家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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「では、今日はここまで」
チャイムが鳴って荒田の授業が終わった。
「彩香ちゃたち、お昼も食べてくでしょ!」
テキストを片付けながら、舞菜が彩香たちに声をかけた。
「はい。学食楽しみにしてました!」明衣が元気よく言った。
「先生、彩香ちゃんたち学食連れて行きますけど」
「ああ、ゆっくり楽しんできなさい。舞菜くん。わしは午後は授業がないから、食事が済んだらすまんが、彩香ちゃんたちをわしのところまで連れてきてもらってもいいかな?」
「はい。わかりました」
「では、彩香ちゃん、また後で」
そう言い残して、荒田は教室を出ていった。
 
それから彩香たちは学食に移動した。
学食のメニューの多さに驚き、迷い続けた3人は、それぞれ別のものを頼んで、みんなで食べることに落ち着き、やっとトレーを持って席に着いたのだった。
「「「「いただきます」」」」
「からあげ唐揚げ!」明衣が待ってましたとばかりに目の前の唐揚げにパクついた。
「ゆずのも・・・いただき!」
「あっ!明衣ちゃん!」
明衣はゆずの前にあったオムレツを箸で切り取って口の中に。
「明衣、お行儀悪いわよ!」
「うーん。こっちもおいしい♡」
彩香が嗜めるのも気にせず、明衣は彩香の皿からもおかずを取って食べた。
「まあいいんだけどね。私も唐揚げもらっちゃおう!」
彩香も負けずに、明衣のからげを一つつまんだ。
「わ、わたしも!」
出遅れた感のあるゆずも隣の明衣のお皿に手を伸ばした。
「みんななかいいわね。なんか羨ましいわ」
舞菜は、女子高生たちのそんな姿を微笑ましそうに見ていた。
「あ、すいません、つい・・・」
彩香が申し訳なさそうな顔をした。
「いいのよ。周りの学生だってみんなそんな感じだから」
「あ、舞菜さんもよかったら食べてください」
明衣が舞菜に声をかけた。
「いいの?じゃあ遠慮なく」
舞菜も明衣の唐揚げを一つつまんだ。
そんな感じでみんなで分け合いながら、楽しく食事が進んでいった。
「彩香ちゃん先生と知り合いだったのね。びっくりだわ」
「そ、そうですね・・・私もびっくりです」
彩香は戸惑ったように答えた。
「え?どういうこと?」
「あの・・・私、荒田先生のこと全然覚えてなくって・・・」
「そうなの⁉︎」
彩香の言葉に、舞菜も驚いた。
「はい、小さい頃にお会いしたことはあるのかもしれませんけど・・・」彩香はどうしても思い出すことができないようだった。
「きっとそうよ!彩香ちゃんのお父さんって確か荒田先生の一番弟子だったって言ってたし」
「そうなんですか?」
「ええ、この前の授業で遠野雄大さんの写真を使ったの。その時先生が『これはわしの一番弟子の作品なんじゃが・・・』って話してて。それが私の持ってる遠野雄大さんの写真集に入ってる作品だったから、すぐにわかったわ」
「それなら私、荒田先生にお会いしたことあるのかもしれませんね」
彩香はどうしても思い出すことができない様子だったが、とりあえず納得したようだった。
「ねえ彩香?彩香のお父さんって写真家だったの?」
話に区切りがついたところを見計らって、明衣が聞いてきた。
「うん。風景写真メインの写真家で、世界中飛び回ってたの」
父のことを尋ねられた彩香は、少し沈んだ顔になった。
「そうなんだ・・・どうしたの、彩香?」
彩香の変化に気づいた明衣が心配そうな顔をした。
「うん。お父さんね・・・行方不明なの」
「えっ・・・」明衣は絶句した。
「もう8年くらい前かな?撮影にアマゾンまで行って、崖から落ちちゃったんだ。アシスタントの人が現地の警察と協力して必死に探してくれたんだけど、まだ見つかってないの」
「彩香・・・」
「でも、パパ、きっと生きてるよ。現地の人たちと一緒に楽しく暮らしてて、帰りたくなくなっちゃったんだよ。きっと・・・」
彩香は自分に言い聞かせるように呟いた。
「さいちゃん・・・」ゆずが心配そうに彩香を見つめた。
「あ、ごめんなさい。舞菜さん、父の写真集、どれが好きですか?」
父親のことを思い出して落ち込みそうになった彩香は、無理やり話を切り替えた。
「え?ああ、アフリカのジャングルの写真集、かな・・・」
「ああ、あれですね!私、写真集に載ってないの、持ってますよ」
「え?そうなの?」
「はい。ちょっと待ってくださいね」
彩香はスマホを操作して1枚の写真を表示させた。
「はい、これです」
「すごい・・・」
「本当はもっと大きな画面で見られればよかったんですけど。これアフリカの個展やった時にはすごく大きくプリントしたんですよ」
彩香は父の個展を思い出しているようだった。
「そうなの。それも見たかったけど、これでも十分わかるわ」
舞菜はその写真に見とれていた。明衣とゆずも舞菜の後ろに回って画面を覗き込んだ。
「ありがとうございます。写真集の写真も好きなんですけど、私はこれが一番好きで、父のパソコンからもらってきちゃいました」
彩香が少しいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「彩香、他の写真も見ていい?」明衣が尋ねた。
「うん。ちょっと待ってね・・・私のだけどいい?」
「もちろん!」彩香がスマホを操作して、自分の写真のホルダを表示させた。
「うわぁ、この空、綺麗」ゆずが夜明け前の写真を見つけた。
「それ、家族で旅行に行った時に、わたしだけ夜明け前に起きて撮った写真なんだ」
深い紺色から白に向かって綺麗なグラデーションの中に、明けの明星がキラリと輝いている写真だった。
「彩香ちゃん・・・ステキな写真ね」
「ありがとうございます。わたしもお気に入りの一枚なんです」
いつのまにか彩香は笑顔に戻っていた。
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