94 / 428
1
93
しおりを挟む
別荘は海に面した高台に位置していて、海からの心地よい風が庭を吹き抜けていく。今は、リビングの大きな窓も全部開けてあって、家の中でも海の爽やかな風を感じることができた。
今朝は少し曇っていて、夜には雨の予報になっていた。そんな天気のせいか誰も海に行こうとは言い出さず、明衣たち女子グループは庭にある大きなパラソルのついたテーブルで、トロピカルなフレーバーティーを飲みながらのんびりしているのだった。
「自転車に乗れない⁉︎」
「う、うん・・・」
明衣の叫びにゆずが縮こまった。
「ゆず、ずっと女子校だし。ほら女の子だけじゃ自転車なんてあまり使わないじゃない。だかよ、きっと・・・」
となぜか彩香が必死に弁解した。
「・・・それじゃ買い物行けないな」
少し離れたところで、涼しげな籐製のロッキングチェアに座りながらのんびりと本を読んでいた鷹文が、冷めた声で言った。
「だね。大きなCSが山の方にあるんだけど、結構眺めいいんだ。でも歩いてだとちょっときつい距離かなぁ」
明衣その眺めを思い出したようだった。
「そ、そうなの・・・ちょっと残念」
残念そうな顔のゆずを見た明衣が、何かを思いついたのか、突然立ち上がった。
「そうだ、ゆず!この際だからここで練習しようよ、自転車!」
「ええー、自転車なんて無理だよぉ」明衣の提案にぐずるゆず。
「そんなのやってみなきゃわからないじゃん」
「だ、だって・・・前にあんなに無理やり乗せられて・・・ころんじゃったんだもん・・・」
思い出したのか、ゆずは痛そうに自分の膝をさすった。
「そっか・・・ねえ鷹文!プロテクターとかある?」
「さすがにないな」
「そっかあ。ねえ、おじさん?」
「ああ、必要なものなら買っていらっしゃい」
と、今日は珍しく休みにしたのか、のんびりとソファに座って新聞を読んでいる盛雄が、ニコニコしながら答えた。そんな盛雄を見ていた彩香は、ちゃんと聞いてるのかしらと首をかしげた。
「サンキューおじさん大好き!」
そんなことなど微塵も気にしない明衣は、許可をもらえたらすぐ実行とばかりに動き出した。
「じゃあさ、ゆず、私と鷹文でこれから練習セット買ってくるから、その間に大和に乗り降りの方法教わってて」
「や、大和くん、に?」
「うん。あいつ、私たちの中で一番早く乗れるようになったんだよ。私も鷹文も大和に教えてもらったし、あいつ意外と教えるのうまいんだ。大和、頼んだわよ!」
「ああ、任せとけ!こっちはもう少しだから終わったらな!」
今日は結衣に押さえてもらって壁の修理を急いでいた大和が、はしごの上から答えた。
「む、むりだよぉ・・・それに、や、やまとくんと・・・」
大和と二人っきりになると思ったゆずは、恥ずかしそうに顔を赤くして縮こまってしまった。
「彩香とゆいも一緒にいてあげてね。ゆず、大和と二人っきりじゃ心臓止まっちゃうから」
「うん。わかったわ。いってらっしゃい。気をつけてね」
彩香たちも練習に付き合ってくれるとわかって、ゆずは少しホッとしたようだった。
「うん。じゃあ鷹文、行くよ!」
俺も行くのかよ、と言いたそうな顔の鷹文を連れて、明衣は元気よく買い物に出かけた。
今朝は少し曇っていて、夜には雨の予報になっていた。そんな天気のせいか誰も海に行こうとは言い出さず、明衣たち女子グループは庭にある大きなパラソルのついたテーブルで、トロピカルなフレーバーティーを飲みながらのんびりしているのだった。
「自転車に乗れない⁉︎」
「う、うん・・・」
明衣の叫びにゆずが縮こまった。
「ゆず、ずっと女子校だし。ほら女の子だけじゃ自転車なんてあまり使わないじゃない。だかよ、きっと・・・」
となぜか彩香が必死に弁解した。
「・・・それじゃ買い物行けないな」
少し離れたところで、涼しげな籐製のロッキングチェアに座りながらのんびりと本を読んでいた鷹文が、冷めた声で言った。
「だね。大きなCSが山の方にあるんだけど、結構眺めいいんだ。でも歩いてだとちょっときつい距離かなぁ」
明衣その眺めを思い出したようだった。
「そ、そうなの・・・ちょっと残念」
残念そうな顔のゆずを見た明衣が、何かを思いついたのか、突然立ち上がった。
「そうだ、ゆず!この際だからここで練習しようよ、自転車!」
「ええー、自転車なんて無理だよぉ」明衣の提案にぐずるゆず。
「そんなのやってみなきゃわからないじゃん」
「だ、だって・・・前にあんなに無理やり乗せられて・・・ころんじゃったんだもん・・・」
思い出したのか、ゆずは痛そうに自分の膝をさすった。
「そっか・・・ねえ鷹文!プロテクターとかある?」
「さすがにないな」
「そっかあ。ねえ、おじさん?」
「ああ、必要なものなら買っていらっしゃい」
と、今日は珍しく休みにしたのか、のんびりとソファに座って新聞を読んでいる盛雄が、ニコニコしながら答えた。そんな盛雄を見ていた彩香は、ちゃんと聞いてるのかしらと首をかしげた。
「サンキューおじさん大好き!」
そんなことなど微塵も気にしない明衣は、許可をもらえたらすぐ実行とばかりに動き出した。
「じゃあさ、ゆず、私と鷹文でこれから練習セット買ってくるから、その間に大和に乗り降りの方法教わってて」
「や、大和くん、に?」
「うん。あいつ、私たちの中で一番早く乗れるようになったんだよ。私も鷹文も大和に教えてもらったし、あいつ意外と教えるのうまいんだ。大和、頼んだわよ!」
「ああ、任せとけ!こっちはもう少しだから終わったらな!」
今日は結衣に押さえてもらって壁の修理を急いでいた大和が、はしごの上から答えた。
「む、むりだよぉ・・・それに、や、やまとくんと・・・」
大和と二人っきりになると思ったゆずは、恥ずかしそうに顔を赤くして縮こまってしまった。
「彩香とゆいも一緒にいてあげてね。ゆず、大和と二人っきりじゃ心臓止まっちゃうから」
「うん。わかったわ。いってらっしゃい。気をつけてね」
彩香たちも練習に付き合ってくれるとわかって、ゆずは少しホッとしたようだった。
「うん。じゃあ鷹文、行くよ!」
俺も行くのかよ、と言いたそうな顔の鷹文を連れて、明衣は元気よく買い物に出かけた。
0
お気に入りに追加
252
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる