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第百四十三話

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「昨日の夕方には関税の値上げが発表されていますので、今日から適用されるようですわ。」

朝からミランダの機嫌が悪い。
しかし対策を取られているとも知らずに値上げを実行するかね。
王都近くの複数の領主なら王城の動きにも敏感じゃなきゃ生き残れないだろうに。
近いからこそかえって情報収集を疎かにしているのだろうか。
こちらとしては相手にしないのでどうでも良いけどな。
後は王たちにお任せしよう。

そんなことよりダンジョン移設だ。
コアに魔力を込めさせられているので、朝から魔力欠乏気味なんですが。

「そのくらいで良いわ。
さあダンジョンを開通させるわよ。」

アマリア様にミュリエルがダンジョン開通の方法を聞いているようだ。
ダンジョン用に建てたホールにダンジョンコアを置いて待つだけらしいけど。
ホールには買い取り所とか休憩所とか冒険者ギルドの出張所とかが入っている。
ミランダの他に冒険者ギルドのシルフィーさんも来ているので皆でお茶して待つこととなった。

入る階層がランダムだったのは解消されるそうだ。
魔物も9階層まではゴブリン系、11~19階層がコボルト系、21~29階層がコーク系になる予定だ。
10階層ごとにボス部屋だけの階層になって30階層にケルベロスを配置するらしい。
当面は30階層までだけど、勝手に成長して行くそうだ。
30階層でケルベロスとか厳しいダンジョンだな。
その後のボスの方が弱かったりしそうだぞ。

ドロップがランダムなのは変わらないそうだ。
奥へ行くほどレアが増えるらしい。
ボスを倒せば地上へ戻るかその次の階層へ行くか転移陣が出て選べる。
そして次の階層から再開もできる仕様だそうだ。
ボスを倒しておけば結構レアを採りに行けるな。
レアなお野菜に心当たりは無いけど?

「その辺りもきちんと調べる体制は作ってあるわ。
取り敢えずシルフィーたちが30階層まで確認に行ってくれるのよ。」

おお、冒険者ギルドのお仕事っぽいじゃん。

「やっと普通のギルドの仕事ね。
買い取り以外の仕事ができて良かったわ。」

その買い取りもカッセル商会が直接買い取ってたりするからシルフィーさんのお仕事少なかったもんね。
冒険者ギルドをここに作った意味がようやくできるな。
一通り確認が終わったら、またお仕事減りそうだけど。
冒険者登録も皆終わってるし。
後は成人する子供たちくらいか。


「そろそろ良いんじゃないかしら。
10階層まではわたしたちも見に行くわよ。」

1時間も掛かって無いけどダンジョンは開通しているようだ。
魔力欠乏気味のまま俺もついていくか。
相手はゴブリンだけど魔力回復ポーションを1本飲んでおく。

まずは1階層。
入ったら農地じゃねぇか。
ゴブリンが育ててるのか小麦畑だ。

「刈り取るにもゴブリンが守っているようね。
何かゴブリンの畑で盗みに入っている気になるわ。
小麦もリポップするのよね?」

ミュリエルの言う通り、ゴブリンを襲って小麦を採って行くような。
まるでこちらが悪者っぽいけど、魔物から見ればいつもと同じか。
それに実際はダンジョンが育てているだけで、ゴブリンが種を蒔いたりしている訳でもあるまい。
燃やさないように火魔法は使えないな。
ゴブリン退治はお任せして俺は小麦を収穫しますかね。
いつでも刈り取れる状態まで育ってるってことだよな。

いつもと違って階層の端から端まで調べて回った。
シルフィーさんたちは地図も作っているようだ。
隠し部屋も有ったりする……したよ。
魔物は居なくて宝箱だけが置いてある。

「宝箱は隠し部屋に有る形式ですね。
場所が変わらなければ定期的に拾えますね。」

シルフィーさんが地図に隠し部屋を書き込んでいる。
ダンジョン内の宿泊地にも良さそうだものね。
他所もこの仕様なら転移ゲートを置くのにちょうど良いのに。

宝箱の中身も小麦だった。
この調子で生えてるのと魔物倒したドロップと宝箱とで出て来るのかな。
沢山採れるから良いけど。

「団地一つくらいなら賄えそうね。
子供たちに刈る役を任せれば良いわよね。」

ゴブくらいなら子供でも倒せそうだけど、麦刈りでも良いか。
各階層で同じ仕様なら結構な人数を動員できそうだ。
麦は魔物じゃ無さそうだから経験値を稼げないな。

「魔物退治も経験できそうね。
向こうに畑を気にしていないハグレが居るわ。」

畑を気にせず魔法を放てそうな場所にゴブリンが居た。
見えてはいるのにこちらへ向かって来ることも無いから担当ゾーンとか有るのかな?

「そうね、向こうの領域に入らなければ襲って来ないようよ。
遠くから攻撃すれば反応してくるかもしれないけれど。
子供が焦って攻撃しないように注意しないとね。」

まだ1階層だし、楽ちん仕様なのかもね。
これなら5人くらいの子供を連れて来てもひとり2匹くらいずつの魔物は倒せるかね。
舐めて子供だけで入らないように気を付けないとな。

階層ごとに隅まで調べていたので時間が掛かり、俺たちは5階層で引き返した。
シルフィーさんたちは今日中に10階層をクリアする予定で進んだ。

各階層で仕様は変わらなかったので子供たちの育成にはちょうど良いかも。
生えている作物はランダムのようだ。
帰りの1階層では水田に成っていた。
水源が見当たらないんだけどな。
田畑とは言え地形を変えて来るとは便利なダンジョンだ。

こうなるようにアマリア様と打ち合わせをしたんだろうけどな。
食料供給と子供たち育成を兼ね備えているので十分お役立ちダンジョンだ。


俺もオーク辺りで経験値稼ぎができるように少しずつ潜っておこう。
ケルベロスは遠慮しておくけどな。

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