301 / 428
1
300
しおりを挟む
時は流れ、今日は2月27日
麻希は緊張の面持ちで、港川高校の門を入って行った。
今日は合格発表の日だ。
持ってきた上履きに履き替え自分の受験番号の教室に向かうと、すでに多くの生徒が受験票を見せて通知を受け取っていた。
合否は本人にだけわかるようになっている。
麻希も少し青ざめた顔でその列に並び、自分の順番を待った。
「次の方、どうぞ」
「は、はい」
震える声で返事しながら係りの人に受験票を渡すと、しばらくして麻希の通知を持って戻ってきた。
「734番、間違いありませんね?」
「は、はい」
麻希は通知を受けとって廊下に出た。そして他の生徒たちと同じように深く深呼吸してから、ついに緊張の一瞬、通知を開いた。
目をつぶって封筒から紙を取り出したのだが、どうしても目を開くことができない。
「お、落ちてたら、どうしよう・・・」
そんなよくない想像を頭の中に巡らせると、さらに目を開けることができなくなってしまった。
「結衣ちゃん、どうしていないの⁉︎」
麻希は、実は今までもずっと結衣を頼りにいろいろと乗り越えてきた。
そして今まさに、手に持っている紙を結衣に見てもらいたかったのだ。
しかし、そんな先輩らしからぬ思いをいもしない後輩にぶつけたところで、結果が変わるわけでもない。
「い、いないんだから・・・自分で、見るしか、ない・・・よね。お、落ちてても、私立には行けるわけだし・・・」
なんとか自分がつらくならない言い訳を見つけつつ、やっと意を決した麻希は、それでも恐る恐る、手に持っている通知を見るために、目を開けた。でもどうしても怖くて、通知は胸に当てて隠してしまっていた。
ごくんと息を飲む麻希。
「み、見なきゃ・・・」
麻希は震える手を恐る恐る、胸から離していった。
「・・・格・・・合・・・。不・・・は・・・ない」
どうしても怖くて右端からゆっくり見て行った麻希は、合の字の前に「不」がついていないことにやっと気づき。それとともに、膝から力が抜けそうになる自分を必死にこらえた。
「う、うかったん、だ・・・」
周りに人がいるので、喜びを表立って表現はできはしないが、麻希は喜びというよりも、むしろ安心という表現がぴったりの顔をしていた。
「4月から・・・先輩と、一緒・・・」
麻希は、呆然となりながらも、残りの書類を受け取りに、廊下の指示に従って移動を始めた。
正門を出た麻希は、思い出したようにスマホを手にして電話した。
「ママ・・・受かった、よ」
ぼうっとした麻希の耳には、鼻をすすりながら喜んでいる母の声が、なぜかとても遠くに聞こえた。
麻希は緊張の面持ちで、港川高校の門を入って行った。
今日は合格発表の日だ。
持ってきた上履きに履き替え自分の受験番号の教室に向かうと、すでに多くの生徒が受験票を見せて通知を受け取っていた。
合否は本人にだけわかるようになっている。
麻希も少し青ざめた顔でその列に並び、自分の順番を待った。
「次の方、どうぞ」
「は、はい」
震える声で返事しながら係りの人に受験票を渡すと、しばらくして麻希の通知を持って戻ってきた。
「734番、間違いありませんね?」
「は、はい」
麻希は通知を受けとって廊下に出た。そして他の生徒たちと同じように深く深呼吸してから、ついに緊張の一瞬、通知を開いた。
目をつぶって封筒から紙を取り出したのだが、どうしても目を開くことができない。
「お、落ちてたら、どうしよう・・・」
そんなよくない想像を頭の中に巡らせると、さらに目を開けることができなくなってしまった。
「結衣ちゃん、どうしていないの⁉︎」
麻希は、実は今までもずっと結衣を頼りにいろいろと乗り越えてきた。
そして今まさに、手に持っている紙を結衣に見てもらいたかったのだ。
しかし、そんな先輩らしからぬ思いをいもしない後輩にぶつけたところで、結果が変わるわけでもない。
「い、いないんだから・・・自分で、見るしか、ない・・・よね。お、落ちてても、私立には行けるわけだし・・・」
なんとか自分がつらくならない言い訳を見つけつつ、やっと意を決した麻希は、それでも恐る恐る、手に持っている通知を見るために、目を開けた。でもどうしても怖くて、通知は胸に当てて隠してしまっていた。
ごくんと息を飲む麻希。
「み、見なきゃ・・・」
麻希は震える手を恐る恐る、胸から離していった。
「・・・格・・・合・・・。不・・・は・・・ない」
どうしても怖くて右端からゆっくり見て行った麻希は、合の字の前に「不」がついていないことにやっと気づき。それとともに、膝から力が抜けそうになる自分を必死にこらえた。
「う、うかったん、だ・・・」
周りに人がいるので、喜びを表立って表現はできはしないが、麻希は喜びというよりも、むしろ安心という表現がぴったりの顔をしていた。
「4月から・・・先輩と、一緒・・・」
麻希は、呆然となりながらも、残りの書類を受け取りに、廊下の指示に従って移動を始めた。
正門を出た麻希は、思い出したようにスマホを手にして電話した。
「ママ・・・受かった、よ」
ぼうっとした麻希の耳には、鼻をすすりながら喜んでいる母の声が、なぜかとても遠くに聞こえた。
0
お気に入りに追加
252
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる