家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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「彩香⁉︎」
「えっ?」
いきなり自分の名前を呼ばれた彩香は、驚いて声の方を向いた。
「・・・やっぱり彩香だ!」
声の主は彩香に駆け寄ってきた。
「・・・史紀くん⁉︎」
彩香は呆けたように史紀を見つめた。
「彩香・・・突然いなくなって、ずっと心配してたんだぞ!」
史紀は彩香の前にしゃがみ込んで、じっと彩香を見つめた。
「・・・ごめんね」
彩香はそっと目をそらした。
「でもよかった・・・元気、みたいだな」
史紀は彩香の両肩に手を乗せて微笑んだ。
「う、うん・・・」
予想もしなかった再会に、戸惑いを隠せない彩香。
「ね、ねえ、彩香ちゃん。山本くんと知り合いだったの?」
史紀を追いかけるようにやってきた舞菜が、彩香に尋ねた。
「舞菜さん・・・史紀くんは京都にいた頃、隣に住んでいたんです」
「そう、なんだ・・・」
舞菜が小さく呟いた。
「えっ・・・小林と彩香、知り合いなのか?」
今度は史紀が驚いて尋ねた。
「ええ。彩香ちゃんとは去年偶然知り合って、お友達になったの」
「そうだったのか・・・」
史紀は、すぐそばに彩香の存在があったのに気付けなかった自分に落胆した。
「・・・山本くん、そろそろ先生のところに行かないと」
舞菜は出来るだけ自然に切り出した。
「あっ、そうだな・・・彩香、この後少し時間ないか?」
「ごめん。これから行くところがあるの。それにバイトも・・・」
「そ、そうか・・・じゃあ連絡するよ。近いうちにまた会おう」
「う、うん・・・」
彩香と史紀は連絡先を交換した。
「彩香・・・もう、どこにも行くなよ」
「うん・・・史紀くん、またね」
史紀との再会に何故か戸惑いながら、彩香は写真館へと向かった。

写真館を出た彩香はその足でバイトに向かい、久しぶりの仕事を終え帰宅した。
そして夕食を終えた頃、舞菜から電話がかかってきた。
「彩香ちゃん、今、大丈夫?」
「はい」
「あ、あのさ・・・彩香ちゃん、山本くんと知り合いだったんだね。びっくりしたよ」
舞菜はいつになく明るい声で話し始めた。
「・・・さっき少し話しましたけど、史紀くんは私が京都に住んでいた頃、マンションのお隣さんだったんです」
「そ、そうなんだ」
「はい。それでいつも仲良くしてくれて、父と3人で撮影に出かけたりしてたんです」
「へ、へぇ・・・本当に仲良かったんだね」
「はい・・・」
舞菜とは裏腹に彩香の声は浮かなかった。
「彩香ちゃん、どうしたの?」
「いえ・・・大丈夫です」
「・・・それで、どうしてこっちに?」
「もともとこの辺りに住んでいたんですけど、父が写真の拠点に京都を選んで、それで家族みんなで引っ越したんです。私が小学校入学する時に」
彩香は静かに話を続けた。
「史紀くんとはその時に知り合ったんですけど・・・父が行方不明になって、こっちに・・・祖母の家に戻ったんです」
「あっ・・・ごめん」
「いえ・・・大丈夫ですよ」
「・・・山本くん、彩香ちゃんたちが突然いなくなったみたいに言ってたけど」
「父がいなくなってから私も母もすごく塞ぎ込んでしまって・・・多分心配した祖母が呼んでくれたんだと思います。その頃のことはよく覚えていないんですけど、気付いたらこっちで暮らしてました」
「そっか・・・ごめんね変なこと聞いちゃって」
「いえ・・・舞菜さんも史紀くんと知り合いだったんですね」
「う、うん・・・同学年で同じ写真科だからよく話すようになってね」
「そうだったんですか・・・」
「と、ところで彩香ちゃん。山本くんから連絡はあった?」
舞菜はなるべくさりげない調子で、彩香に尋ねた。
「いえ・・・」
「そっか・・・そうだよね。突然じゃ何話していいか分からないものね・・・ごめんね、私も突然電話しちゃって」
「いえ。私も誰かとお話ししたかったから、よかったです」
彩香は少しだけ明るく答えた。
「そっか・・・じゃあ、おやすみなさい」
「はい。おやすみなさい」

舞菜との電話を終えた彩香は、お風呂に入って部屋に戻ってきた。
「ねえふみくん。史紀くんがいたんだよ」
ふみくんを抱え上げた彩香は、静かにベッドに横たわった。
「史紀くん、東京に来てたんだね・・・」
寂しそうにふみくんを見つめる彩香。
「パパのこと・・・いっぱい、思い出しちゃった」
彩香は目を閉じてふみくんを抱きしめた。

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