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第百六十話

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爺さんから国境封鎖の依頼が来た。
夜間ではなく真っ昼間から作ってしまうそうだ。
まずは仕様を決めるために大豆倉庫前の国境で俺が壁を作って見せる。
高さ5m、幅3mと控え目なものだ。
これを10mワンブロックとして繋げて行く。

「これで控え目なのかの。
そこらの城の壁より立派なものなのじゃがのう。」

長さが必要になるので控え目よ?
本当ならガード下のように店やら住居などを組み込みたいところだ。
エルフさんたちも十分に集まってくれたので、やっても良かったのだけれど対価が高くなっちゃうからな。

「まあ、ええわい。
もしカダイから妨害や攻撃が有った場合は反撃して構わんからの。
こちらの国内での建築じゃ。
文句を言われる筋合いは無いのじゃからのう。
盗賊が増えておるから両国の安全のためじゃ。
まあカダイからやって来ておるのは分かっておるのじゃがの。」

カダイの貴族に雇われた盗賊らしい。
爺さんのところの住民に被害でも出たら神罰執行だろうけど、エルフさんたちになら反撃を喰らうだけで済むしな。
強烈な反撃なのは仕様なので諦めてくれ。

カダイ王国の国境線は50kmくらいらしいので今日中に終わりそうだ。
東西が独立して小さい国になっているらしい。
爺さんの国も小さいらしいし。
実効支配されてない国と国の間の空地が多過ぎだ。

エルフさん100人くらい居るからひとり50ブロックなら行けそうだよな。
何なら里に残ったエルフさんたちと交代しても良いし。
一応対価に渡すケーキと魔物素材の下着の用意は300セットを越えている。
下着は爺さんたちから払われる対価が高かったので追加したのだ。
特に東西に在る国ではカダイのちょっかいがわずらわしかったらしく、高い対価も喜んで払ってくれるそうだ。
カダイ王国からの被害よりは安上がりらしい。
どれだけ被害受けてるのよ。
もう少し壁のお値段上げても良かった?

車や飛行機を使ってエルフさんたちが持ち場へ向かった。
転移で魔力を消費する訳には行かないからね。


速攻で俺の分担の壁を作った後は集められた神官さんたちへの団地の作り方講座だ。
一応ダンジョンに潜って鉄も獲って来ているらしい。
レベルアップしている神官さんを集めているんだっけな。

まずは暫定メインストリートの下に下水道を通す。
当然スライム浄化槽まで作ってしまう。
スライムは後で捕まえて放り込んでおいてね。
増えたり余ったりしたら素材としてカッセル商会で買い取るから。

浄化槽からの水は農業用水として溜め池に流しておく。
更なる浄化は神官さんたちに任せても大丈夫だろう。

俺付きの皆も慣れたもので下水施設はすぐに完成した。
ここから団地の建物の説明だ。
初心者用に2階建てで始める。
神官たちの宿舎用で良いだろう。
何かテントで駐留する気だったみたいだし。
壁から少し離れているので攻撃目標にされることも無いだろう。

灯りや水の魔道具はカッセル商会製の物を使用。
そのうち爺さんのところでも作れると思うよ。
商業ギルドに登録して有るから特許使用料だけ払えば売ることもできるし。

「ふむ、10部屋があっと言う間にできたのう。
こうして団地も作られたのじゃな。
これが2棟も有れば地方の村は全員住めそうじゃ。
ぜひ神官たちには覚えてもらわねばの。」

頑丈なので多少の魔物には耐えられるしな。
神官さんは何でも屋になりそうだけど。


そうこうしている内にカダイ王国から大豆を受け取る人たちがやって来た。
商業ギルドの人たちのはずなのに護衛が多いな。

「魔物に加え、盗賊も増えておるしな。
盗みを働いた者ではこの国に逃げて来ることもできんかもしれんのう。」

おや、入国の門に結界が有るのに気付いているのか。
精霊さんチェックを設置しちゃったからな。
魔石に魔力込めるのを忘れないでね。
うちの里よりは緩い結界だけど、これでほぼ神罰準拠の封じ込めになるだろう。
他の2国用にも結界用魔道具を持って行ってもらってるし。

カダイ王国の商業ギルドの人によれば、平民たちの移動が制限されているらしい。
ここへ逃げて来た難民はこの近所に住む者だけだそうだ。
神罰のときと違って教会に逃げ込むとかできないか。
まあそれができると神罰執行されてる状態だけどな。
下手に壁を作って神罰執行されないようにしちゃったのはまずかったか?

「民を虐げておればやがて神罰も降るじゃろう。
その前に王侯貴族が自滅してくれると良いのじゃがのう。」

それは無理だろうな。
まずは平民たちが沢山死んでしまうぞ。
どれだけ国民が居るのか知らないけれど、全員に行き渡る大豆の量じゃ無いだろう。
追い詰められれば王侯貴族も大豆を食べるだろうし。

「カダイ内の教会にこの結界でも張ってもらうかのう。
それでも食料を途中で奪われてしまうかの。
もはや神罰は避けられんのじゃな。」

カダイの王侯貴族内で馬鹿を処理してくれない限りは神罰執行かもね。
今更そう言う正気な人が出て来るとも思えないけど。
どうにか人の手で解決できないものかね。
神罰だと周りの国まで迷惑を被るからな。

どうせなら東西の国と協力してカダイ王国を滅ぼしちゃう?
元々同じ国だったなら王家の血筋とかも居そうじゃないかね。

「それは居るじゃろうが、瘴気を増やすのは困るのう。
ダライ王国もマダイ王国も戦をする余裕が有る訳じゃなかろうて。
ううむ、どうしたものかの。」

まあ神罰で被害を被るであろう3国で決めてくれや。
折角壁を作ったのだからカダイの民を見捨てるのもアリだろう。
爺さんとしては納得行かないかもしれないけど。

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