上 下
136 / 428
1

135

しおりを挟む
それから盛雄以外の全員が、愛の運転する『ベルちゃん』で帰ってきた。
「すいません、家まで送ってもらっちゃって」
「いいのよ。彩香ちゃんもゆずちゃんも荷物たくさんあるみたいだし」
「彩香の家って、めっちゃ和風だね」
「うん。おばあちゃんの家、戦後に建てたまま残ってるの」
「なんか落ち着く感じ」
「今度遊びにおいでよ」
「いいの?」
「もちろん」
「わたしも、いい?」
「もちろんゆずも!」
「ありがとう、さいちゃん」
彩香が車を降りて、玄関を開けた。
「ただいま!」
彩香の声に、彩香を一回り小さくしたサイズの少女が一人、玄関に出てきた。
「お姉ちゃん、お帰り!」
少女は彩香を見て満面の笑みを浮かべた。
「ただいま彩乃」
「あらあら、彩香ちゃんそっくりねぇ」
愛は彩乃を見てにっこりと笑顔を向けた。
「そっくり・・・」
並んだ二人を見たゆずは、ただただ呆然としている。
「うわぁ!ミニ彩香だ!」
彩香と一緒に車を降りていた明衣は、いきなり彩乃に抱きついた。
「お、お姉ちゃん・・・」
明衣にいきなり抱きつかれた彩乃は、困った顔で彩香の方を向いた。
「前に話したでしょ。この子が明衣よ」
「・・・本当に抱きつくんだね」
妙に冷静な彩乃だった。その間も明衣は嬉しそうに頬ずりをしていた。
「どれどれ?ほんとだ、瓜二つだ!まじすげぇ」
と見たままを言葉にする大和。
「・・・」
車のドアから顔を出していた鷹文は声も出せなかった。
「お母さんは?」
「今日も遅くなるって」
「そう・・・妹の彩乃です」
振り返った彩香は、みんなに妹を紹介した。
「こんにちは、姉がお世話になりました」
彩乃は丁寧にお辞儀した。
「いえいえ、こちらこそ。彩香がいなかったら、私たち今頃海で干からびてるよ」
明衣があながち嘘とも言えぬようなことを言った。
「その前に明衣の爆弾飯で吹き飛んでたかもな」
「鷹文!」
明衣にたしなめられた鷹文は、車に引っ込んだ。
「うふふ。彩乃ちゃんもかわいいわね」
周囲の会話を気にもせず、終始嬉しそうな愛。
「彩乃ちゃんは今おいくつ?」
「13歳、中2です」
「あら、結衣。彩乃ちゃん同じ年よ」
「ごめんね。うちのお姉ちゃんっていつもこんななの」
と自己紹介よりも先に姉の不埒な行為を謝る結衣だった。
「ううん。大丈夫。よろしくね。結衣ちゃん」
「うん。彩乃ちゃん。本当にお姉さんそっくりね」
「うふふ。わたし、お姉ちゃんの真似してるの」
と彩乃はいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「送っていただいたありがとうございました。気をつけて」
「いえいえ。はぁい!じゃあみんな彩香ちゃんたちにご挨拶してね」
愛はまるで幼稚園の先生のようにみんなに優しく声をかけた。
「彩香、またね」「ばいばい、さいちゃん」
「彩香さんいろいろありがとうございました。彩乃ちゃん、今度遊びに行こうね!」
「うん!」
「彩香ちゃん!また二学期に!」
「じゃあ、またな」
「うん、みんな、楽しかったね。またね!」
みんなの挨拶が終わると、愛の運転する車が出発した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

君の浮気にはエロいお仕置きで済ませてあげるよ

サドラ
恋愛
浮気された主人公。主人公の彼女は学校の先輩と浮気したのだ。許せない主人公は、彼女にお仕置きすることを思いつく。

処理中です...