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第百七十九話
しおりを挟むショッピングセンターがオープンしたのは良いのだが困ったことにバスを望む声が多いのだ。
王と宰相も王都に欲しがってたな。
バスも自動車なので精霊さんの手助けが要るのよ?
メンテとかで仕組みを公開するつもりも無いし。
一応商業ギルドには登録してあるものの、非公開にしてあるのだ。
絶対に精霊さんをシステムに取り入れられずに交通事故が頻発するであろう。
王と宰相にも言ったけれど、交通システムを整備してからじゃないと危ないですって。
それにエルフさんの協力無しでは無理なのよ。
俺たちがお願いでもしない限り、エルフさんは出向してくれないだろう。
教会の爺さんの転移係のエルフさんでさえ、わざわざこの里に来て食事を摂っているのだから、他のエルフさんたちも他所への出向は嫌がると思うぞ。
他大陸の精霊樹を育てようと言う大事な時期だしな。
「こちらと同じように運河を作らせれば良いじゃない。
大体バスだって売るなら金貨数十枚よ?
整備での出費に備えたら100枚越える金貨を用意してもらわないとね。
それを考えたら自前の運河を持った方が得でしょう?
バス代で消える関税が丸ごと入って来るのですもの。」
運河掘るのも普通は安くないお金が掛かるけどな。
そこは犯罪奴隷とか使えるのだから、ミュリエルが言うとおり、バス使うよりは安上がりになるだろう。
カッセル商会にバス運行を任せても関税ぎりぎりの委託料もらうぞ?
領内だけを走らせるのなら関税も取れずに赤字路線確定だ。
それだけの価値は有るからな。
大体、誰が乗ると言うのよ。
ショッピングセンターの巡回バスは無料だけど、普通は運賃を取るものだ。
馬車よりも早く安全に使えるのなら当然馬車よりも高くなる。
以前は途中で一泊でもしていたならば、それが必要無くなった分も加味して良いだろう。
お貴族様とマジックバッグを持った商人くらいしか利用者居なくね?
ショッピングセンターのお客さんはカッセル商会員がほとんどだから沢山乗っていたけど、普通の村ならば荷馬車1台で全員分の買い出しに出るくらいじゃね?
うちの商会員はお金持ちなのよ?
それこそ金貨を買い物に使っちゃうくらいには稼いでいるのだ。
生活費ぎりぎりで暮らしている他領の村人とは違うのだよ。
まずは稼がせてからお金を使う場所を作ると言う、悪魔のようなシステムなのだ。
自分たちで作ったものを互いに買っているので、また収入が増えると言う錬金術。
経済はお金を回してこそ発展するのだよ。
例え巡回バスが有料でも商会員たちはお金を使いに来るね。
だって、欲しいものが手に入れられるのだもの。
今までの生活とは丸で違うのだ。
作物などの出来を心配し、病気や不作に備えるお金を残す事も無く、月々の給与が保証されている商会員は自由に使えるお金が多い。
労災にはお金が出るし、病気になっても商会が治療に来てくれる。
恐れていた魔物もほとんど倒され、被害も滅多に出ない。
将来に少し残すにしても、入って来る予定のお金が予定通り入って来るのだから計画が立て易い。
ついでに商会で教育したので計算がちゃんとできている。
その彼らがお金を使ってくれているから好景気なのだ。
カッセル商会の商品が売れているからと言うだけの理由ではない。
カッセル商会がお金を貯め込んでいる訳でもない。
難民にもお金使っちゃってるし。
その難民たちもその内お客さんになるのだ。
その為に働いてもらってるのだ。
そうしないと人口の少ないこの世界では需要がすぐに止まってしまう。
止まる前に新製品を投入して、需要を維持する。
そうやって文化も進んで行くのだ。
「ナギサ、それ、今考えたでしょう?
ナギサは好きにものを作ってただけよね?」
ミュリエルさん正解です。
結果から遡ってでっち上げてみました。
自分が欲しかったものを作っていただけです。
一応、王や他の貴族の手前、もっともらしいことを並べてみました。
後付けだけど、これも正解よ?
こうやって庶民の方からお金回さないと貴族が悪さするのよ?
貴族相手だけでも稼げるけど、やがて貴族のお金が足りなくなれば税を上げたりして民が困る。
税が上がれば庶民の使えるお金が減る。
民、つまり作り手が消耗して俺たちが作るものしか無くなってしまうのだ。
貴族たちは強欲だから買い物を止めたりしない。
結果、どこぞの神罰が降った国のように王侯貴族だけが偉そうに生きる国になるのだよ。
それでもカッセル商会が稼いでいるからグリエールとスプリングの領民にはどうにか援助でもするだろう。
そもそもこの2領は税を上げる必要もないけど、他の領では売れなくなる。
庶民向けの商品の需要が減るのだ。
他の領民も救おうとするなら貴族にもっと売らなければならなくなる。
そうすればまた税が上がる。
悪循環の出来上がりだ。
まあ、どうにか王や貴族たちも想像できたようだ。
要はまず庶民に稼がせろと。
運河を掘るような公共投資でも良い。
庶民がお金を回せば税収も増える。
カッセル商会以外にもお金が回るようになって行く。
こっちの循環の方が良いだろ?
「そうね、それだけじゃ無い気もするけど間違えてはいないわよね。
ミランダたちがそうやって結果を残しているのだから。」
俺の創造魔法有りきだったけど、動き出してからは民が潤った。
良いモデルが有るのだから、他の領地でも庶民に稼がせる方法を考えれば良いのよ?
バスなんてその後の話だ。
「そう言うことで、バスはまだ売れないわ。
もっと国や自分の領地を潤してからにした方が良いでしょう?
カッセル商会なら領地の作物を買ってくれるかもしれないわよ?」
他領だと作物のできが悪そうだけど、今扱ってないものなら買い取るかもしれない。
或いは王国騎士団のようにダンジョンへ入って金属をカッセル商会に売るのでも良い。
レベルも上げられてお得よ?
俺たちの入ってない階層とか買い取りが高額になるんじゃない?
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