上 下
12 / 261

第十二話

しおりを挟む
罰とか言われたが、ミランダも俺も罰だと思わなかったのは幸いだった。
ミュリエルとセラフィナのふたりが乱入する前に俺たちふたりで話し合いもできたし、良い夫婦のスタートを切れたと思う。
妻3人体制の大変さも理解してしまったけどね。


グリエール侯爵領にすぐ旅立つ訳では無い。
一応、王に代理は要らなくなるかもしれないと手紙で伝え、返事を待っている状態だ。
なので時間が有るうちに教会へ行くことにした。
ミランダの寿命を延ばしてもらいに。

なのに教会前で神官見習い風な少女ふたりに捕まった。
この娘たちもピンク義妹の被害者なのだとか。
別に姉であるミランダに抗議とか賠償を求めるとかの話ではないという。

ミランダが知っている近くの食事処で個室に入った。
貴族が使う店なら大概個室があるのだそうだ。
今、皆の前には紅茶とクレープっぽい物が並んでいる。
色からすると小麦の生地に砂糖漬けのフルーツが包まれているみたいだ。
クリームが無いとはどういうことだ。
取り敢えずそれは置いといて。

「わたしたちも聖女見習いとしてフローラ様とご一緒に教会で修業をしていたのです。
しかし、わたしたちの婚約者もフローラ様に有りもしない虐めを吹き込まれ、婚約破棄されてしまいました。
わたしたちの父にも信じてもらえず、わたしたちは勘当されてしまいました。
今は教会にお世話になっています。」

流石ピンク頭、手当たり次第だったのだな。
まだ教会に伝手つてのあったこの娘たちは逃げ場が有って良かった。
言わば、婚約破棄されて修道院送り、みたいなものか。
他にも教会に伝手つての無い被害者居るんじゃないの?
国のフォローは無いのか?
王はミランダだけ放置してたようなこと言ってたけど、他の被害者の報告上がってないのかもしれないな。

「このままわたしたちは聖女か神官に成るしか道は無いのです。
それは構わないのですが、まだまだ治癒の魔法が十分に使いこなせないのです。
そこへミランダ様が死病の治療法を見付けられたミュリエル様と一緒に王城へ上がられたとお聞きしました。
是非ミランダ様にはミュリエル様にわたしたちを紹介頂きたいのです。
わたしたちはミュリエル様に治癒の魔法をお教え願いたいのです。」

俺の隣に居るのがミュリエルだと何となく判っているみたいだけど、直接お願いする訳には行かないものね。
ミランダにお願いする形になるのは判る。

「ミュリエル様にご紹介するのは構わないのですが。」

そうね、教える時間が無いよね。
グリエール領へ行こうかと言ってるときだものね。

「わたしがミュリエルよ。
教えてあげることは構わないのだけど、わたしたちはグリエール侯爵領へ行こうとしてるの。
教えてあげる十分な時間は無いのよね。」

教えるとなれば、多分俺がミュリエルに教えた身体の構造とかから始めないとね。
王都では見本になる魔物も少ないからね。

「聖女見習いって教会に属しちゃってるの?」

「いえ、まだです。
聖女となって所属を決めるか、神官となってからです。」

俺の質問に見習いの娘が答えてくれた。

「じゃあ、グリエール領にもらってっちゃえば?」

ミランダに言ってみたのだが。

「この娘たちも妻にしちゃうの?」

ミュリエルさん、小声でも皆に聴こえちゃいますよ。

「いやいや、教えるにしても王都じゃ教材が少ないでしょう?
グリエール領なら沢山有るかな、と思って。
教会に所属してると配属とかの問題になるかもしれないけど、自立するためにグリエール領へ行くなら構わないかなと。」

教材が魔物だと知っているミュリエルとセラフィナは頷いている。
まだ治癒魔法について教えていないミランダと見習いの娘たちは首を傾げている。

「そうね、グリエール領へ行けば教える時間もできるし、教材も有るわね。
もらってっちゃいましょう、ミランダちゃん。」

「ついでに教会を頼れなかった被害者も調べて連れてってあげたら?
他にも婚約破棄されたピンク頭被害者の会会員が居そうじゃない?
頼れる人が居ない場合そろそろ1週間越えて危ない時期になるんじゃないかな。」

貴族令嬢が市井に放り出されて1週間もつかどうか怪しいけどさ。
身に着けたアクセサリー売れればそのくらいは耐えられるかもしれない。

ピンク頭被害者の会にミュリエルとセラフィナが笑っている。
ミランダを含めた他の娘たちは当事者なので笑えないか。
思い当たる被害者のことを考えてるのかもしれない。

「婚約破棄の事は王城へ問い合わせれば判るかもしれないけど、今どこに居るかは判らないか。
君たちは聞いた事無い?」

「王子の側近たちの婚約者3人も破棄されたと聞いていますが、勘当されたか、今どうしているかは分かりません。」

まともな親なら勘当しないで、ちゃんと調べるなり娘信じるなりするか。

「一応、グリエール家の関わった事だから調べて救済が必要なら、した方が良いよ、ミランダ。
国が放置してるなら尚更だ。
国や王族の体裁ていさい気にして後手後手に成ってると思うよ。
万が一ミランダと同じ目に会っていたら取返し付かなくなるよ。」

「この後あの奴隷商にも聞いてみよう。
わたしも救済する必要が有ると思うぞ。」

「そうね、最悪の事態を想定して動く、だったかしら。
見習いのあなたたちはどうするの。」

「わたしはグリエール領へ連れて行ってもらいたいです。
あとふたり見習いで同じ境遇な子が居るのでその子たちも誘ってみます。」

「わたしも行きます。
他の被害者の事も友人に聞いてみます。」

聖女見習いふたりゲットだぜ。
医療機関でも作りますかね?

「そうですわね、グリエールの名に懸けて皆を見付け出します。
また少し出発が遅れるかもしれません。
お待たせして申し訳ありません。」


その後女神様に会ったら3人の居場所を教えてくれた。
他のピンク頭被害者の会会員は勘当されてはいないそうだ。
アマリア様もピンク頭被害者の会が気に入ったのね。
ふたりが例の奴隷商に居ましたよ。
他の奴隷商から買い取って来たらしい。
ミランダ絡みと判っていたのでセラフィナに連絡入れるところだった。
そりゃあ、この短期間に元貴族令嬢が奴隷になってれば関連を疑うよね。

セラフィナがまたお金払って俺を主人にした。
いやいや、すぐ解放するなら俺にしなくても良いでしょう。
もうひとりはギリギリ自力で宿に居ました。
この先どうするか悩んでいたそうで、皆グリエール領へ行くことに成りました。

見習いの娘4人も合わせて7人もらって行く事に。
治癒魔法だけじゃなく、魔法全般を底上げしちゃう気になってるミュリエルとセラフィナが居ればどうにか生活できるように成れるでしょう。
ミランダが雇ってグリエール領の治癒師か魔法師にしちゃえば良いんじゃない?


しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたと思ったら何故か神界にいて神になりました

璃音
ファンタジー
 主人公の音無 優はごく普通の高校生だった。ある日を境に優の人生が大きく変わることになる。なんと、優たちのクラスが異世界召喚されたのだ。だが、何故か優だけか違う場所にいた。その場所はなんと神界だった。優は神界で少しの間修行をすることに決めその後にクラスのみんなと合流することにした。 果たして優は地球ではない世界でどのように生きていくのか!?  これは、主人公の優が人間を辞め召喚された世界で出会う人達と問題を解決しつつ自由気ままに生活して行くお話。  

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

処理中です...