家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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今日は買い物だけだったので、彩香はいつもより早く帰宅していた。
「ただいま」
「お母さん、お帰り」
「あら、今日は早いのね」
「うん。バイトお休みだったから」
「あら、そうだったの」
「ママ、お帰り!お夕食出来てるよ。今日はみんなで食べられるね」
今日は彩香も奈緒も早く帰ってきたので彩乃は嬉しそうだった。
「最近、揃って食べること少ないもんね」
「だから、早くしようよぉ」
彩乃が彩香と奈緒の手を引いた。
「彩乃ったら甘えん坊ねぇ」
「うう。彩乃はもう大人だもん!」
「ねえ彩乃。大人の女性は自分のこと『彩乃』なんて呼ばないわよ」
「も、もう!早く来てよね!」
彩香にからかわれた彩乃は、一人でキッチンに行ってしまった。
「ねえ、お母さん。ちょっと聞いてもいい?」
「ええ。なにかしら?」
彩香の問いかけに、二人は客間に入った。
「あのね・・・鷹文くんって、お母さんの料理以外あんまり食べないんだって。お隣の結衣ちゃんが教えてくれたの。あの子が作ったのも残しちゃうんだって。でもね、私の作った料理はいつも残さず食べてくれるの・・・どうしてだと思う?」
彩香の話を聴き終えた奈緒は、ゆっくり話し始めた。
「それはね、由美もおばあちゃんから料理を習ったからよ」
「えっ、そうなの⁉︎」
「大学生の頃、由美はここに住んでたの。それでね、よくおばあちゃんと一緒に料理作ってたわ。娘の私は全然そんなことしなかったのにね」
奈緒は懐かしそうに微笑んだ。
「ここに来た頃は由美も私と同じで料理なんてほとんどできなかったのよ。なのに、いつのまにか母さんと変わらないくらい上手になっちゃったの。4年の頃には、もうどっちが作ったものかわからないくらいの味になってたわ。つまり由美も彩香も母さんの弟子ってわけ。似てて当然よ」
由美の話をする奈緒は少し寂しそうだった。
「だから・・・。鷹文くんの家のキッチンってうちとすっごく似てるの」
「それもね、おばあちゃん直伝だからよ。置き方まで決まってたでしょ」
「うん」
「私なんてよく怒られたわ。『奈緒、場所変えないでって何回も言ってるでしょ!』って母さんにも、由美にも」
その時の光景を思い出したのか、奈緒が微笑んだ。
「彩香もおばちゃんに習ってるんだから、鷹文くんが残さなくてもなんの不思議もないわ・・・。でも、ちょっと羨ましいわね」
「どうして?」
「だって、娘の私が一番母さんの味、再現できないんだもの。なんだか悔しいじゃない」
「そういえば・・・」
彩香が苦笑いした。
「今頃になって、ちゃんと習っておけばよかったって思うわ」
奈緒は仏壇の母親の写真の方を向いた。
「私、教えようか?」
「いいわよ今さら。しかも娘から習うなんて、なんか恥ずかしいじゃない。それに私が出来なくても、彩香がいつでも母さんの味作ってくれるし」
奈緒は、愛おしそうに彩香を見つめた。
「お母さん・・・」
「ほんと、ありがとね。彩香」
奈緒が彩香の頭をやさしく撫でた。
「彩乃だって上手くなってきたでしょ?」
「そうね・・・彩乃にも負けるなんて思わなかったわ」
奈緒が可笑しそうに笑った。
「お母さん」
「まあ、私は一家の大黒柱だからいいのよ。彩乃に怒られちゃうわ。そろそろ行きましょ」
二人は彩乃のいる食卓へ向かった。
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