家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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14日夕方。
麻希は試験会場に入る時よりも緊張しながら、鷹文の家の玄関の前に立っていた。
「せ、先輩は、物静かだから、今日は、お部屋にいる・・・わよね」
さっきまでそんなことは丸で考えていなかった麻希は、玄関の前に立ってから、改めて、鷹文がいなかったらどうしようと思い青ざめていた。
「ぜ、絶対にいる・・・はず・・・」
いつまでも迷っていても仕方ないと決心して、玄関前に立ってから5分後、麻希は意を決してベルを押した。
それからしばらく、足音が聞こえ、引き戸が開いた。
「さ、斉藤先輩!ご、ご無沙汰してます!」
麻希は勢いよくお辞儀した。
「小野田・・・?お前、今日って公立の入試じゃ?」
「ひゃ、ひゃい!港川高校で受けてきました!」
物静かなのか出不精なのかはわからないが、とにかく鷹文がいたことに安心し、久しぶりに会えたという事実に、麻希は舞い上がっていた。
「そっか。おつかれ。お前なら大丈夫だよな」
「そ、それは・・・」
麻希は今日一日、今、この瞬間のことしか考えていなかったので、入試のことはまるで覚えていなかった。
「で、どうしたんだ?入試で疲れてるだろ?早く帰って落ち着けば・・・」
「あ、あの・・・」
後の言葉が続かない。
「どうした?腹でも痛いのか?」
「い、いえ!そうじゃなくて・・・」
ラノベ主人公並みにとぼけたところのある鷹文は、麻希が、なぜ今、ここにいるのかまるで気づいていないようだった。
「・・・こ、これ・・・」
ついに言葉が出なくなってしまった麻希は、行動で示すことにした。
「・・・せ、先輩・・・これ!」
麻希は必死の思いで両手でチョコを持って鷹文の前に差し出した。
「あ・・・バレンタイン」
さすがの鷹文も、ここまでされてようやく気がついたようだ。
「は、はい!受け取って、もらえ、ます・・・か?」
もう耳まで真っ赤になっている麻希は、顔を上げることができなかった。
「あ、ああ、その・・・わざわざ、ありがとな」
「い、いえ・・・し、失礼します!」
「お、おい!」
麻希は鷹文の声も耳に入らない様子で、急に駅の方に向かって駆け出して行ってしまった。
「・・・ありがとう」
すでに遠くへ行ってしまった麻希に、鷹文は聞こえないお礼を伝えた。

「うわー、小野田さんかわいそぉ」
どこから見ていたのか、明衣が突然鷹文の前に現れた。
「み、みてたのか、明衣!」
「だって、声、聞こえちゃったんだもん、気になるじゃん」
「だ、だからってなぁ・・・」
予想外の明衣の出現に、なぜか鷹文がうろたえた。
「あれぇ。見られちゃまずかったのかなぁ」
と覗き込むような仕草をする明衣。
「そ、そんなわけ、ないだろ!」
「そぉ?その割には、鷹文、動揺してるよねぇ」
執拗に突っ込む。
「ど、動揺なんかするか!」
「あはは。まあそういうことにしといてあげるよ。それより、彩香からは?もうもらったの?」
「さ、彩香は、まだ・・・」
「そっかぁ、『まだ』なんだぁ」
「・・・うるせえ」
「あはは、楽しみだねぇ」
まじまじと鷹文の顔を見つめながら、明衣は自分の家に戻って行った。
「あ、あのやろう・・・」
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