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しおりを挟む「どうした?彩香くん。顔が赤いが。熱でもあるのか?」
その後すぐ戻ってきたまとめは、赤い顔の彩香を見て心配そうな尋ねた。
「い、いえ。なんでもないです!大丈夫です・・・」
彩香が俯きながら返事した。
「そうか、ならいいんだが・・・」
まとめは不思議そうに彩香を見た。
「客もだいぶ入っているようだな・・・んん⁉︎」
入り口から室内を見たまとめは、彩香の写真を見ている老人に気づき、驚きの声をあげた。
「も、もしやあの人は・・・」
まとめは老人の方へ歩いていった。
「失礼ですが、写真家の荒田先生ですか?」
荒田の目に入る位置に立ったまとめは、臆することもなく声をかけた。
「ん?そうじゃよ。お嬢さんわしなんかのことよく知っとるな」
女子高生の突然の質問に、荒田は笑顔で答えた。
「とんでもないです!先生にお会いできて光栄です!私、藁科まとめと申します」
まとめは無駄のない動きでお辞儀した。
「そうか、若いのにこんなおじいちゃんに会えてうれしいか。それはどうもありがとう」
荒田はまとめと握手した。
「君は彩香ちゃんの先輩かな?」
「はい。私は2年生で、写真部の部長をしています」
「ほう。2年で部長か。大したもんじゃ」
「いえ、それほどでも。先生は彩香くんをご存知なのですか?」
「ああ、わしは彩香ちゃんの父親の師匠でね」
「先輩、荒田先生は、私の父、遠野雄大の師匠なんです」
まとめたちの話を聞いていた彩香が補足した。
「な、なんと!彩香くんのお父上が、あの遠野雄大なのか!」
「えっ・・・先輩、父をご存知なんですか?」
「知っているも何も、遠野雄大と言えば、風景写真の第一人者ではないか!」
「そ、そうなんですか?」
「・・・お前、本当に遠野雄大氏の娘なんだよな?」
まとめは彩香をまじまじと見つめた。
「は、はい・・・」
まとめの凝視に彩香はたじろいだ。
「ははは。身内なんて案外そんなもんじゃよ」
「そうなのですか⁉︎」
「ああ、わしの兄貴だってな、死ぬまでわしのことただのエロ本のカメラマンと思っとったよ」
と荒田は笑った。
「そ、そうなのですか?」
「彩香ちゃんも雄大は写真ばっかりで家族も顧みない父親とか思ってるだろ?」
「多少は・・・」
自分も写真を撮る彩香にして、父親の評価はこんなものだった。
「・・・そういうもの、なのですね」
まとめは、知る由もなかった現実を突きつけられ、呆然とした。
「荒田くん。若い子にあんまりひどいこと教えちゃ、かわいそうよ」
呆れ顔で知子がやってきた。
「と、知子さん!」
「あら、私のことも知ってるの?随分と物知りな女子高生ね」
知子がニコニコとまとめを見た。
「も、もちろんです!知子さんと言えば、荒田先生の初期の専属モデルで、奥様・・・」
「なんでも知ってるのね。すごいわ。荒田くんね、初めての時、部屋でいきなり私の服を剥ぎ取ったのよ」
「な、な・・・」まとめが絶句した。
「私もまだ乙女だったからね『ああ、私、この人に抱かれるんだ』って思って諦めたの。そしたらね、荒田くん『そのまま動くな!』って叫んでパチパチ、って撮りだしたのよ」
と知子が荒田を真似て写真を撮るポーズになった。
「もう私びっくりで、頭の中真っ白になったわ。で、言われるままにポーズ取って写真撮られて、しばらくしたらボソッと『また頼む』ですって。私、その言葉にへたり込んで泣き出しちゃった」
「あ、あの時はな、知ちゃん。わしだって女性の裸なんて初めてだったし、かなり緊張しとったんじゃ」人前で初めて明かされた過去に、さすがの荒田も気が動転していた。
「ですってよ、まとめさん。男の人って、ほんと自分勝手よね」
知子はなんでもないことのように笑い飛ばした。
「・・・め、面目無い」
荒田は謝ることしかできなかった。
「生きていると色々あるものだな」
「そう、ですね」
そそくさと二人の元を離れたまとめと彩香は、あっけにとられた顔で頷きあった。
