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「で、どこに向かっているんだ?」
善夫は彩香に聞いた。
「はい、音楽室にいるそうです」
「そうか」
「私、音楽室って初めて」
「私もよ。選択授業で取らないと来ないよね」
「場所はわかっているのか?」
「はい、こっちの棟の4階だそうです」
あらかじめラインで鷹文に聞いていた彩香は、善夫の質問にも、すんなり答えることができた。
階段を登りきると奥の方からドラムの音が聞こえてきた。
「こっちみたいですね」
「そのようだな」
と音のする方へ3人で歩いていくと、だんだんと音も大きくなってきた。
「ここみたいです。入りますね」
と、彩香が音楽室のドアを開けて、中を覗き込みながら「こんにちは」とあいさつしたが、当然のごとく音楽にかき消されて何も聞こえなかった。
そんな中、ギターを弾いていた大和が、人が入ってくるのに気づいて鷹文に目配せした。
ペンを持ったまま、なんとなく練習を見ていた鷹文が、大和目配せに気づいたようで、後ろを振り向いた。
「鷹・・ん、い・?」
彩香が何か言ったようだがほぼ聞こえなかった鷹文は、席を立ち上がり、彩香の方へ向かった。
するとちょうど曲が終わったようだった。
「鷹文くん、さっきのことなんだけど」
「彩香ちゃん!見にきてくれたの?」
と鷹文の返事も待たず、大和が彩香に近寄ってきた。
「あ、ごめん・・・見学じゃないんだ・・・」
「な、なんだそうなの」
あからさまにがっかりそうな顔をする大和。
「ねえ、練習は⁉︎」
彩香が入ってきたのを見て少しイラついたのか、玲が刺々しい声で大和に練習再開を迫った。
「ちょっとくらいいいじゃん」
大和は玲の態度など気にせず(どうせいつものことだし)、彩香と話を続けた。
「じゃあ、写真取りにきてくれたんだ!」
とあくまでもポジティブな発想をする大和だった。
「ご、ごめん・・・それも違って・・・鷹文くん、こちらがさっき連絡した佐久間先輩」
と彩香は、善夫を鷹文に紹介した。
「すまんな、斉藤くん。遠野に聞いたと思うがこの写真をな・・・」
と言いながら、善夫は先ほど印刷した写真を鷹文に見せた。
「コンテストに出品するつもりなのだが、写っている君と、この女子に許可をもらいたくてね。構わないだろうか?」
写真を見た鷹文は、この写真がいつのものなのか検討がついたようだった。
「玲、ちょっと」
突然の練習停止と超美少女と噂の彩香の登場にかなりイラついていた玲は、いきなり声がかかって「はぁ?」という顔をしていた。
「お前写ってるんだけど」
「え?なに、どういうこと?」
マイクをスタンドに戻した玲が鷹文たちの方にやってきた。
「この写真に写っているのは君なのか?確かに、髪型も同じようだな」
佐久間は、写真と玲を見比べて、納得したようだった。
「あ、これ、この前の・・・」
思い出した玲は、一瞬恥ずかしそうな顔をした。
「これ、どこから撮ってたんですか」
「その日、ちょうど、遠野くんの入部祝いということでな、屋上でみんなで撮影会をしていたんだ。その時、君たちの下校風景を撮ったというわけだ」
「そうなんですか・・・」
玲は、写真を食い入るように見つめた。
「・・・これ、わたしにももらえますか?」
と、イラついていたのが幻だったかのような笑顔で、善夫を見た。
「ああ、もちろん。データでよければ、この後すぐにでも」
「ねえ鷹文。これ、素敵な写真ね」
玲はすっかり嬉しそうな顔になっていた。
「これ、どこに飾るんですか?」
ニコニコしながら玲がたずねた。
「まだ決めていないんだが、一応、コンテストに出品する予定なんだ」
「え‼︎ねえ鷹文、私たち、コンテストに出るんですって!」
コンテストの響きにさらに喜びを増した玲が鷹文の腕に触れて、鷹文の方を見つめた。
「・・・まあ、いいんじゃないっすか」
いつものように無表情な鷹文も、一応同意の返答をした。
「そうか、それは有難い。ふたりともありがとう」
満足そうな佐久間、嬉しそうな玲をよそ目に、豹変した玲にあっけにとられた彩香は、ゆずと並んで立ったまま何も言えずにいた。
