家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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「彩香ちゃん、今日の夕飯は何?」
キッチンで夕食の準備を進めていると、どこからともなく和泉がやってきた。
「きょ、今日はひな祭りメニューですよ」
先ほどの動揺がまだ残っているのか、彩香は落ち着かない様子で返事した。
「ひな祭り?あっ!お雛様出てる!」
リビングの雛人形を見つけた和泉は、嬉しそうにそちらへ向かった。
「うわぁ懐かしい。先輩がいる頃は毎年飾ってたもんね」
懐かしそうに見つめる和泉。
「鷹文くんが出したの?」
「探したのは俺ですけど、飾り付けは彩香が」
「へぇー。でもどうして?」
「買い物行って、菜の花の料理食いたいって言ったら、いつのまにか雛人形の話になって・・・」
「・・・そういえば先輩も毎年菜の花とハマグリでお吸い物作ってたね」
「はい。彩香がそれに気づいてくれて」
鷹文はキッチンで作業している彩香を見た。
「やっぱり彩香ちゃんって、鷹文くんのことならなんでもわかっちゃうのね」
「そ、それは・・・」
「今日だって菜の花だけでここまでたどり着いたんでしょ」
「・・・そう、ですね」
たしかに和泉の言う通りだった。
「うふふ。鷹文くん照れてる」
和泉は可笑しそうに鷹文の顔を覗き込んだ。
「て、照れてなんかないですよ!」
心持ちほおを染めながら目をそらす鷹文。
「あははぁ。彩香ちゃん!ちらし寿司もあるの~」
冷やかすだけ冷やかした和泉は、鷹文の反応に満足すると、彩香の方へ行ってしまった。
「・・・和泉さん」
ふてくされる鷹文だった。

「先生、夕食の準備できましたよ」
和泉が盛雄をリビングに連れてきた。
今日は雛人形のあるリビングに食事を用意していた。
「ほほう。これは・・・」
盛雄はお雛様と料理を見ながら感心した様子だった。
「今日はお雛様も飾ったのでメニューもそれに合わせてみました」
「お雛様ですか・・・懐かしいですね」
盛雄は久し振りの雛人形に目を細めた。
「それにちらし寿司にお吸い物。華やかでいいですね」
彩香の方を向いた盛雄がにっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。じゃあ私はこれで」
「彩香ちゃん、今日は一緒に食べましょうよ」
「そうですよ、彩香くん。せっかくですから」
と盛雄も誘った。
「でも・・・彩乃が待ってますから」
「それなら大丈夫よ」
「えっ?」
和泉の言葉に不思議そうな顔をする彩香。
「実は、さっき奈緒さんに電話しちゃったの。今日こっちでひな祭りするから主役の彩香ちゃん借りてもいいですかって。そしたらね彩乃ちゃんと外で食べるからごゆっくりって言われちゃった」
と和泉は嬉しそうに彩香に言った。
「主役って・・・」
「だってぇ。女の子のいないひな祭りなんて、なんか締まらないじゃない」
和泉はいつのまにか後ろに来て、彩香の肩に手を乗せた。
「い、和泉さんがいるじゃないですか」
「私?私じゃあねえ」
と彩香越しにニヤニヤしながら鷹文を見る和泉。
「な、なんで俺?」
「だってぇ。鷹文くんだって彩香ちゃんがいた方がいいでしょ」
と言いながら、和泉は彩香を鷹文の正面に向けた。
「それは・・・」
彩香を目の前にして、鷹文はまともに答えられなかった。
「ほら、彩香ちゃん。鷹文くんがそばにいてほしいって」
耳元で囁かれて、彩香は真っ赤になってしまった。
「和泉くん。二人をからかうのはそれくらいにして、食事を頂きましょう」
成り行きを見ていた盛雄は、頃合いと思ったのか声をかけてきた。
「そうですね!ほら彩香ちゃん、座って座って。それから鷹文くん、今日はこっちね!」
「えっ?」
和泉は、有無を言わさずふたりを並べて座らせた。
「ほらぁ。こうすればお雛様たちと一緒でいいじゃない。ねえ先生?」
「そうですね。生き雛をを眺めながら一杯というのも一興ですね」
和泉が盛雄の隣に座ったところで、盛雄の「いただきます」の言葉に唱和して食事が始まった。

「うー!この出汁よね。菜の花に程よく染み込んでておいしい」
和泉は、菜の花のほのかな苦味と旨味たっぷりの出汁のコントラストにうっとりとした。
「ええ。その後の一杯がまた格別です」
と盛雄はおちょこからお酒を一口飲んだ。
「まったく・・・酒飲みどもが」
そんな大人たちを見て、鷹文が呟いた。
「いいじゃない。ほら鷹文くんも、彩香ちゃんの味、美味しいわよ」
「私の味って・・・」
和泉の言葉に彩香が余計な反応をしてしまった。
「うふふ。なんかえっちね」
「い、和泉さん!」
そんな下世話な会話を無視するように、鷹文もお吸い物を口にした。
「たしかに彩香の・・・母さんの味・・・」
「鷹文くん?」
「あっ!すまん、つい・・・」
「・・・ううん、いいの。たくさん食べてね」
鷹文の言葉に、彩香は優しい笑顔を浮かべた。
そんな二人を眺めながら、盛雄と和泉は静かに盃を傾けた。
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