354 / 428
2
1
しおりを挟む
小田原から戻った翌日、彩香は日陽大学に来ていた。
「おお、彩香ちゃん。よう来たな」
ドアから入ってきた彩香を見て、荒田はにっこりと微笑んだ。
「荒田先生、お時間いただいてありがとうございます」
「まあまあ、そっちに座んなさい」
「はい」
彩香がソファーに座ると、荒田が彩香の前に飲み物を置いた。
「で、今日はどうしたんじゃ?」
「はい。この写真なんですけど・・・」
彩香は朝靄の桜の写真を見せた。
「ほう、これはなかなか・・・彩香ちゃん、また腕を上げたな」
「ありがとうございます。この写真、これくらいのサイズのパネルにしたいんですけど、どうすればいいか分からなくて・・・」
彩香は、小田原の家に置かれていた雄大の写真の画像に切り替えた。
「これは・・・雄大の写真じゃないか!」
「はい、桜の写真集と同じ場所で撮ったお父さんの写真です」
「彩香ちゃん、上杉さんと知り合いなのか?」
「はい・・・」
彩香はこの写真を撮ることになった経緯を説明した。
「そうか・・・そんな偶然もあるんじゃな」
「ゆずのおばあさまから、父の写真と同じ大きさのパネルにして欲しいと言われまして。できたら同じフレームで仕上げたくて、先生ならご存知かなと思って・・・」
「なるほど、そういうことか。どれどれ、もう一度雄大の写真をよく見せてくれんか」
彩香は自分のノートパソコンを荒田の方に向けた。
「・・・このフレームは確かあいつんとこじゃったな」
荒田は書棚に向かい、名刺ファイルを取り出して戻ってきた。
「おお、これこれ。この写真館じゃ」
荒田は名刺を彩香に渡した。
「雄大のもそこで作ったはずじゃから、そこに連絡してみるといい。近くにあるから、帰りにでも寄ってみなさい」
「はい」
彩香はスマホに名刺を取り込んだ。
「・・・先生、今日はありがとうございました」
しばらく荒田と話をした後、彩香は席を立った。
「何かあったらまたいつでもきなさい」
荒田はにっこりと微笑んだ。
「はい。では失礼します」
彩香は荒田に一礼して教授室を後にした。
建物を出た後、彩香はベンチに座ってスマホのマップに写真館の住所を打ち込んでいた。
「・・・さ、彩香⁉︎」
マップを見ていると、突然、低い声の誰かが彩香を呼んだ。
「えっ・・・」
「おお、彩香ちゃん。よう来たな」
ドアから入ってきた彩香を見て、荒田はにっこりと微笑んだ。
「荒田先生、お時間いただいてありがとうございます」
「まあまあ、そっちに座んなさい」
「はい」
彩香がソファーに座ると、荒田が彩香の前に飲み物を置いた。
「で、今日はどうしたんじゃ?」
「はい。この写真なんですけど・・・」
彩香は朝靄の桜の写真を見せた。
「ほう、これはなかなか・・・彩香ちゃん、また腕を上げたな」
「ありがとうございます。この写真、これくらいのサイズのパネルにしたいんですけど、どうすればいいか分からなくて・・・」
彩香は、小田原の家に置かれていた雄大の写真の画像に切り替えた。
「これは・・・雄大の写真じゃないか!」
「はい、桜の写真集と同じ場所で撮ったお父さんの写真です」
「彩香ちゃん、上杉さんと知り合いなのか?」
「はい・・・」
彩香はこの写真を撮ることになった経緯を説明した。
「そうか・・・そんな偶然もあるんじゃな」
「ゆずのおばあさまから、父の写真と同じ大きさのパネルにして欲しいと言われまして。できたら同じフレームで仕上げたくて、先生ならご存知かなと思って・・・」
「なるほど、そういうことか。どれどれ、もう一度雄大の写真をよく見せてくれんか」
彩香は自分のノートパソコンを荒田の方に向けた。
「・・・このフレームは確かあいつんとこじゃったな」
荒田は書棚に向かい、名刺ファイルを取り出して戻ってきた。
「おお、これこれ。この写真館じゃ」
荒田は名刺を彩香に渡した。
「雄大のもそこで作ったはずじゃから、そこに連絡してみるといい。近くにあるから、帰りにでも寄ってみなさい」
「はい」
彩香はスマホに名刺を取り込んだ。
「・・・先生、今日はありがとうございました」
しばらく荒田と話をした後、彩香は席を立った。
「何かあったらまたいつでもきなさい」
荒田はにっこりと微笑んだ。
「はい。では失礼します」
彩香は荒田に一礼して教授室を後にした。
建物を出た後、彩香はベンチに座ってスマホのマップに写真館の住所を打ち込んでいた。
「・・・さ、彩香⁉︎」
マップを見ていると、突然、低い声の誰かが彩香を呼んだ。
「えっ・・・」
0
お気に入りに追加
242
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる