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しおりを挟むそして夏休み初日の朝がやってきた。
夏らしく強い日差しに、朝から高い気温。
そんな中、愛はベルちゃんの点検に余念がない。
「もうみんな揃ったぁ」
相変わらずのんびりとした声で、生垣の向こうに集まって楽しそうにお喋りしている女子たちに、愛が尋ねた。
「彩香・・・ゆず・・・彩乃ちゃんに結衣。うん、みんな揃ったよ、お母さん!」
「あらぁ?大和くんはぁ?」
「あっ、大和はねぇ・・・」
明衣が言いづらそうにしていると、バイクのエンジン音が近づき、斉藤家の庭先に入っててきた。
「オッス!鷹文は?」
「鷹文くんは・・・」
彩香が家の中の様子を伺った。
「あらぁ、そのバイクは大和くんかしらぁ」
大和声に気づいた愛が、生垣の扉からこちら側にやってきた。
「うっす!俺も免許、取りました!」
微笑みながら近づいてくるあいに、大和が元気よく答えた。
明衣と結衣は、静かに後ずさっていく・・・
「いつの間に取ったのかしら?おばさん全然知らなかったわよぉ」
愛の目の奥が一瞬光ったきがした。
「6月だったかな。割とすんなり取れましたよ」
「そうなのぉ・・・」
微笑みを絶やさない愛。
「大和来たか・・・
おはようございます、愛さん。荷物だけお願いします」
そこに大きな荷物を持った鷹文がやってきた。
「はぁい。ベルちゃんに入れておいてねぇ。ところで鷹文くん。大和くんがバイクの免許取ったの知ってたぁ?」
「あ・・・はい。一昨日聞きました」
「そぉなのぉ・・・」
相変わらずゆるゆるとした笑顔の愛。
「おい、まさかおまえ・・・」
鷹文が大和の耳元でささやいた。
「な、なんだよ、鷹文!」
「愛さんに言ってなかったのか?免許取ったこと」
鷹文はそのまま小声で呟いた。
「ああ、話したぜ、今」
「そ、そうか・・・」
鷹文が頭を抱えた。
「大和くんはぁ、どおしてぇ、今日までおばさんに話さなかったのかなぁ?」
鷹文と入れ替わるように、愛が大和すぐ横にきた。
「へっ・・・なんで話さなきゃいけないんすか?」
「あらぁ、忘れちゃったのかしらぁ。みんなで自転車練習した時に『新しい乗り物乗る時は、愛さんの安全講習必ず受けるのよぉ』っておばさん言ったわよねぇ」
笑顔なのに全然笑っているようには見えない・・・
愛の言葉に、鷹文、明衣、結衣はこくこくとうなずいた。
「た、鷹文は?」
「鷹文くんはもちろんやったわよぉ。一緒に別荘までバイク取りにいって、その時にねぇ」
「愛さん、大型二輪の免許持ってて、一緒に走ってもらったんだ」
別荘には、今鷹文が乗っている400ccの他に大型のアメリカンバイクも保管されていた。
「まじ・・・かよ・・・」
大和の顔から血の気が失せて行った。
「仕方ないわねぇ・・・大和くんの荷物はそれだけぇ?」
「は、はいっ!!」
大和は、気を付けの姿勢で答えた。
「彩香ちゃん、そっちの戸締りは大丈夫かしらぁ?」
「はい、確認しました」
彩香もいつにない緊張感で、愛の問いに答えた。
「そぉ、じゃあ女の子はベルちゃんに乗って。ちょぉっと寄り道するから、鷹文くんと大和くんは、後ろからついてきてねぇ」
言いながらほんの刹那、鋭い視線で大和睨み、すぐ笑顔に戻る愛。
「「は、はい!」」
大和だけでなく鷹文も、青ざめながら兵士が上官に対するが如く気をつけの姿勢で返事をして、慌てず慎重にバイクにまたがった。
2人が運転前の確認作業を終えるのをしっかり目視した後、愛はベルちゃんをゆっくりと駐車場から出したのだった。
