家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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「なあ、玲?この前、プロの歌手になりたいとか言ってたよな?」
二人は、噴水のある広々とした公園をぶらぶらと歩いていた。
園内には美術館もあり、週末の今日は、ファミリーや恋人たちでそこそこ賑わっていた。
「うん」
「何かきっかけはあったのか?」
鷹文は玲のことを少しでもよく知ろうと思い、質問した。
「もちろん!私ね、大好きな歌手がいるの」
ニコニコしながら答える玲。
「なんてやつ?」
「緒方由紀って言うんだけど、知ってるわよね?」
「ああ、あの歌姫とか呼ばれてる」
「そうそう。わかってるじゃない。でもね、私、由紀ちゃんがデビューする前から知ってるんだ」
「え?なんで?」
「彼女、私の従姉妹だから」
「なんだって⁉︎」
「由紀ちゃんは私のパパのお兄さんの娘。私の4つ上なんだけど割と近くに住んでたから、旅行とかお食事とかよく一緒に行ってたんだ。家族みんなでカラオケ行って、二人でデュエットとかもしてた」
「なるほどな。身近にそういう存在がいるわけか」
自分を振り返り、納得した鷹文だった。
「でね、私が薦めたんだ。由紀ちゃん歌手になりなよって。絶対うまくいくからって」
「そうなのか?」
「うん。だって、本当に上手かったから。家族しか聞けないなんてもったいなじゃない。で、一生懸命調べてオーディションに応募したら・・・」
「したら?」
「一発合格よ!私すっごく嬉しかった」
玲は本当に嬉しそうな顔をした。
「それからはトントン拍子で、1年も経たないうちにいつのまにか歌姫とか呼ばれるようになって・・・」
玲の顔が少し寂しそうになった。
「由紀ちゃんとは、なかなか会えなくなっちゃったの」
「え?じゃあ・・・」
「ち、違うわよ!そりゃあ由紀ちゃんに会えないのは寂しいけど、会うためにってだけじゃなくって」
だけ、じゃないようだった。
「私だってほら、見た目は結構いいじゃない?でしょ?」
と言いながら鷹文の前でバレリーナのようにくるっと一回りした。
ゆるくカールした髪と細かいプリーツの裾がふわっと広がり、元々の可憐な印象にさらに華やかさが加わった。
「そうだな。下手なアイドルよりはいいと思う」
「本当に⁉︎」
玲が嬉しそうに鷹文の目の前に迫ってきた。
「お、おい、近いって・・・」
「・・・あっ、ご、ごめん」
玲は慌てて鷹文から離れた。
「だ、だって、私のこと誰も褒めてくれないから・・・」
玲が少し悲しそうな顔をした。
「・・・でね、歌だって、そりゃあ由紀ちゃんほどじゃないけど、大和のところでギターも習ってるし、弾き語りだってできるんだよ」
笑顔に戻った玲が、ジャラーンとエアギターをしてみせた。
「・・・私がギター弾きながら由紀ちゃんとデュエットって・・・素敵じゃない?」
「それが、玲のやりたいことなのか?」
「う、うん。由紀ちゃん歌はうまいけど楽器は全然だったから。それなら私がって思ってね。もう3年くらいかな。一緒に歌も習ってるし・・・やっぱり無理・・・かな?」
いつになくおどおどした様子の玲が、鷹文を下から見上げた。
「・・・いや、諦めないでちゃんと練習続ければ、無理ってこともないんじゃないか」
「ほ、本当に⁉︎」
玲がゼロ距離まで迫ってきた。
「あ、ああ・・・」
「そうよね!私、頑張る!頑張って由紀ちゃんと一緒に歌う!」
もはや距離など気にしていない玲は、目を潤ませながら鷹文のすぐ前で、ぎゅっと両手を握りしめていた。
「な、なあ・・・」
さすがに近すぎて緊張しまくりの鷹文は、それとなく玲に声をかけた。
「あ、あれ?・・・ごめんね!」
その距離感にやっと気づいた玲が、慌てて鷹文から距離を取った。二人とも顔を赤くしていた。

それからしばらくは、付かず離れずの距離感で歩いていた。
気がつくと空はすっかり茜色にそまっていた。
「そろそろ帰るか」
「うん。そうだね。ねえ、なんとかなりそう?」
「ああ、昨日まではできる気してなかったけど、今ならなんとかできそうな気がする」
「そうなんだ。お願いね。大和も・・・私も、期待してるから」
「わかった。やってみるよ」
「ところで、さ、私、今日、結構気合い入れてきたつもりなんだけど、どう?」
と言いながら玲は、少し後ろに下がり、モデルのようなポーズをとった。
「・・・いいと思うぞ」鷹文は恥ずかしそうに答えた。
「そう、ありがと!」玲は嬉しそうににっこりして「あのさ、鷹文も・・・結構かっこいいわよ」と恥ずかしそうに付け加えた。
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