いのだな。」

おお、転移できるようにしてくれるのか。
良い人、いや、良いドラなのであとで浄化してあげようか。

「ナギサ、ドラゴンの浄化なんてひとりでできるものではないわよ？
数千年分の瘴気がこびり付いているのですから。」

ミュリエルから見ても無理っすか。
そんな気はしてましたとも。
まあ、ちょっとずつでもやりますかね。


ドラゴンの瘴気が酷いので結界内には入れないようだ。
それに保有魔力が多いので精霊樹に近付くと何が起きるか分からないそうだ。
そう言うのもあって滅多に姿を見せないのかね？

時間の有る里の者総出でドラゴンを浄化する。
子供も混ざってクリーンを掛けていた。
気は心なので良いだろうさ。

１回でどうにかなるとは思ってなかったけど、全然変化が見えないな。
瘴気を浴びてた時間と同じくらいの浄化時間が掛かるんじゃないだろうな。

「おぬし、懐かしき先代の神の力を使えるのか。
切欠をもらえたので後は自分でも何とかできるであろう。
感謝するぞ、皆の者。」

先代を知っているのか。
アマリア様がいつ受け継いだのか聞いてなかったけど、ドラゴン時間では何代か神が変わってるのだな。
それに残りは自分で何とかできるのかよ。
こうなる前に対処しておけや。

この結界の外に転移陣を作ってもらう訳にもいかず、どうしようか。

「こちらは大きな教会の横に作ればよかろう？
問題は我も他の大陸へはしばらく行っておらんので、エルフの里の場所が探れないな。
瘴気も濃いようだな。
ならば、一度行ってみるしかあるまい。
おぬし、向こうへの説明のために同行せい。」

俺を掴んで背に投げようとしたので、ひょいとかわした。

「いやいや、ドラゴンに乗るのは危ないですって。
こちらにも飛ぶ手段が有るので付いていきますよ。
遅れるようなら待ってくださいよ？」

何も掴むところが無さそうなので怖いじゃん。
おばばたちも行く気になって飛行機出してるし。

俺たちが遅れまいと最高速を出す勢いで飛ぶと、ドラゴンがムキになって更にスピードを上げた。
子供か！

「今の人族はそのような道具を扱えるのだな。
しばらく見ない内に進んだものよ。」

いえ、俺たちだけです。
人族全体はむしろ後退してるんじゃないかな。
瘴気にやられて弱ってるし。

無事４つ目の大陸に着き、俺たちが上空に待機している間におばばが話を付けた。
弱いとは言え魔道具だけの結界を越えることなく転移陣が設置された。
折角浄化し始めた里に浄化しきれてないドラゴンを入れられないよね。

「そなたらだけでは魔力が足りずに使えぬかもしれぬが、魔石を多く用意すれば良いだろう。
では、我はこの大陸を回って魔石に成った手掛かりを探すとしよう。
いずれそなたらの里へ魔石から復活したものと共に参ることも有るかもしれん。
ではな。」

結局魔力不足の方が解決できてないじゃん。
転移陣を敷いてくれたのは助かったけど。
ドラゴン時間の「いずれ」はどのくらい後なのかね。
俺たちも寿命が無くなってるから良いけど。