その後すぐ戻ってきたまとめは、赤い顔の彩香を見て心配そうな尋ねた。
「い、いえ。なんでもないです!大丈夫です・・・」
彩香が俯きながら返事した。
「そうか、ならいいんだが・・・」
まとめは不思議そうに彩香を見た。
「客もだいぶ入っているようだな・・・んん⁉︎」
入り口から室内を見たまとめは、彩香の写真を見ている老人に気づき、驚きの声をあげた。
「も、もしやあの人は・・・」
まとめは老人の方へ歩いていった。
「失礼ですが、写真家の荒田先生ですか?」
荒田の目に入る位置に立ったまとめは、臆することもなく声をかけた。
「ん?そうじゃよ。お嬢さんわしなんかのことよく知っとるな」
女子高生の突然の質問に、荒田は笑顔で答えた。
「とんでもないです!先生にお会いできて光栄です!私、藁科まとめと申します」
まとめは無駄のない動きでお辞儀した。
「そうか、若いのにこんなおじいちゃんに会えてうれしいか。それはどうもありがとう」
荒田はまとめと握手した。
「君は彩香ちゃんの先輩かな?」
「はい。私は2年生で、写真部の部長をしています」
「ほう。2年で部長か。大したもんじゃ」
「いえ、それほどでも。先生は彩香くんをご存知なのですか?」
「ああ、わしは彩香ちゃんの父親の師匠でね」
「先輩、荒田先生は、私の父、遠野雄大の師匠なんです」
まとめたちの話を聞いていた彩香が補足した。
「な、なんと!彩香くんのお父上が、あの遠野雄大なのか!」
「えっ・・・先輩、父をご存知なんですか?」
「知っているも何も、遠野雄大と言えば、風景写真の第一人者ではないか!」
「そ、そうなんですか?」
「・・・お前、本当に遠野雄大氏の娘なんだよな?」
まとめは彩香をまじまじと見つめた。
「は、はい・・・」
まとめの凝視に彩香はたじろいだ。
「ははは。身内なんて案外そんなもんじゃよ」
「そうなのですか⁉︎」
「ああ、わしの兄貴だってな、死ぬまでわしのことただのエロ本のカメラマンと思っとったよ」
と荒田は笑った。
「そ、そうなのですか?」
「彩香ちゃんも雄大は写真ばっかりで家族も顧みない父親とか思ってるだろ?」
「多少は・・・」
自分も写真を撮る彩香にして、父親の評価はこんなものだった。
「・・・そういうもの、なのですね」
まとめは、知る由もなかった現実を突きつけられ、呆然とした。
「荒田くん。若い子にあんまりひどいこと教えちゃ、かわいそうよ」
呆れ顔で知子がやってきた。
「と、知子さん!」
「あら、私のことも知ってるの?随分と物知りな女子高生ね」
知子がニコニコとまとめを見た。
「も、もちろんです!知子さんと言えば、荒田先生の初期の専属モデルで、奥様・・・」
「なんでも知ってるのね。すごいわ。荒田くんね、初めての時、部屋でいきなり私の服を剥ぎ取ったのよ」
「な、な・・・」まとめが絶句した。
「私もまだ乙女だったからね『ああ、私、この人に抱かれるんだ』って思って諦めたの。そしたらね、荒田くん『そのまま動くな!』って叫んでパチパチ、って撮りだしたのよ」
と知子が荒田を真似て写真を撮るポーズになった。
「もう私びっくりで、頭の中真っ白になったわ。で、言われるままにポーズ取って写真撮られて、しばらくしたらボソッと『また頼む』ですって。私、その言葉にへたり込んで泣き出しちゃった」
「あ、あの時はな、知ちゃん。わしだって女性の裸なんて初めてだったし、かなり緊張しとったんじゃ」人前で初めて明かされた過去に、さすがの荒田も気が動転していた。
「ですってよ、まとめさん。男の人って、ほんと自分勝手よね」
知子はなんでもないことのように笑い飛ばした。
「・・・め、面目無い」
荒田は謝ることしかできなかった。
「生きていると色々あるものだな」
「そう、ですね」
そそくさと二人の元を離れたまとめと彩香は、あっけにとられた顔で頷きあった。
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