家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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「鷹文くん、彩香ちゃん、ほらこれ!」
和泉はスマホの画面を見せた。
「これって・・・」
「そうよ、玲ちゃんが着てる衣装のアニメ。ね、そっくりでしょ?」
「ほんとですね。和泉さん、よく気づきましたね」
「あはは、もう特技といってもいいのかな。街中歩いててもね、アニメのキャラに似てる女の子にはすぐに気づくの。仕事のときなんかは声かけたりできないからすっごく悔しいけど、今日は衣装も持ち歩いてたし、ほんとラッキーだったわ」
しばらくぼうっとしていた玲が、和泉のスマホを覗き込んだ。
「あ、これ!知ってます。確か、全くの素人だった女の子がスーパーギタリストになるっていう・・・」
「そうそう、それよ!やっぱり玲ちゃん知ってたわね。で、これ、記憶にない?」
和泉は玲が着ている衣装をつまみ上げながら期待の目を向けた。
「・・・あ!これって、ファーストライブの!」
「そう、玲ちゃん正解!」
「うわー、ほんとだ、よく似てる」
「よく似てる、なんてもんじゃないのよ。はい、これ」
和泉は違う画面に変えて、スマホを渡した。
「・・・ほんとだ、そっくりだ!」
「実はね、この作者ちょっとした知り合いでね、これ、似てるんじゃなくって、この衣装元にして書いたものなの」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。作者さんから依頼されて、ファーストライブの最終曲をイメージした衣装作ったの。で、モデルさんにそれ着せて書き出したのがこの絵ってわけ」
「す、すごいんですね」
玲の和泉を見る目がまたさらに一段上がった。
「まあ、時々あるのよ。こういう活動続けてると」
和泉も少し照れたように答えた。
「あの・・・私、秋の学園祭でバンドやるんですけど、もしよかったらこの衣装使わせていただけませんか?」
「うーん。それもいいんだけど、これ、ちょっと盛ってるから」と言いながら胸のあたりに手を当てる和泉「なんだったら新しいの作ろうか?玲ちゃんにもっと似合うの?」
「え⁉︎い、いいんですか?」
「うん。鷹文くんとも仲良いみたいだし、私は構わないわよ」
「でしたら是非、お願いします!嬉しいです」
鷹文の家に来た最初の理由を完全に忘れてしまった玲は、和泉と両手で握手をして喜びの表情を浮かべていた。
 
それから着替えが終わった玲は、
「和泉さん、今日はありがとうございました」
「うん、こちらこそ、ありがとね!」
「はい、では失礼します」
「玲ちゃん、またね!」
彩香はおろか、鷹文のことも完全に忘れてしまったようで、和泉にあいさつして斉藤家を後にした。
 
「あー楽しかった。ねえ彩香ちゃん、お茶もらえるかな?」
「は、はい、すぐ用意します」
呆気にとられて身動きできなかった彩香と鷹文が、和泉の言葉でやっと動き出した。
「ねえ鷹文くん、あの子、鷹文くんの彼女なの?」
落ち着いた様子で、和泉が尋ねてきた。
「な・・・い、いえ、さっき言ってた学園祭で、俺があいつの歌、書くことになりまして」
いきなり彼女と言われた鷹文は顔を赤くして否定した。
「え、そうなの⁉︎歌詞書くの⁉︎」
「はい、もうある程度はできてるんですけど、高校生の恋愛とか青春がテーマなんで、わからないところいろいろ話し合ったりしてるんです」
「そうなんだ。彩香ちゃんと、どっちがかわいい?」
いきなりの質問に鷹文はたじろいだ。
「えっ・・・どっちって言われても・・・」
「それぞれに良さがあるわよねぇ。私も迷っちゃうわ。でも、私はやっぱり彩香ちゃんかな」
そんな話をしていると、盛雄がやってきた。
「和泉くん、全然顔を出さないと思ったら、こんなところにいたのかね」
「あ!すいません。時間遅れちゃいましたね」えへっという顔で和泉は謝った。
「だいぶ盛り上がっていたようだが、何かあったのかね?」
「あー先生、お呼びしなくてすいません。ついさっきまで鷹文くんの新しい彼女がいたんです」
「な、なんだと!鷹文、お前、彩香くんがいるのに、そんな子を連れてきたのか!」
盛雄が我を忘れたように鷹文に大きな声を出した。
「お、おやじ、落ち着けよ・・・」
「何言っとる!彩香くん、すまん、わしも鷹文がこんな色ボケた奴だとは思わなかった。父親として情けない・・・」今度は彩香の方を向いて、心底申し訳なさそうに謝った。
「あの、先生。私、鷹文くんと、そういうわけじゃ・・・」彩香も困ったように否定した。
「そうですよ、先生。どうしちゃったんですか?」
「・・・修羅場になっとったんじゃないのかね?大きな声がしていた気がしたのだが」
「はあ・・・ボケたのは親父の方だろ!」
鷹文は呆れたように盛雄に言った。
 
「そ、そうか。私の誤解でしたか、彩香くん、大変申し訳ない」
盛雄は平謝りだった。
「いえ、気にしてませんから・・・大丈夫です」
彩香は、ホッとしたように答えた。
「ところで鷹文、新しい彼女とは誰なんだ?」
「・・・彼女じゃなくて、依頼主」
そこからまた 学園祭などについて、盛雄に説明した。
「おお、そうかそうか。お前も少しはやる気になったんだな」
満足そうに頷く盛雄。
「彩香ちゃんはそのこと知ってたの?」
「はい。鷹文くんが話してくれました」
「そおなんだぁ」とニンマリとした顔で鷹文を見る和泉。
「ねえねえ、鷹文くんって奥さんには隠し事できないタイプなんだね」
和泉は横に座る鷹文の肩をグリグリした。
「な、なんのことですか」
「さあ、なんだろうねぇ」
何やら楽しそうな和泉だった。

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