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しおりを挟む「ねえママ、お姉ちゃんっていつ頃帰ってくるの?」
キッチンにやってきた麻希は、母親に姉の帰郷を尋ねた。
麻希の姉、麻美は現在大学1年生で、地方の大学に通っているため一人暮らしをしている。
「あら、言ってなかったかしら。今どこかに旅行に行ってるとかで、もう少し後になるみたいよ」
「そうなんだ・・・じゃあ大丈夫かな?」
後の方は小さな声で呟いた麻希は、静かに姉の部屋へと向かった。
「あった、やっぱり高校の制服いいなぁ」
麻希は姉のクローゼットから、去年まで使われていた港川高校の制服を取り出した。
「意外と綺麗だし、私の予備にもらっちゃおうかな?」
港川高校への入学が決まった麻希は、早速新しい制服を作りに行ったのだが、出来上がるまであと数日待たなければいけなくて、自分の制服ができるのを心待ちにしていた。
「今日は帰って来なそうだし、ちゃんと戻しとけばバレないよね」
麻希はそう心に決めると、姉の制服を持って自分の部屋に戻った。
「うふふ。やっぱりいいなぁ」
麻希は、姿見の前でくるくる回りながら制服姿の自分をずっと見ていた。
当然スマホで自撮りも済ませてある。
「ちょっと外、出てみようかな」
まだ中学生の麻希は、少しドキドキしながら部屋を出て、母親に気づかれないように静かに階段を降りて靴を履き、玄関を出た。
「・・・外に、出ちゃった」
普通にしているつもりなのにどうしてもにやけてくるのを必死に抑えながら、麻希は付近に誰もいないことを確かめてから、通りに出た。
「だ、誰も見てないよね」
ドキドキと高揚感。それが麻希の心の大部分を占めていた。
「もう少し、歩いちゃおっかな」
どうしてもドキドキしてにやけてしまうが、なんとか平静を装って、麻希はあてもなく歩き始めた。
「私、高校の制服を着て外、歩いてる」
頭の中は制服姿の自分でいっぱいになっていて、他のことはまるで考えられない。
わけのわからない高揚感と一緒に道を歩いていると、その気持ちを一気に冷めさせる光景に出会ってしまった。
いや、一瞬だけはもっと高揚したのだが・・・
「あ、斉藤先輩!・・・と、あの人・・・」
あの人こと彩香の存在が鷹文の隣にあることに気づいた瞬間、麻希の高揚感は一気にどこかに消えてしまった。
「買い物、帰り?」
鷹文と彩香は、大きなエコバッグをそれぞれ両手に下げて並んで歩いていた。
それもただ歩いているだけではなく、二人とも楽しそうな笑顔で。
「・・・先輩。なんであんな笑顔なの?」
先ほどまでの高揚感は完全に消え去り、失意のどん底といった顔つきになってしまった麻希は、高校の制服を着ているということも忘れ、二人の後を付かず離れずで追い始めた。
「先輩って、あんなに笑うんだ」
麻希にとって鷹文はいつもクールな存在だった。
その鷹文が、中学の頃ははほとんど見せることのなかった笑顔を彩香に向けていることが、なぜかとても悔しかった。
しばらく後をつけていてだんだんイライラが募ってきた麻希は、数分前の自分でさえも思っていなかった行動に出ていた。
「さ、斉藤先輩!」
キッチンにやってきた麻希は、母親に姉の帰郷を尋ねた。
麻希の姉、麻美は現在大学1年生で、地方の大学に通っているため一人暮らしをしている。
「あら、言ってなかったかしら。今どこかに旅行に行ってるとかで、もう少し後になるみたいよ」
「そうなんだ・・・じゃあ大丈夫かな?」
後の方は小さな声で呟いた麻希は、静かに姉の部屋へと向かった。
「あった、やっぱり高校の制服いいなぁ」
麻希は姉のクローゼットから、去年まで使われていた港川高校の制服を取り出した。
「意外と綺麗だし、私の予備にもらっちゃおうかな?」
港川高校への入学が決まった麻希は、早速新しい制服を作りに行ったのだが、出来上がるまであと数日待たなければいけなくて、自分の制服ができるのを心待ちにしていた。
「今日は帰って来なそうだし、ちゃんと戻しとけばバレないよね」
麻希はそう心に決めると、姉の制服を持って自分の部屋に戻った。
「うふふ。やっぱりいいなぁ」
麻希は、姿見の前でくるくる回りながら制服姿の自分をずっと見ていた。
当然スマホで自撮りも済ませてある。
「ちょっと外、出てみようかな」
まだ中学生の麻希は、少しドキドキしながら部屋を出て、母親に気づかれないように静かに階段を降りて靴を履き、玄関を出た。
「・・・外に、出ちゃった」
普通にしているつもりなのにどうしてもにやけてくるのを必死に抑えながら、麻希は付近に誰もいないことを確かめてから、通りに出た。
「だ、誰も見てないよね」
ドキドキと高揚感。それが麻希の心の大部分を占めていた。
「もう少し、歩いちゃおっかな」
どうしてもドキドキしてにやけてしまうが、なんとか平静を装って、麻希はあてもなく歩き始めた。
「私、高校の制服を着て外、歩いてる」
頭の中は制服姿の自分でいっぱいになっていて、他のことはまるで考えられない。
わけのわからない高揚感と一緒に道を歩いていると、その気持ちを一気に冷めさせる光景に出会ってしまった。
いや、一瞬だけはもっと高揚したのだが・・・
「あ、斉藤先輩!・・・と、あの人・・・」
あの人こと彩香の存在が鷹文の隣にあることに気づいた瞬間、麻希の高揚感は一気にどこかに消えてしまった。
「買い物、帰り?」
鷹文と彩香は、大きなエコバッグをそれぞれ両手に下げて並んで歩いていた。
それもただ歩いているだけではなく、二人とも楽しそうな笑顔で。
「・・・先輩。なんであんな笑顔なの?」
先ほどまでの高揚感は完全に消え去り、失意のどん底といった顔つきになってしまった麻希は、高校の制服を着ているということも忘れ、二人の後を付かず離れずで追い始めた。
「先輩って、あんなに笑うんだ」
麻希にとって鷹文はいつもクールな存在だった。
その鷹文が、中学の頃ははほとんど見せることのなかった笑顔を彩香に向けていることが、なぜかとても悔しかった。
しばらく後をつけていてだんだんイライラが募ってきた麻希は、数分前の自分でさえも思っていなかった行動に出ていた。
「さ、斉藤先輩!」
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