善夫は彩香に聞いた。
「はい、音楽室にいるそうです」
「そうか」
「私、音楽室って初めて」
「私もよ。選択授業で取らないと来ないよね」
「場所はわかっているのか?」
「はい、こっちの棟の4階だそうです」
あらかじめラインで鷹文に聞いていた彩香は、善夫の質問にも、すんなり答えることができた。
階段を登りきると奥の方からドラムの音が聞こえてきた。
「こっちみたいですね」
「そのようだな」
と音のする方へ3人で歩いていくと、だんだんと音も大きくなってきた。
「ここみたいです。入りますね」
と、彩香が音楽室のドアを開けて、中を覗き込みながら「こんにちは」とあいさつしたが、当然のごとく音楽にかき消されて何も聞こえなかった。
そんな中、ギターを弾いていた大和が、人が入ってくるのに気づいて鷹文に目配せした。
ペンを持ったまま、なんとなく練習を見ていた鷹文が、大和目配せに気づいたようで、後ろを振り向いた。
「鷹・・ん、い・?」
彩香が何か言ったようだがほぼ聞こえなかった鷹文は、席を立ち上がり、彩香の方へ向かった。
するとちょうど曲が終わったようだった。
「鷹文くん、さっきのことなんだけど」
「彩香ちゃん!見にきてくれたの?」
と鷹文の返事も待たず、大和が彩香に近寄ってきた。
「あ、ごめん・・・見学じゃないんだ・・・」
「な、なんだそうなの」
あからさまにがっかりそうな顔をする大和。
「ねえ、練習は⁉︎」
彩香が入ってきたのを見て少しイラついたのか、玲が刺々しい声で大和に練習再開を迫った。
「ちょっとくらいいいじゃん」
大和は玲の態度など気にせず(どうせいつものことだし)、彩香と話を続けた。
「じゃあ、写真取りにきてくれたんだ!」
とあくまでもポジティブな発想をする大和だった。
「ご、ごめん・・・それも違って・・・鷹文くん、こちらがさっき連絡した佐久間先輩」
と彩香は、善夫を鷹文に紹介した。
「すまんな、斉藤くん。遠野に聞いたと思うがこの写真をな・・・」
と言いながら、善夫は先ほど印刷した写真を鷹文に見せた。
「コンテストに出品するつもりなのだが、写っている君と、この女子に許可をもらいたくてね。構わないだろうか?」
写真を見た鷹文は、この写真がいつのものなのか検討がついたようだった。
「玲、ちょっと」
突然の練習停止と超美少女と噂の彩香の登場にかなりイラついていた玲は、いきなり声がかかって「はぁ?」という顔をしていた。
「お前写ってるんだけど」
「え?なに、どういうこと?」
マイクをスタンドに戻した玲が鷹文たちの方にやってきた。
「この写真に写っているのは君なのか?確かに、髪型も同じようだな」
佐久間は、写真と玲を見比べて、納得したようだった。
「あ、これ、この前の・・・」
思い出した玲は、一瞬恥ずかしそうな顔をした。
「これ、どこから撮ってたんですか」
「その日、ちょうど、遠野くんの入部祝いということでな、屋上でみんなで撮影会をしていたんだ。その時、君たちの下校風景を撮ったというわけだ」
「そうなんですか・・・」
玲は、写真を食い入るように見つめた。
「・・・これ、わたしにももらえますか?」
と、イラついていたのが幻だったかのような笑顔で、善夫を見た。
「ああ、もちろん。データでよければ、この後すぐにでも」
「ねえ鷹文。これ、素敵な写真ね」
玲はすっかり嬉しそうな顔になっていた。
「これ、どこに飾るんですか?」
ニコニコしながら玲がたずねた。
「まだ決めていないんだが、一応、コンテストに出品する予定なんだ」
「え‼︎ねえ鷹文、私たち、コンテストに出るんですって!」
コンテストの響きにさらに喜びを増した玲が鷹文の腕に触れて、鷹文の方を見つめた。
「・・・まあ、いいんじゃないっすか」
いつものように無表情な鷹文も、一応同意の返答をした。
「そうか、それは有難い。ふたりともありがとう」
満足そうな佐久間、嬉しそうな玲をよそ目に、豹変した玲にあっけにとられた彩香は、ゆずと並んで立ったまま何も言えずにいた。
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