夏らしく強い日差しに、朝から高い気温。
そんな中、愛はベルちゃんの点検に余念がない。
「もうみんな揃ったぁ」
相変わらずのんびりとした声で、生垣の向こうに集まって楽しそうにお喋りしている女子たちに、愛が尋ねた。
「彩香・・・ゆず・・・彩乃ちゃんに結衣。うん、みんな揃ったよ、お母さん!」
「あらぁ?大和くんはぁ?」
「あっ、大和はねぇ・・・」
明衣が言いづらそうにしていると、バイクのエンジン音が近づき、斉藤家の庭先に入っててきた。
「オッス!鷹文は?」
「鷹文くんは・・・」
彩香が家の中の様子を伺った。
「あらぁ、そのバイクは大和くんかしらぁ」
大和声に気づいた愛が、生垣の扉からこちら側にやってきた。
「うっす!俺も免許、取りました!」
微笑みながら近づいてくるあいに、大和が元気よく答えた。
明衣と結衣は、静かに後ずさっていく・・・
「いつの間に取ったのかしら?おばさん全然知らなかったわよぉ」
愛の目の奥が一瞬光ったきがした。
「6月だったかな。割とすんなり取れましたよ」
「そうなのぉ・・・」
微笑みを絶やさない愛。
「大和来たか・・・
おはようございます、愛さん。荷物だけお願いします」
そこに大きな荷物を持った鷹文がやってきた。
「はぁい。ベルちゃんに入れておいてねぇ。ところで鷹文くん。大和くんがバイクの免許取ったの知ってたぁ?」
「あ・・・はい。一昨日聞きました」
「そぉなのぉ・・・」
相変わらずゆるゆるとした笑顔の愛。
「おい、まさかおまえ・・・」
鷹文が大和の耳元でささやいた。
「な、なんだよ、鷹文!」
「愛さんに言ってなかったのか?免許取ったこと」
鷹文はそのまま小声で呟いた。
「ああ、話したぜ、今」
「そ、そうか・・・」
鷹文が頭を抱えた。
「大和くんはぁ、どおしてぇ、今日までおばさんに話さなかったのかなぁ?」
鷹文と入れ替わるように、愛が大和すぐ横にきた。
「へっ・・・なんで話さなきゃいけないんすか?」
「あらぁ、忘れちゃったのかしらぁ。みんなで自転車練習した時に『新しい乗り物乗る時は、愛さんの安全講習必ず受けるのよぉ』っておばさん言ったわよねぇ」
笑顔なのに全然笑っているようには見えない・・・
愛の言葉に、鷹文、明衣、結衣はこくこくとうなずいた。
「た、鷹文は?」
「鷹文くんはもちろんやったわよぉ。一緒に別荘までバイク取りにいって、その時にねぇ」
「愛さん、大型二輪の免許持ってて、一緒に走ってもらったんだ」
別荘には、今鷹文が乗っている400ccの他に大型のアメリカンバイクも保管されていた。
「まじ・・・かよ・・・」
大和の顔から血の気が失せて行った。
「仕方ないわねぇ・・・大和くんの荷物はそれだけぇ?」
「は、はいっ!!」
大和は、気を付けの姿勢で答えた。
「彩香ちゃん、そっちの戸締りは大丈夫かしらぁ?」
「はい、確認しました」
彩香もいつにない緊張感で、愛の問いに答えた。
「そぉ、じゃあ女の子はベルちゃんに乗って。ちょぉっと寄り道するから、鷹文くんと大和くんは、後ろからついてきてねぇ」
言いながらほんの刹那、鋭い視線で大和睨み、すぐ笑顔に戻る愛。
「「は、はい!」」
大和だけでなく鷹文も、青ざめながら兵士が上官に対するが如く気をつけの姿勢で返事をして、慌てず慎重にバイクにまたがった。
2人が運転前の確認作業を終えるのをしっかり目視した後、愛はベルちゃんをゆっくりと駐車場から出したのだった。
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