家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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「さ、斉藤先輩!」
いい雰囲気で会話をしながら歩いていた彩香と鷹文は、突然のその声に二人揃って後ろを振り返った。
「・・・小野田?」
顔は確かに麻希だったが何かに違和感を感じた鷹文は、確かめるように麻希の名前を口にした。
「は、はい!」
鷹文に名前を呼ばれた麻希は(本当は苗字じゃなくて名前で呼んでほしかった)嬉しそうに返事をした。
「おまえ・・・受かったのか?」
麻希が高校の制服を着ているのを見て(違和感の正体もそれだった)鷹文は麻希の合格に気づいた。
「はい!4月からまた先輩の後輩になります!」
麻希は自分が制服を着ていることも忘れて、鷹文が合格を知ってくれていたんだと喜んだ。
「おめでとう。まあおまえなら受かると思ってたけどな」
「そ、そんな・・・」
麻希は、嬉しそうに頬を赤らめた。
「ところで、もう制服できたのか?」
「えっ・・・あっ!こ、これは・・・」
姉の制服を着ていることをやっと思い出した麻希は、後先考えず鷹文を呼んでしまったことに気づき、今度は耳まで真っ赤にして俯いてしまった。
「・・・お姉ちゃんの、制服で・・・」
あまりの恥ずかしさに今にも消え入りそうな声になってしまった。
「・・・そっか」
どうやら触れてはいけないことだったと気づいた鷹文は、違う話題はないかと必死に考えた。
「ねえ鷹文くん。受かったって?」
そんな時、彩香がさりげなく話を繋げてくれた。
「あ、ああ。小野田は今中3で、4月からうちの高校に来ることになったんだ」
「そうなんだ。よろしくね、小野田さん。私、遠野彩香。鷹文くんと同じ、えっと、今は1年生よ」
彩香は麻希を落ち着かせようと、優しい声で話しかけた。
「・・・おのだ、まき、です・・・」
麻希は、やっとのことで自分の名前だけ言った。
「麻希さんっていうんだ。おうちはどっちの方?」
「・・・は、はい・・・あっちの、ほう・・・っ!」
顔を上げて方向を示した麻希だったが、不意に彩香と目が合ってしまい、また恥ずかしそうに俯いてしまった。
「そうなんだ。私たちもそっちだから、一緒に行きましょうか」
「・・・はい」
さりげなく麻希に近づいた彩香は、優しく麻希の背中に手を添えて、一緒に歩き始めた。
しばらく歩いていると、麻希は彩香の手の暖かさに、少し心を落ち着かせることができてきた。
「・・・と、遠野さんは、先輩とお買い物、ですか?」
「うん。私、鷹文くんの家で家政婦のバイトしててね、荷物が多くなっちゃう時だけ鷹文くんに付き合ってもらってるの」
「そう、なんですか・・・」
結衣から聞いて知ってはいたが、本人の口から直接聞いて、麻希は改めてショックを受けた。
「麻希さんは鷹文くんと仲良かったの?」
「は、はい。文芸部の先輩、でした」
「そうなんだ。鷹文くんって怖くなかった?」
と彩香はさりげなく鷹文を見ながら麻希に尋ねた。鷹文が苦虫を噛み潰したような顔になったのを見て、彩香はクスッと笑った。
「そ、そんなことないですよ。いろいろ教えてくれて、すごく優しくて・・・文化祭の脚本とかすごく素敵で・・・」
麻希の言葉に、鷹文は少し照れたようだ。
「そうなの。じゃあまたいろいろ教えてもらえるね」
「は、はい。でも・・・」
「あ、そっか。鷹文くん、部活とかやってないわね」
と彩香がまた鷹文を見る。
「ああ」
「そ、そうですよ!先輩、どうして文芸部に入らなかったんですか⁉︎」
といきなり勢いを取り戻す麻希。
「いや、別に・・・」
麻希の言葉に、鷹文は今年の春先の文学賞落選を思い出してしまい、くやしそうに目をそらした。
「私、また先輩と一緒に部活したいです!」
「・・・」
言葉が見つからない鷹文。
「ま、麻希さん。それは入学してからでも・・・」
鷹文の変化に気づいた彩香は、麻希をなだめに入った。
「・・・そう、ですね・・・すいません」
鷹文の変化と彩香の態度に何かを感じ取った麻希は、素直に彩香の言葉を受け入れた。
「麻希さん、おうちはもう近いの?」
「はい。次の角を右に入ったところです」
今度は麻希もしっかりと答えることができた。
その角についたところで、彩香はにっこりと微笑んだ。
「じゃあ4月からよろしくね」
「はい・・・」
対する麻希は、素直とは言えない笑顔で返事した。
「・・・ところで遠野さんは、斉藤先輩とどういう関係なんですか?」
麻希はどうしても聞いておきたかったことを、勇気を出して尋ねてみた。
「関係?うーん・・・同級生?」
と言いながら、彩香は鷹文を見た。
「そうじゃなくって!・・・いっつも一緒にいるじゃないですか!」
「えっ・・・そうかな?」
「そうですよ!スーパーでだってよく見かけるし、初詣のときだって・・・」
「あの時は他の友達も一緒だったのよ」
「で、でも!その、なんか・・・いい、雰囲気っていうか・・・」
麻希は認めたくなさそうにボソボソと言った。
「そ、そんなこと、ないよ。ふ、普通だよ」
麻希の言葉に、彩香は明衣に見せられた写真を思い出して動揺した。
「そうなんですか⁉︎じゃ、じゃあ私が先輩と・・・」
勢いで余計なことまで言いそうになった麻希は、またもや顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「小野田さん、大丈夫?」
心配そうに見つめる彩香。
「と、とにかく!四月から私、頑張りますから!その・・・し、失礼します!」
とわけのわからないことを言い切ると、麻希は逃げるように2人の前から走り去った。
「・・・なんだったんだ、あれ」
「・・・さあ、ね」
二人は麻希の走り去った方向を呆然とみつめていた。
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