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第百七十七話
しおりを挟むショッピングセンターのオープンの日だ。
まだ数日後だと思っていたのでカダイ料理の試食をし損ねた。
通常営業の中で食べれば良いか。
営業開始前に先乗りして見たけど、皆緊張は無いようだ。
王一行の先行視察が良い方に影響したかな。
従業員の通勤バスに便乗して早くも来ているグループも居る。
まあ、商会員だろうから構わないかね。
多くなるようなら規制されるだろう。
開店前だから店には入れないけど、メインストリートのベンチに座ってチラシを見ながらどこから回るか相談しているようだ。
食料品を先に買うと重い荷物になるから帰りに買った方が良いぞ。
数時間だろうけど鮮度も違うしな。
そう言ったことも経験して慣れて行くのだろう。
そのうち各店舗ごとにチラシを出せると良いのだけれど。
時計の読み方の問題も運行予定表の時刻の横に時計の絵を入れることで一応の解決を見た。
しばらくすれば普通に時計を読めるようになるんじゃないかね。
うちの里には時計があちこちに有るので子供たちでも読めるようになっているし。
商会員ならば仕事場にも時計が有るはずだ。
農場にも設置しといた方が良いか?
開店直前、各店舗ではクリーンが掛けられたようだ。
食べ物屋さん以外でも徹底されているのね。
大きなゴミは清掃員が掃除するのだろうけど、クリーンを掛けておけば食中毒も出ないだろう。
開店直前に着く巡回バスは満員だったらしい。
いざとなったら拡張空間の扉を開けば良いので本当の満員にはならないだろう。
回る村々の全員を運べる空間が有るはずだ。
やはり最初の目標は衣服らしく、北館前には開店を待つ人が多く居る。
綿製品の在庫はもつかな?
昼前には補充に行こうかね。
倉庫でもマジックバッグを使っているから売り切れる心配は無いはずだけど。
皆、色とりどりのエコバッグを持っている。
オープン記念に配っているものだ。
エコと言ってもこの世界にレジ袋は無いけどな。
あちこちで好みの色のバッグ交換会が開かれていた。
そのうちボストンバッグくらいの容量のマジックバッグでも景品として出そうかね?
身分証に仕込んだ電子マネーもどきを改変してポイントカードにしちゃう?
ショッピングセンター内だけでも電子マネーにしちゃえば良いのか。
この世界のお金は硬貨ばかりなので重いし嵩張るしな。
商会員なら金貨持って買い物に来ていそうだから安全のためにも本人しか使えない電子マネーの方が良いな。
金貨のおつりとか持って帰るのも大変そうだし。
子供連れも増えたので、子供にはヘリウム入りの風船をあげよう。
迷子対策にもなるだろうから風船の絵は沢山の種類を用意して有る。
恐らく母親は買い物に夢中になるだろうし、迷子は出そうだよね。
子供のどこかに縛り付けておいてくれれば見付けやすいだろう。
開店と同時にお客さんたちが北館に飲み込まれて行く。
俺たちは他のお店を回りましょうかね。
まずはエルフさんのお店へ。
小容量のマジックバッグの相談でもしようか。
「金貨1枚で売るなら荷馬車半分くらいの容量かしら。
商会員なら荷馬車1台分でも良いわよね?
転売すると大儲けになりそうだけれど。」
荷馬車1台分のマジックバッグが金貨1枚、百万円相当なら安過ぎるか。
店員さんじゃなくてミュリエルとの相談になってるな。
転売防止にその場で魔力を登録して、その人にしか使えなくしちゃうとか?
「そうなるわね。
他所に売られたら他の魔道具屋が困るわよね。
一般に売られているのがそのくらいの容量だと思うわよ?
エルフが作ったものなら、その数倍の容量になるのですけれどね。」
奥に飾られているマジックバッグを指差しながらミュリエルが言った。
人の入れない空間拡張でも金貨10枚からですか。
箱馬車2台分でそのお値段なのね。
これでも安く売っているのだよね。
市場価格なら倍から数倍になるのか。
「今の人族は魔力量が少ないからそんなものよ。
インベントリを使えるわたしたちの価値観がずれてしまっているのよ。」
嫁にインベントリを付与しまくってるからな。
エルフさんたちも元から使える人が多いし。
俺の周りが皆使えるので感覚が違ってたか。
とりあえずエルフさんや他所の魔道具屋さんに遠慮をして俺製のマジックバッグは普通の価格だけのものを売ることにした。
市場を荒らしても仕方ないしな。
普通の価格のつもりが値上げされてるけど?
「ナギサの空間魔法では浄化がおまけに付いて来るでしょう?
他の人のお仕事を奪ってはダメよ。」
意識しなくても付いちゃうんだから仕方ないでしょう。
あまり俺製のものの出番は他のお店でも無さそうだな。
マジックバッグ用にフェンリルの柄のバッグを沢山作ったのでエルフさんが付与して売ってね。
このくらいの刺繍なら里で作れる人が多いから頼むと良いよ。
もっと簡易なカラープリントもそろそろ作れるようだし。
教えたシルクスクリーン印刷ができるようになっているのだ。
Tシャツ作りが忙しそうだけれど。
さて、カダイ料理を食べに行きましょうかね。
団地の人たちだよね。
カダイは北の国だからこの辺りの住民に受け入れられるだろうか。
スープ系が多いみたいだけれど、こちらに合わせて冷製スープも考えたようだ。
食材が豊富なので具がたっぷりのものも考えたらしい。
パスタとも合わせてスープスパも作られていた。
これならお店も生き残れるんじゃないかね?
麺をうどんにした方が良さそうなものもあったけど、その内自分たちで編み出すだろう。
鍋の〆にうどんを投入するみたいなのも作れそうだし。
「ナギサの世界のものを越えるのは難しそうね。
大概は発展したものまで作られているのでしょう?
うどんは箸が使えるようになるまで待ってね。」
ミュリエルはお酒のおつまみにポテチをお箸で食べてるよね?
十分使えてると思うぞ。
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