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「しの先輩、カメラも持ってるんですか?」
しのの横には、一眼レフカメラが置いてあった。
「い、いえ。こ、これは、和泉さんので、みんなの水着の写真を撮るように、言われてるんです」
「あー、そんなこと言ってましたね」
明衣が、水着を渡された時に和泉に言われたことを思い出していた。
「な、なんでも、衣装作りの、さ、参考にする、そうです」
「え?水着見て?」
「は、はい・・・わたしにも、よくわからないのですが・・・」
「ですよねぇ。ねえ彩香、それって意味あると思う?」
「どうなんだろうね。和泉さん、変なことに使わないかな?」
「え?」
「前のイベントの私たちの写真、ネットに出てたって明衣、言ってたじゃない。あれは和泉さんじゃないみたいだけど」
彩香は心配そうな顔をした。
「そ、それは、大丈夫だと、思います。和泉さん、自分が楽しむため、と、おっしゃっていました、から」
「女子の水着見て何が楽しいんだろう?」
不思議がる明衣。
「わわわ、わたしも、楽しい、ですよ。さ、彩香さんや、明衣、さんの、み、水着、すがた」
「え?しのさんってそういう趣味なの?」
「めめめ、めっそうもないです!マンガの、アイディアに、繋がるので」
「先生は、なんでもマンガに繋がるんですねぇ」
ゆずはついさっきのことはもう忘れてしまったのか、しのをぽおっと見つめていた。
「ちょっと借りてもいいですか?」
と彩香が、デジカメを手に取った。
「やっぱりファインダーあるといいなぁ。絞り・・・と、シャッタースピードと・・・うん、いい感じ!」
彩香は、波打ち際で遊んでいる和泉と玲、大和をズームしてパシャパシャと撮りはじめた。
「なんか、いいかも」
いつのまにか立ち上がった彩香は、カメラを持ったまま、どんどん和泉たちの方に向かっていき、その間もずっとシャッターを切り続けていた。
「さ、彩香さん、乗ってます、ね」
「ですね。彩香、カメラ持つと違う人格になるみたいだから」
彩香は砂浜から、海側からと、色々な角度で和泉たちを撮りまくっていた。

「彩香ちゃん!プロのカメラマンみたいね!」
どんどん近寄ってくる彩香に気づいた和泉が、シャッターを切り続ける彩香に声をかけた。
「あ!すいません。つい・・・」
気づいた彩香は、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「いいのよ。みんなの水着撮ってもらおうと思って持ってきたんだから。楽しい?」
「はい。やっぱり一眼っていいですね。なんかこう『写真撮ってる!』って気がします」
キラキラとした笑顔の彩香だった。
「そう、ねえ彩香ちゃん、それ、別荘にいる間使ってていいわよ」
「え?いいんですか⁉︎」
「うん。なんか彩香ちゃん、イキイキしてるし」
「ありがとうございます!大事にしますね!」
「レンズもね、色々あるから、あとで渡すね」
「はい!」
「じゃあ今度は、明衣ちゃんたちに突撃!」
和泉が大きな声で彩香にハッパをかけた。
「は、はい!」
と彩香にしては珍しく、勢いよく明衣たちの方に走っていった。
「・・・やっぱりお父さんの子なのねぇ」
和泉は彩香を優しく見つめていた。
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