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放課後、鷹文と大和は急いで帰宅した。
「で、鷹文、朝の話は理解できたか?」
「ま、まあな・・・」
鷹文は大和の話を聞いてから、それとなく周囲に注意していた。
 
「おい、今日は遠野さん見たか?」
「ああ、朝廊下ですれ違った」
「まじかよ。うらやましいな」
「ああ、いつみてもめっちゃかわいいな、遠野さん。それになんかいいにおいした」
「おまえ、変態だな」
「俺は事実を・・・」
「でもいいよなぁ遠野さん。アイドルとか女優とかやらないのかな?」
「何言ってんだ!俺たちだけの遠野さんの方がいいに決まってんじゃないか」
「そうだな・・・」
注意していると、あちらこちらから『遠野』という名前が聞こえてくるのがわかった。
 
放課後、大和は鷹文を急かして鷹文の家に急いだ。
そして、鷹文の部屋に入るなり、鷹文に問いただした。
「どうだった?みんな遠野のこと言ってたろ?」
「あいつ・・・あんなに注目されてんだな」
普段は周囲をまるで気にしない鷹文は、今までまったく気づいていなかった。
「・・・はぁ。これだから鷹文は・・・」
と大和が呆れていると、階下で玄関の開く音がした。
「こんにちは!」
と女の子の声がして、階段を上がってくる軽やかな足音が聞こえた。
「なあ、あれって遠野か?」
「だな」
「やべえ、なんか緊張してきた」
「・・・なんでおまえが緊張するんだ」
ジト目になる鷹文。
「そ、そりゃあ、学年1の人気者にこんなところで会えるんだぞ!」
「・・・明衣に言っとくか」ボソッと言う鷹文。
「おい!明衣には言うな!」
 
大和が大きな声で拒否していると、鷹文の部屋のドアがノックされた。
「鷹文くん。お友達きてるの?」
彩香がドア越しに話しかけた。
「ああ」
「じゃあ何か飲み物持ってくるね。何がいい?」
「コーヒーでいいか?」
「あ、ああ」
予想外の展開に緊張する大和。鷹文も平静を装ってはいたが心臓ばくばくだった。
「じゃあ、コーヒー頼む」
「うん。ちょっと待っててね」
そう言うと、また軽い足音とともに彩香がキッチンへ向かっていくのがわかった。
「・・・おまえいつもこんなことさせてんの?」
「いや、普段はあまり顔も合わせない」
「そうか・・・そうだよな」鷹文のことをよく知る大和は、納得したようだった。
しばらくするとまたドアがノックされ、ドアが開いた。
メイド服の彩香が少し恥ずかしそうに部屋に入ってきた。彩香の予想外の服装を見た大和は、完全に固まってしまった。
「こんにちは・・・もしかして大和、くん?」
「は、はい。竹原大和、です!」
「やっぱりそうなんだ。よかった。私は家政婦の遠野彩香です。大和くんって港川よね?」
「は、はい・・・1組です!」
「私、3組。よろしくね」彩香は笑顔で答えた。
「あの、鷹文くん。これ、机に置いていい?」
彩香は、お盆を少し持ち上げながら鷹文に聞いた。
「ああ、サンキュー」
彩香はコーヒーとお菓子の入った器を鷹文の机の上に並べた。
「じゃあごゆっくり。おかわり必要だったら呼んでね」
そう言うと彩香は部屋を出ていった。
「ふう・・・緊張したぁ!ところでさ、なんでメイド服?」緊張が解けてぐったりした大和が力なく尋ねた。
「おまえも知ってるだろ、和泉さん。あの人が仕事着って作ってきたんだ」
「あーあのコスプレ美女!・・・これ、絶対学校の奴らには見せられないな」
「・・・そうだな」教室での生徒たちの会話を思い出した鷹文は、同意せざるを得なかった。
「なあ、このことほかに知ってるやついるのか?」
「明衣と、藤野・・ゆず」
「あーいつも一緒にいるあのちっちゃい子か。あの子も人気あるんだよな」
「そうなのか?」
「だって、ちっちゃくて可愛いだろ。遠野とは違う魅力があって、遠野ほどじゃないけどファンができつつある」
「3人ともうちで飯食ってったけど・・・」
「な、なにぃ!おまえどんだけハーレム」
「明衣も入るのか?」
「と・・・当然だろ!」大和は顔を赤くした。
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