家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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体育館での入学式も終わり、生徒たちは教室へ向かって歩いていた。
「ねえ、彩香ってどこ中?」
「私は、向山中」
「じゃあ、電車通学?大変だねぇ」
「明衣は?」
「私はすぐ近くの港川中、地元よ」
なぜか自信たっぷりにピースサインで答えた。
「で、ゆずはどこ?」
「わ、わたし、は、成和、中・・・」
「え⁉︎あのお嬢様学校の⁉︎」
明衣は驚いた顔でゆずを見た。
「う、うん・・・」
「なんでまた港川に。あそこ大学までるでしょ?」
「そ、そうだけど・・・わたし・・・こんな、だから・・・ずっと女子校じゃ・・・」
「え?もしかしてめっちゃシャイとか?」
「う、うん。小さい頃から、ずっと人見知りで・・・男の人も、すっごく怖くって・・・」
周囲いる男子を見つけたゆずは、縮こまってしまった。
「女子校の子っているみたいね、そういう子」
「う、うん。でも、わたし、その中でも、ひどくって・・・このままじゃ、就職も・・・」
「で、共学の公立に入ろうって?」
「う、うん・・・」
「偉い!ゆず、あんた凄いじゃん!」
明衣がドン、と勢いよくゆずの背中を叩いた。
「えっ?えっ?」
「自分の苦手を克服しようとしてちゃんと行動できるって、あんた凄いよ!わたし、応援するね!」
「あ、ありがとう。め、明衣ちゃんって、その・・・かっこいいね」
ゆずは眩しそうに明衣を見上げた。
「そっかなぁ」明衣は嬉しそうだった。
「そうね、明衣、背も高くてすらっとしてて、スポーツ得意な男の子みたい」
彩香も一緒に歩いていた明衣を改めて見た。
「あー、それ、よく言われる。まあ、それなりに運動も得意だしね」
明衣はちょっぴり嬉しそうだった。
「やっぱりそうなんだ。中学ではなにやってたの?」
「中学んときはバレーボール。これでも一応アタッカーだったんだよ」
「凄い!じゃあ高校でも?」
「うーん、どうかなぁ。先輩に誘われてはいるんだけどね・・・ねえ、ゆずってちっちゃくてかわいいね」
話を続けたくなかったのか、明衣はゆずに抱きついた。
「だ、だきつかないでよぉ、明衣ちゃん」
「いいじゃん。なんかふわふわでもふもふで、ぬいぐるみみたいなんだもん」
「ぬいぐるみ・・・じゃ、ないもん・・・」
また抱きつかれたゆずは、顔を赤くしていた。
「うわ、しゃべり方もかわいい」
明衣はさらにもふもふし続けた。
「や、やめて・・・」
「明衣、いい加減にしなさい!」
見かねた彩香が止めに入った。
「あ、ごめん、またやりすぎちった」
明衣はぺろっと舌を出した。
「ねえ、彩香、さっきから思ってたんだけどさぁ、彩香ってめっちゃ見られてるよね」
「そう?二人がうるさかったからじゃないの?」
「そ、そうじゃないよ。さ、さいちゃん、見られてる」
ずっと周囲が気にしていた様子のゆずも同意した。
「あーやっぱゆずも思った?」
「う、うん」
「見られてるって・・・」
「彩香、あんた自分のことよくわかってないでしょ」
「じぶんのこと?」
「あー、やっぱりだよ。このね、ほっそりとしたウエスト、これ女子の憧れだよ」
明衣は彩香の腰を両手でつかんだ。
「め、明衣!」
急に腰に触れられた彩香は、恥ずかしそうな顔をした。
「それにそこから上下に、ほらこぉんな感じでぇ」
明衣は彩香のS字ラインを手で表現した。
「その上に、この清楚さが溢れてくるような笑顔。スカートからさりげなく見える、華奢な脚。髪の毛だってサラサラだし、私だって惚れちゃうよ」
と言いながら、明衣は彩香をうっとりと見つめた。
「ちょ、ちょっとやめてよ明衣」
「さいちゃん、周り・・・」
周囲の目が彩香に集まり、ほとんどが明衣の言葉にうんうんと頷いていた。
男子たちは彩香と目が合うと、恥ずかしそうに目をそらして、彩香から離れていった。
「ね、わかったでしょ。男だけじゃなくってさ、女子にも彩香の魅力がわかるんだよ。あんたそれくらいレベル高いってこと」
「そう、なのかなぁ」
彩香はまだ納得していないようだった。
「ねえ、もしかしてあんた姉妹いる?」
「うん。妹いるよ」
「妹の写真とかある?」
明衣の質問に、彩香は持っていたスマホを操作して、妹の画像を表示させた。
「あーやっぱり。ゆずも見なよ。妹ちゃん、彩香そっくりだわ。普段からこんな子見なれてたら、自分も普通とか思っちゃうんだろうね」
「ほんとだ、さいちゃんにそっくり。かわいい」
周囲の女子たちも彩香のスマホを覗き込んで「かわいい」「私もあんな妹ほしい」などと囁いていた。
「あのね、彩香。世の中にはこんなかわいい子はそうはいないの。だから、あんたもちゃんと認識しなさい!そんなんじゃお姉さん心配よ」
明衣はお姉さんにでもなったかのように、彩香の心配をした。
「う、うん・・・」
「わかればよろしい!まあ、これからは私が彩香を守るから。なんたって私の嫁だし!あ、ゆずは私の妹ね。ゆずも守っちゃうから」
「よ、嫁って・・・」
明衣は後ろに回って二人を抱き寄せた。

教室に戻ると、すぐにホームルームも終わり、今日の学校は終了となった。
生徒たちが帰り始める中、彩香はスマホの画面を見てメモを取っていた。
「彩香、どうしたの?」
「朝、学校に来る途中にアルバイトのポスター見つけたんだ」
彩香は拡大してあったポスターを明衣に見せた。
「もうバイトするの?しかも・・家政婦⁉︎」
「うち母子家庭だから、高校入ったらバイトしようって決めてたんだ。それに家事なら毎日やってるからそんなに大変じゃないし」
「にしてもさぁ。まだ初日だよ」
「うん、でもね・・・」
と言いながらまた移動させた画面を明衣に見せた。
「時給2000円!」
「そうなの。だから早く電話しなきゃって思ってね。他の人に取られちゃうでしょ」
「だね、急げ彩香!」
メモを取り終えた彩香は立ち上がって
「ちょっと電話するね」
と言いながら教室の端に行って電話をかけ始めた。
「さいちゃん、どうしたの?」
先生に呼ばれていたゆずが戻ってきて、明衣に尋ねた。
「彩香バイトするんだって。その電話してるの」
「ふーん。バイトするんだ」
ゆずはのんびりしていた。
しばらくすると、電話を終えた彩香が二人のところに戻ってきた。
「ねえ彩香、どうだった?」
「今日、これから面接することになった」
彩香は嬉しそうに答えた。
「さいちゃん、どんなバイトなの?」
「家政婦なんだ。週の3回くらいで、メインがお掃除と洗濯って言ってたから、そんなに大変じゃなさそう」
「そうなんだ。さいちゃんって家事得意なの?」
「うちでも毎日やってるから。妹と二人で」
「え!そうなの?」
「うん。うち母子家庭だから、お母さんは仕事で忙しいんだ。だから私たちができることみんなやってるの」
「凄いんだね、さいちゃん」
ゆずは眩しそうに彩香を見つめた。
「ぜんぜん、そんなことないよ」
「いやいや、私、洗濯なんてしたことないよ」
明衣がわざとらしく左右に手を振りながら否定した。
「わ、私も、お洗濯は・・・」ゆずも口ごもりながら続いた。
「やっぱそうだよねぇ」とゆずの言葉に頷き「家事できる美少女とか完璧じゃない?やっぱり私の嫁になってぇ」
明衣は彩香に抱きついた。
「ちょ、ちょっと明衣!」彩香は明衣をはがした。
「ゆずぅ。彩香にふられたぁ」今度はゆずに抱きつく明衣。
「めい・・・ちゃん・・・」顔を真っ赤にして恥ずかしがるゆず。
「あれ?なんかこっちもいいかも」小さなゆずを心ゆくまでもふもふと抱きしめる明衣だった。
 
「彩香、面接だよね。そろそろ帰る?」
明衣はゆずを抱きしめたまま、思い出したように彩香に尋ねた。
「そうだね、行こっか」
3人は教室を出て、昇降口へ向かった。
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