家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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次の日の午後、彩香たちはアルちゃんに荷物を乗せていた。
「うう・・・桜、綺麗だったけど・・・」
「朝靄、かかりませんでしたね・・・」
「彩香ちゃん・・・私にもあの写真ちょうだい!」
「帰ったらメールしますね」
「うん。ありがとう・・・はぁ・・・」
せっかく早起きしたのに今朝はカラッと晴れ渡ってしまい、期待した靄はかからず、舞菜の撮りたかった写真を撮ることが出来なかった。
「本当、撮影って一期一会よね・・・」
「そうですね」
「舞菜さーん、荷物積み終わったよ!」
「明衣ちゃん、ありがとう。
じゃあそろそろ行きましょうか」

明衣たちが荷物を積み込んでいる間も、ゆずは実花のそばから離れようとしなかった。
「おばあちゃん、また来るね」
ゆずは、目をうるうるさせながら実花に抱きついた。
「あらあら、ゆずったら」
実花も愛おしそうにゆずの頭を撫でた。
「ゆず・・・そろそろ行くよ」
と彩香が優しく声をかけた。
「う、うん・・・」
「またいらっしゃい」
「うん・・・またね」
ゆずは目に涙を浮かべながらアルちゃんに乗り込んだ。
「いろいろお世話になりました」
「ありがとうございました!」
「みなさん、気をつけてね」
実花たちに見送られながら、彩香たちは家路についた。

帰りのアルちゃんの中で、彩乃と結衣が新学期の話をしていた。
「4月になっちゃったね」
「あー、もうすぐ学校かぁ。行きたくないなぁ・・・」
「私たちも、もう3年生だね。なんか早いよねぇ」
「受験勉強、大変だよぉ」
とニヤニヤしながら助手席の明衣が割り込んできた。
「大丈夫だよ。港川だったらそんなに難しくないから」
「えっ・・・まじ?」
妹の言葉に明衣は信じられないという顔をした。
「ね、彩乃ちゃん」
「そ、そうですね。多分、普通に勉強してれば・・・」
彩乃は申し訳なさそうに答えた。
「なに?じゃあ受験大変だったのって・・・私だけ?」
予想外の答えに、明衣は力なく助手席にへたり込んだ。

一番後ろの席で明衣たちの話を聞いていたゆずが、不安そうな顔で彩香に尋ねた。
「ね、ねえ、さいちゃん・・・2年ってクラス替え、あるんだよね?」
「そうだね。今度は何組になるのかなぁ」
ゆずの変化に気づかないのか、彩香は普通に答えた。
「ひ、一人になっちゃったら、どうしよう・・・」
ゆずがバッグの三姉妹を握りながら震え出した。
「大丈夫だって、ゆず。クラス5つしかないんだし、クラス別々になってもお昼とか一緒に食べればいいじゃない」
「そ、そうなんだけど・・・」
「ゆず、一人になっちゃうの怖いの?」
彩香たちの話を聞きつけた明衣が話に加わった。
「だ、だって・・・」
「ゆずは一人なんだぁ。じゃあ彩香と私は同じクラスだからぁ・・・彩香、これからも仲良くしようね!」
明衣はわざとらしく明るい声で言った。
「な、なんでそんなこと言うの!」
すでに涙目のゆず。
「だってぇ、ゆずは別のクラスになりたいんでしょお」
笑いを堪えながらゆずを追い込む明衣。
「わ、私もさいちゃんと明衣ちゃんと一緒がいいよぉ」
ゆずの目は涙が溢れんばかりだった。
「もう、明衣、いい加減にしなさい!大丈夫よ、ゆず。先生だってちゃんとわかってるから、私たちのこと離したりしないわよ」
彩香は隣のゆずの頭を優しく撫でた。
「そ、そう、かなぁ・・・ぐすっ」
ゆずは指で涙を拭った。
「受験にクラス替え。なんか懐かしいわね・・・」
舞菜は、一人しんみりとしながら運転を続けた。
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