家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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明衣たちよりも先に学校を出ていた彩香は、足りない買い物をすませたあと、いつものようにメイド服に着替えてバイトを始めていた。
「さてっと、下ごしらえもできたし、洗濯物取り込んじゃおっと」
買ってきた食材の下ごしらえを終えた彩香は、朝干していった洗濯物を取り込みに、2階へ上がってきた。
「さ、彩香。今、いいか?」
「いいけど。どうしたの?」
「ちょっと、入ってくれ」
鷹文に言われた彩香は、不思議そうな顔をしながら、鷹文の部屋に入った。
「・・・どこか汚しちゃった?とかじゃないみたいね」
彩香が鷹文の部屋を見回しながら言った。
「そ、そんなの、自分で片付けられるよ」
「そうよね・・・で、なに?」
「・・・あのさ・・・これ」
とそれだけ言った鷹文は、飾りのついた紙袋を彩香に渡した。
「私に?」
「あ、ああ。その・・・ば、バレンタインのお返し、っていうか・・・」
「・・・ありがとう」
意外なプレゼントに彩香は少し驚いた様子だった。
「あ、開けてみろよ」
「うん・・・」
言われるままに取り出してみると、オフホワイトの柔らかそうなマフラーだった。
「色とか、大丈夫、か?」
「うん。鷹文くん、ありがとう」
と彩香が微笑んだ。
「ま、まあ、彩香のと違って手作りってわけじゃないけどな・・・」
「これ、鷹文くんが編めたらすごいよね」
彩香が少し可笑しそうに笑った。
「ありがとね。じゃあ私、洗濯物・・・」
「ちょ、ちょっと待て!」
鷹文が遮った。
「えっ?」
彩香が驚いて鷹文を見つめた。
「それは、俺からの、で・・・こ、こっちも、あるんだ」
と鷹文は包装されていない細長い箱を彩香に差し出した。
「これは?」
鷹文が箱を開ける。
「・・・ネックレス」
「か、母さんから、彩香にって」
「お母さん、から?」
彩香が不思議そうに尋ねた。
「・・・年末大掃除しただろ。あの時、その段ボールに入ってたんだ」
と鷹文は本棚の上にある段ボールを見上げた。
「そこにさ、手紙とこれが入ってて、大人になった彩香にって・・・」
「そうなんだ・・・」
「つ、つけてみろよ」
「・・・うん」
彩香は受け取ったケースからネックレスを取り出してつけ始めた。
「・・・む、難しいね」
今までネックレスなどつけたことのない彩香は、うまくつけることができなかった。
「こっちに鏡、あるぞ」
「うん」
彩香は鏡の前に移動してつけようとするがどうしてもうまくいかない。
「ネックレスなんて、つけたことないから・・・」
なおも悪戦苦闘する彩香。
「よ、よかったらつけてやろうか?」
突然の一言に、彩香は一瞬驚いたが、
「・・・そう、ね。お願い」
と鷹文にネックレスを預けたあと、彩香は後ろを向いて髪をもち上げ、鷹文に細いうなじを見せた。
「・・・お願い」
「あ、ああ」
はっとするほど美しいうなじが目の前に現れ、鷹文は、いつにない緊張を感じながら恐る恐る彩香に近づいた。
「手、回すぞ」
「う、うん・・・」
心なしか、彩香のうなじもピンク色に染まっている。
鷹文は、うるさいくらいの鼓動を必死に無視して、ゆっくりと肩越しに彩香の前に手を伸ばし、反対の手でネックレスの片端を取った。
その間も鼓動が鳴り止まない。
鷹文は、彩香の肌に触れないように注意しながら、慎重にネックレスの端を合わせ丸カンをフックに差し込んだ。
「ふう・・・で、できたぞ」
彩香から少し離れて、鷹文は大きなため息をついた。
「・・・あり、がとう」
たったこれだけのことをするのに、二人とも1時間分くらいの体力を消費してしまったような疲れ切った顔をしていた。
ずっと彩香の甘い匂いを吸い込んでいた鷹文は、横を向いて呼吸を整えていた。
彩香もそんな鷹文を気にすることもできず、なかなか収まらないドキドキを感じながらネックレスの小さなチャームに触れてみた。
「ハート、なんだね」
チャームに触れることで少しだけ落ち着くことができた。
「ああ」
「ありがとう、大切にするね」
彩香は愛おしそうにネックレスを見つめた。
「か、母さんからだから・・・まあ、頼む」
「マフラーも大切にするね。鷹文くん、ありがとう」
にっこりと微笑んだ後、彩香は鷹文の部屋を出て行った。
鷹文は、あまりの緊張に、手紙に書かれていたことをほとんど話すことができなかった。
「・・・ま、いっか」
小さなため息とともに、鷹文は静かにベッドに倒れこんだ。
「あ・・・あれのことも聞くの忘れた」
ベッドに寝転んだ鷹文は、ぬいぐるみの入った段ボール箱をみつめていた。
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