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午後から写真部の部活がある彩香たちは、今日から始まっている学食に来ていた。
始業式ということもあって、利用者は比較的少なく、いつもよりは落ち着いた雰囲気だった。
「彩香、今日、私も行っていい?」
部活をやっていない明衣は、この後予定がなかった。
「うん。多分大丈夫よ」
「よし!・・・で、何やるの?」
「お正月の写真、コンテストに出品するからみんなで見せ合おうって」
「そっかぁ・・・なら私も出そっかな?」
「明衣、お正月、何か撮ったの?」
「ほら見てこれ」
「・・・えっ」
彩香はスマホの画面を見て、言葉を失った。
「ねえさいちゃん、どんな写真なの?」
「見たい見たい?」
と明衣は妙に嬉しそうにゆずに尋ねた。
「えっ・・・見たい、けど」
ゆずも何か感じとったようだ。
「ふっふっふ。ほら!」
「あっ・・・」
ゆずが真っ赤になった。
「ね、これ、お正月っぽくてよくない?」
明衣のスマホには、ゆずと大和がおみくじを見せ合っている写真が映し出されていた。
よく見ると、ゆずのほおが少し赤くなっている。
「だ、だめだよ!こんなの・・・」
ゆずが恥ずかしそうに明衣のスマホを奪い取った。
「えー、いいじゃん。お正月ならでわってかんじでさ」
「構図はいいね」
彩香は冷静に写真を評価している。
「さ、さいちゃん・・・」
「あ、ごめん、つい・・・明衣、ゆずかわいそうだよ」
「えー、いいと思うんだけどなぁ・・・あ、じゃあこっちは?」
ゆずからスマホを奪い返した明衣は、違う写真を表示させた。
「・・・だめ」
彩香が静かに却下した。
画面には、髪をアップにした着物姿の彩香と鷹文が、楽しそうに話している後ろ姿が表示されていた。
「えー、こっちもいいと思うんだけどなぁ」
「・・・わ、悪くはないわよ。でも・・・だめ」
彩香は消え入るような声で答えた。
写真に関しては冷静な評価を下す彩香も、自分の素の姿が写っているのは恥ずかしいらしかった。
「うー、じゃあこれは?」
次の写真は、しの、彩香、鷹文が賽銭箱の前で熱心にお祈りしているところだった。
「こ、これなら、ギリギリ・・・」
前の2枚と比べれば、ギリギリ許せる写真だった。
「ね、結構いい角度で撮れてるでしょ!私、写真の才能あるのかなぁ」
彩香から連続して高評価をもらった明衣は、嬉しそうに次々と写真を表示させて行った。

「そろそろ行こっか」
集合時間が近くなった頃、時計を見た彩香がトレーを持って席を立った。
「め、明衣ちゃん」
「ゆず、どうしたの?」
彩香が返却口に行ったのを見て、なぜか立ち上がらずにいたゆずが明衣に声をかけた。
「さ、さっきの写真・・・」
小さな声でそこまで言って、ゆずは真っ赤になって俯いてしまった。
「・・・あとでメールするね」
「あ、ありが、とう・・・」
ゆずは恥ずかしそうに微笑んだ。
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