上 下
176 / 261

第百七十七話

しおりを挟む

ショッピングセンターのオープンの日だ。
まだ数日後だと思っていたのでカダイ料理の試食をし損ねた。
通常営業の中で食べれば良いか。

営業開始前に先乗りして見たけど、皆緊張は無いようだ。
王一行の先行視察が良い方に影響したかな。

従業員の通勤バスに便乗して早くも来ているグループも居る。
まあ、商会員だろうから構わないかね。
多くなるようなら規制されるだろう。
開店前だから店には入れないけど、メインストリートのベンチに座ってチラシを見ながらどこから回るか相談しているようだ。
食料品を先に買うと重い荷物になるから帰りに買った方が良いぞ。
数時間だろうけど鮮度も違うしな。
そう言ったことも経験して慣れて行くのだろう。

そのうち各店舗ごとにチラシを出せると良いのだけれど。
時計の読み方の問題も運行予定表の時刻の横に時計の絵を入れることで一応の解決を見た。
しばらくすれば普通に時計を読めるようになるんじゃないかね。
うちの里には時計があちこちに有るので子供たちでも読めるようになっているし。
商会員ならば仕事場にも時計が有るはずだ。
農場にも設置しといた方が良いか?


開店直前、各店舗ではクリーンが掛けられたようだ。
食べ物屋さん以外でも徹底されているのね。
大きなゴミは清掃員が掃除するのだろうけど、クリーンを掛けておけば食中毒も出ないだろう。

開店直前に着く巡回バスは満員だったらしい。
いざとなったら拡張空間の扉を開けば良いので本当の満員にはならないだろう。
回る村々の全員を運べる空間が有るはずだ。

やはり最初の目標は衣服らしく、北館前には開店を待つ人が多く居る。
綿製品の在庫はもつかな?
昼前には補充に行こうかね。
倉庫でもマジックバッグを使っているから売り切れる心配は無いはずだけど。

皆、色とりどりのエコバッグを持っている。
オープン記念に配っているものだ。
エコと言ってもこの世界にレジ袋は無いけどな。
あちこちで好みの色のバッグ交換会が開かれていた。

そのうちボストンバッグくらいの容量のマジックバッグでも景品として出そうかね?
身分証に仕込んだ電子マネーもどきを改変してポイントカードにしちゃう?
ショッピングセンター内だけでも電子マネーにしちゃえば良いのか。
この世界のお金は硬貨ばかりなので重いし嵩張るしな。
商会員なら金貨持って買い物に来ていそうだから安全のためにも本人しか使えない電子マネーの方が良いな。
金貨のおつりとか持って帰るのも大変そうだし。

子供連れも増えたので、子供にはヘリウム入りの風船をあげよう。
迷子対策にもなるだろうから風船の絵は沢山の種類を用意して有る。
恐らく母親は買い物に夢中になるだろうし、迷子は出そうだよね。
子供のどこかに縛り付けておいてくれれば見付けやすいだろう。

開店と同時にお客さんたちが北館に飲み込まれて行く。
俺たちは他のお店を回りましょうかね。
まずはエルフさんのお店へ。
小容量のマジックバッグの相談でもしようか。

「金貨1枚で売るなら荷馬車半分くらいの容量かしら。
商会員なら荷馬車1台分でも良いわよね?
転売すると大儲けになりそうだけれど。」

荷馬車1台分のマジックバッグが金貨1枚、百万円相当なら安過ぎるか。
店員さんじゃなくてミュリエルとの相談になってるな。
転売防止にその場で魔力を登録して、その人にしか使えなくしちゃうとか?

「そうなるわね。
他所に売られたら他の魔道具屋が困るわよね。
一般に売られているのがそのくらいの容量だと思うわよ?
エルフが作ったものなら、その数倍の容量になるのですけれどね。」

奥に飾られているマジックバッグを指差しながらミュリエルが言った。
人の入れない空間拡張でも金貨10枚からですか。
箱馬車2台分でそのお値段なのね。
これでも安く売っているのだよね。
市場価格なら倍から数倍になるのか。

「今の人族は魔力量が少ないからそんなものよ。
インベントリを使えるわたしたちの価値観がずれてしまっているのよ。」

嫁にインベントリを付与しまくってるからな。
エルフさんたちも元から使える人が多いし。
俺の周りが皆使えるので感覚が違ってたか。

とりあえずエルフさんや他所の魔道具屋さんに遠慮をして俺製のマジックバッグは普通の価格だけのものを売ることにした。
市場を荒らしても仕方ないしな。

普通の価格のつもりが値上げされてるけど?

「ナギサの空間魔法では浄化がおまけに付いて来るでしょう?
他の人のお仕事を奪ってはダメよ。」

意識しなくても付いちゃうんだから仕方ないでしょう。
あまり俺製のものの出番は他のお店でも無さそうだな。

マジックバッグ用にフェンリルの柄のバッグを沢山作ったのでエルフさんが付与して売ってね。
このくらいの刺繍なら里で作れる人が多いから頼むと良いよ。
もっと簡易なカラープリントもそろそろ作れるようだし。
教えたシルクスクリーン印刷ができるようになっているのだ。
Tシャツ作りが忙しそうだけれど。

さて、カダイ料理を食べに行きましょうかね。
団地の人たちだよね。
カダイは北の国だからこの辺りの住民に受け入れられるだろうか。
スープ系が多いみたいだけれど、こちらに合わせて冷製スープも考えたようだ。
食材が豊富なので具がたっぷりのものも考えたらしい。
パスタとも合わせてスープスパも作られていた。
これならお店も生き残れるんじゃないかね?

麺をうどんにした方が良さそうなものもあったけど、その内自分たちで編み出すだろう。
鍋の〆にうどんを投入するみたいなのも作れそうだし。

「ナギサの世界のものを越えるのは難しそうね。
大概は発展したものまで作られているのでしょう?
うどんは箸が使えるようになるまで待ってね。」

ミュリエルはお酒のおつまみにポテチをお箸で食べてるよね?
十分使えてると思うぞ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18 】必ずイカせる! 異世界性活

飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。 偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。 ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで

あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...