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その日の放課後
「玲」
鷹文が、人気のない廊下で待っていた玲に声をかけた。あらかじめスマホで約束していたのだった。
「鷹文、待ってたわ」
周りを気にしながら玲も鷹文を見た。
「さっきの、というか週末の件な」
「和泉さんって、いろんな意味ですごいわね・・・遠野さんも和泉さんに?」
「まあ、だいたいあんな成り行きで、メイド服が仕事着になったらしい」
「そうなんだ。なんか和泉さんって、逆らえないオーラがあるわ」
「だな。悪い人じゃないんだけど」
「そうね。私の衣装も作ってくれるって言ってたし」
少し嬉しそうな顔をする玲。
「ああ、その件に関しては全く心配しなくていいぞ。あの人、自分の仕事より衣装作りに命かける人だから」
「そうなんだ。でも、なんか羨ましいな」
「え?」
「だって、仕事しながら好きなことにも全力でいられるなんて、ちょっと憧れちゃうじゃない」
「ああ、あの人仕事の方も自分の好きなことみたいだからな」
「そうなの?」
「若い頃から親父の小説、よく読んでたらしい」
「そうなんだ。いいわね。なんか素敵だわ」
「そうだな」
「あら、鷹文も今日は素直ね」
意外そうな顔をする玲。
「そうか?」
「だって普段なら、何だかんだ否定するじゃない、私のこと」
「・・・すまん」
「ほんと、今日は素直ね。遠野さんも和泉さんの服だから着てるのかな?」
「どうだろうな。あいつ、意外と気に入ってるみたいだぞ。動きやすいとか言ってたし」
「遠野さんとは、よく話すの?」
上目遣いの玲が尋ねた。
「まあまあ、かな。あいつほとんど毎日うちにいるし」
「そうなの⁉︎」
玲は驚いたようだった。
「家の中見ただろ。あいついなかったらあの家もっと散らかってるよ。なんせ住んでるの俺と親父だけなんだから。それに弁当とかも・・・」
「ああ、あのお弁当、遠野さんが作ってるのね。どおりでかわいらしいわけだわ」
「そうなのか?」
「だって、遠野さんよ。お弁当かわいいのだって当然じゃない!」
鷹文には何が当然なのかわからなかったが、否定もしなかった。
「それにしても学年トップクラスの美少女のお弁当、毎日食べてるなんてね」
「あ、そのことなんだけど、他の奴には・・・」
「言わないわよ!そんなこと言ったらパニックになるわ」
「それから・・・」
「メイドのことも言いません。あなたの家大変なことになるし、私だって当て馬に・・・」
「なに?」最後の方は鷹文には聞こえなかった。
「なんでもいいの!誰にも言わないから安心して!」
それだけ言うと、玲はむすっとして黙ってしまった。
「あ、ああ。頼む」
「私、もう、帰るわね」
それだけ言うと、玲は一人で行ってしまった。
「玲」
鷹文が、人気のない廊下で待っていた玲に声をかけた。あらかじめスマホで約束していたのだった。
「鷹文、待ってたわ」
周りを気にしながら玲も鷹文を見た。
「さっきの、というか週末の件な」
「和泉さんって、いろんな意味ですごいわね・・・遠野さんも和泉さんに?」
「まあ、だいたいあんな成り行きで、メイド服が仕事着になったらしい」
「そうなんだ。なんか和泉さんって、逆らえないオーラがあるわ」
「だな。悪い人じゃないんだけど」
「そうね。私の衣装も作ってくれるって言ってたし」
少し嬉しそうな顔をする玲。
「ああ、その件に関しては全く心配しなくていいぞ。あの人、自分の仕事より衣装作りに命かける人だから」
「そうなんだ。でも、なんか羨ましいな」
「え?」
「だって、仕事しながら好きなことにも全力でいられるなんて、ちょっと憧れちゃうじゃない」
「ああ、あの人仕事の方も自分の好きなことみたいだからな」
「そうなの?」
「若い頃から親父の小説、よく読んでたらしい」
「そうなんだ。いいわね。なんか素敵だわ」
「そうだな」
「あら、鷹文も今日は素直ね」
意外そうな顔をする玲。
「そうか?」
「だって普段なら、何だかんだ否定するじゃない、私のこと」
「・・・すまん」
「ほんと、今日は素直ね。遠野さんも和泉さんの服だから着てるのかな?」
「どうだろうな。あいつ、意外と気に入ってるみたいだぞ。動きやすいとか言ってたし」
「遠野さんとは、よく話すの?」
上目遣いの玲が尋ねた。
「まあまあ、かな。あいつほとんど毎日うちにいるし」
「そうなの⁉︎」
玲は驚いたようだった。
「家の中見ただろ。あいついなかったらあの家もっと散らかってるよ。なんせ住んでるの俺と親父だけなんだから。それに弁当とかも・・・」
「ああ、あのお弁当、遠野さんが作ってるのね。どおりでかわいらしいわけだわ」
「そうなのか?」
「だって、遠野さんよ。お弁当かわいいのだって当然じゃない!」
鷹文には何が当然なのかわからなかったが、否定もしなかった。
「それにしても学年トップクラスの美少女のお弁当、毎日食べてるなんてね」
「あ、そのことなんだけど、他の奴には・・・」
「言わないわよ!そんなこと言ったらパニックになるわ」
「それから・・・」
「メイドのことも言いません。あなたの家大変なことになるし、私だって当て馬に・・・」
「なに?」最後の方は鷹文には聞こえなかった。
「なんでもいいの!誰にも言わないから安心して!」
それだけ言うと、玲はむすっとして黙ってしまった。
「あ、ああ。頼む」
「私、もう、帰るわね」
それだけ言うと、玲は一人で行ってしまった。
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