家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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その日の放課後。
鷹文と彩香の帰宅を待って、盛雄たちは斉藤家の墓のある近くのお寺へ来た。
和泉も毎年一緒に来ている。
「今年もあるな」
墓石の花を見た鷹文が呟いた。
「ご親戚?」と彩香。
「いや、誰かは知らないんだけど、毎年命日には花が飾られてるんだ」
「そう、なんだ・・・」
(そういえばお母さん、毎年この時期、1日だけ朝早く出勤してたっけ)
彩香は、今朝も早く出た奈緒を思い出していた。
「お墓、きれいだね」
「ああ、親父は毎月来てるみたいだからな」
「そうなの」
「では、お参りしましょうか」
簡単な掃除を終えた後、盛雄は墓石の前にしゃがみ込んで、お線香を供え、両手を合わせた・・・

(由美さん。今年もこの季節が来ましたね。
もう9年。時の経つのは早いものです。
今日は彩香くんも連れてきました。とても素敵なお嬢さんになりましたよ。
小さかった頃の面影も残っていますが・・・私たちのことは覚えていないようで、少し寂しいですね。
でも、こうして昔と同じように私たち家族と一緒ににいてくれるようになって、私も嬉しいです。
このまま鷹文と・・・なんて少し気が早いですかね。
二人とも、悲しいことがあった過去は思い出さないようにしてしまっているようです。
いつか思い出した時、二人とも笑顔でいてほしいなと願っています。
小さい頃はあんなに仲の良かった二人ですから。
今日は和泉くんもいますので、私はこれくらいで。また来月きますね)

話を終えた盛雄が立ち上がった。
「お待たせしました。次、どうぞ」
盛雄は優しく微笑んだ。
「和泉さん、先に」
「鷹文くん、ありがと」
鷹文に促されて、和泉が盛雄と同じように暮石の前で両手を合わせた・・・

(由美先輩。私、今年も先生の担当してますよ。
上司も人事もわかってくれてるみたいで、まだしばらくは先生の担当でいられそうです。
最初の頃は異動の話もあったんですけど、気合いでねじ伏せました)
和泉は静かに微笑んだ。
(そのせいかしら。私、いつのまにか副編になってました。
まあ、編集長以外みんな年下になったし、年功序列ってとこですかね。
それに今年から声優の子のプロデュースやら同期担当の漫画家さんのお守りやらいろいろやらされてます。いっそのこと社内ベンチャーでも始めようかしら。
でもね、先輩、それもこれもみんな彩香ちゃんのおかげなんですよ。
しのちゃんは彩香ちゃんのこと好きすぎて漫画のキャラにしちゃうし、玲ちゃんも彩香ちゃんのこと気になってうちに来たみたいなんです)
和泉はちらっと彩香の方に瞳を動かした。
(彩香ちゃんのおかげで二人と知り合えて、二人とも仕事で関わるようになって・・・なんか不思議ですね。あ、彩香ちゃんといえば、先輩の味また食べられるとは思っていませんでした。鷹文くんも驚いてたみたいです。鷹文くんがあんなに食べてるの見たのは久しぶりで、私、すごく嬉しかったです。この前奈緒さんに聞いたんですけど、奈緒さんのお母さんの味なんですってね。
彩香ちゃんの料理初めて食べた時、先輩のこと思い出して、懐かしくってちょっと寂しくなりました。もっと先輩と一緒にいたかったな・・・
そんなわけで彩香ちゃんは私のお嫁さん候補です!なんて言ったら鷹文くんに怒られちゃうかしら。
昔のことは二人とも忘れちゃってるみたいですけど、みんな仲良くしてますので安心してください。でも、早く思い出してくれるといいなって思ってます。
それから・・・先輩に託された盛雄さんのこと、これからもずっと守っていきます。見守っててくださいね)

和泉が、閉じていた目をゆっくりと開け、立ち上がった。
「鷹文くん、お待たせ。ありがと」
和泉は鷹文に微笑んだ。
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