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第百四十四話

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関税を上げた王都北側の3領主がカッセル商会を訴えた。
未払いの関税の支払いを求めて商業ギルドの預託金を差し押さえようとしたらしい。
手形決済とか有るから預託金の制度も有るのだけれど、カッセル商会は他の商会から買うことは無いので預託金を預けてはいない。
3つの領地に有る商業ギルドで処理できなかったので王都の商業ギルドへと報告が来たらしい。
そこで詐欺だとバレているけれども、どうせならと王の御前で裁判をしてしまおうと言うことになったらしい。
領主からの訴えなので大事になるわな。

それにしてもカッセル商会が出入りしないと分かった途端に次の手を打つのか。
雑な顛末になりそうなのだが大丈夫?

「こちらの書類に有るように関税未払の商品が我らの領地に持ち込まれたのは明らかだ。
罰則金を含めて金貨100枚ずつ納めてもらいたい。」

当然のように書類も偽造なんですけどね。
罰金含めて金貨100枚になるような取引をそもそもしてないだろう。

「ちょっと拝見。
ああ、これが普通の契約書の形式なのね?
文言も穴だらけだな。
これを証拠とするのは無理が有るだろうね。
商業ギルドとしてはこの書類をどう見ます?」

商業ギルドの代表として来ているのはあのニヤリとしたお姉さんらしい。
王国商業ギルドの副ギルド長だと言う話だ。

「これでは証拠になりません。
いえ、詐欺の証拠となりますね。
これはカッセル商会の書類では有りません。
しかし、カッセル商会長のお名前を無断で使用するとは命知らずな。」

偽造するにしても本物を見たことがないのだろうな。
3つの領の商会には王都で売ってるだけで大口の契約をしたことが無いのだ。
商品が足りないから契約書を取り交わすような大口の注文には応えられないのよ。

「何を言う、きちんと確認を取ったものであるぞ。」

「あー、もしかして確認したと言うのはウラジミール・ドリアンとか言う人かな?
俺の鑑定でこの契約書の製作者と名前が出てるんだけど。
本当に命知らずだよね?
ただの詐欺じゃなくて国家反逆罪になるだろうに。
それに乗っかったあんたたちも死罪確定よ?」

こちらにドリアン有るんだな。
果物ダンジョンで落ちるだろうか。
俺がそんな余計なことを考えている間にミスリルメッキの剣を撫でている騎士団長が前に出て来た。
使ってみたいのね?
魔物とか切って試したのだろうに。
てか、騎士団長自ら罪人の首落とすのかよ。

「えー、こちらが本物のカッセル商会の契約書です。
見慣れないと思いますが、割り印と言うものを使って契約書2通に押して有るんですね。
押した時点で2通とも改変ができない仕様になっています。
書いてある文言もちょっと見慣れないと思いますよ?
これくらい書かないと穴だらけだったので改善させましたから。」

契約書は俺が全面的に介入して改めさせた。
精霊さんに頼んで罰則を発動させるのは却下されたけど。


「さて、ユーイング伯爵、他に言うことは有るか?
王国は剣の発注でカッセル商会と契約書を交わしたので、わたしも本物を見たことが有るのだよ。
凝ったものだと思っていたが、なるほど偽造できないものだな。
関税と罰金で金貨100枚にもなる契約となれば剣の契約書と同等以上のものとなるはずなのだがね。」

剣100振りは金貨100枚だものね。
税と罰金でそれと同じなら品物は金貨何百枚よ?
そんな契約、王国としかしてないわ。
船をお買い上げしてもらったからな。

王もノリノリで攻める気なのね?
2週間待つ気だったのが速攻片付きそうなので機嫌が良いのか?

「さて、侯爵の名を騙った詐欺ともなればナギサ殿の言う通り死罪は免れぬな。
何だ?カッセル商会の会長がグリエール侯爵だと気付いていないのか?
それでよくグリエールのサインを偽造したものだな。
本当に情報に疎いのだな。
夫人や令嬢に聞けばすぐに分かっただろうに。
カッセルの名を聞いても気付かぬ愚か者には言っても仕方ないことか。

ユーイング伯爵、スキャッグス伯爵、ボーン伯爵の爵位ははく奪する。
それぞれの領地も返してもらうこととする。
騎士団長、3人を捕え余罪も追及せよ。
ドリアン商会へ兵を送り関係者すべてを捕えよ。
ん?ああ、カッセル商会にも賠償金を渡すから心配は要らないぞ。」

もらえるものはもらうけど、別に気にしてはいないよ?
王が仕事してるから驚いただけだ。
ミランダに小突かれたけど、何故思っていることがバレた。


「王印もこの仕様で作ってもらうか。
さすがに王国との契約書を偽造する者は居ないとは思うがな。」

えー、御璽を作るの?
希少金属使うからお高いよ?
あれこれ魔法を仕込んじゃうし。
王以外には使えないようにするとか。

「王以外に使えないのは良いとして、他に仕込まれていないか調べねばならんか。
それほどの鑑定を使える者は居るのか?」

偽契約書の作成者が読み取れるくらいじゃないと無理だね。
普通はそこまで鑑定できないらしいぞ。

「まあ、それこそ契約書で縛れば良いんじゃない?
ちゃんと仕込むもの書き出して、それ以外は有りませんと書いておけばOKでしょ。」

契約魔法を使える者は沢山居るだろう。
罰則が俺に効くかどうかは知らんけど。

王以外が押せない
押した後は改変不可
王が魔力を込めると押印したものが淡く光る

この3つを仕込んで金貨10枚と格安でミランダが注文を受けた。
基本、金でミスリルをちょっと混ぜれば良いかな。
材料は王国が提供することになった。

王の目の前で作ることとなったけど、漢字が使えないと字が細かいな。
円形にしちゃえば良いのか。
真ん中に王家の紋章を入れてっと。

この図柄はドラゴンだよね?
ドラゴンも居るのかい。

「かつての王がドラゴンにこの地を託されたと言う話が残っていてな。
何か有ったらドラゴンが助けてくれるらしいが、未だかつてそのような事態には陥っていないのだ。
ドラゴンが現れたらそれだけで災害になりそうだがな。」

ドラゴン伝説は有るのね。
精霊さんも居るし、ドラゴンが居ても驚かないぞ、多分。

現れたらセラフィナが戦いに行きそうだけどな。
戦い終わって酒を酌み交わすまで有りそうだ。


ついでに馬車も納品。
船以外にもお買い上げしてもらってたか。
最初は王家に渡さないといけないものね。

中身は馬車4台分と俺たちにすれば狭いけど、普通は十分だろう。
結界で障壁張れるようにしてあるし。
サービスで横に王家の紋章入れておこうか。
贅沢に金箔押しでっせ。
御璽の余った金なのは内緒だ。

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