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「ゆず、午後にする?」彩香はゆずに聞いた。
「ううん・・・今から・・・行きたい」
「おはよう!ゆず、どうしたの?なんか震えてるよ」明衣が心配そうにゆずを見た。
「これから鷹文くんのところに謝りに行きたいって」彩香がゆずの代わりに明衣に説明した。
「別にいいんじゃない。あいつも悪いんだし」
「で、でも・・・やっぱりぶつかったの私・・・だし・・・」
「そっか。ちゃんとしたいんだね、ゆず。よし!わかった。私が鷹文呼んでくるから廊下で待ってって」
4組の前の廊下まで来た二人を残して、明衣は4組の教室に入って行った。
「鷹文、ちょっと話があるか顔貸してくんない?」
「・・・なんだよ。朝から」
「いいから、廊下まで来なさいよ!」明衣は鷹文の腕を引っ張って廊下へ連れ出した。
「あ、あの・・・さいとう・・・くん」ゆずは震えながらも鷹文の顔を見ていた。
「なんだよ。いきなり」
「こ、この前は・・・ぶつかっちゃってごめんなさい!」ゆずは勢いよく頭を下げた。
「・・・」
「ねえ、鷹文。ゆず、ちゃんと謝ってるわよ。なんか言うことないの」
黙ったままの鷹文に明衣が食いついた。
「・・・おれも、この前はカッとなって悪かった」鷹文も気まずそうに謝罪した。
「あんたは!もう・・・頭くらい下げなさいよ!」明衣は鷹文の頭を無理やり下げさせた。
「・・・おい、明衣!」
「ねえ、鷹文くん。ゆずのこともう怒ってないよね?」彩香はゆずが気にしていたことを尋ねた。
「あ、ああ。あの時は俺も言いすぎたと思ってる。もう怒ってないから、悪かったな・・・とう・・・の?」
「なんで疑問形?藤野ゆずよ!でも『とうの』じゃ彩香と紛らわしいから『ゆず』って呼んで」明衣は勝手に呼び名を指定した。
「・・・悪かった、ゆ・・・ゆず」さすがの鷹文も気まずそうに言った。
「・・・うん。わたし・・・こそ・・・ごめんね。斉藤くん」ゆずはもう一度頭を下げた。
「よし、これで仲直りね!」明衣は満足げに二人を見た「あ、鷹文、彩香のことも『さいか』って呼んでね。どっち?って聞き直すの面倒だから。じゃあね!」明衣は当然のように鷹文にそう言い残すと、彩香とゆずを連れて3組の教室に戻って行った。
 
「ゆず、がんばったね」彩香はゆずの背中に優しく手を添えて、ゆずを席に座らせた。
「ほらほら、もう授業始まるからさ、落ち着きなよ」明衣は、まだ少し震えているゆずをなだめるように、頭を撫でた。
「めいちゃん・・・髪の毛、ぐちゃぐちゃになっちゃう・・・」教室に帰って少し落ち着いたゆずは、ホッとした表情を見せていた。
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