パイライトの誓い

藜-LAI-

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誓い

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 荒い息遣いで大きく肩を上下させると、ベッドに身を預けて天井を見上げる。
 ふと隣に目を向けると、同じようにぐったりとした様子で、火照った身体を冷ますように胸を上下させて大きく深呼吸している。
「はあ、はあ、はあ……はあ」
 激しく求め合ううちに身体が上気して、掛け布団が邪魔になって足元に蹴って退けた。
「寒くないか」
「はあ、あぁ……はあ、今は大丈夫」
 ふわりと笑顔を浮かべる修に啄むようなキスをすると、龍弥はベッドから立ち上がって冷蔵庫から炭酸水のボトルを取ってベッドルームに戻る。
 キャップを外して炭酸水を一気に喉に流し込むと、引き攣れた喉が潤ってやっと呼吸が落ち着いてくる。
 その様子を見ていた修にボトルを手渡すと、彼が体を起こすのを手伝って胸元に抱き寄せる。
 腕の中で喉を鳴らして炭酸水を飲む、修の髪を梳くように撫でると、紅い痕の散った首筋にまた唇を這わせて甘噛みする。
「ふふ。龍弥はそこが好きだね」
「お前の全部が好きだよ。重たいだろ俺」
「どうしてだい?好きな人に愛されることは重たいことじゃないよ」
 修は首だけ振り向かせると、龍弥の下唇を食んでチュッと吸い上げて口角を上げる。
 少し肌寒くなったのか、修は白く艶かしい臀部を突き出すように四つん這いになると、足元に偏った掛け布団を取ろうとしているらしい。
 その後ろ姿を襲いたい衝動に駆られるが、今夜はもうお互いに余力がないほどに抱き合った後だ。
 龍弥はペチンと音を立てて修の臀部を震わせると、そのままゆるりと双丘を撫でてから、腰に手を回して布団ごと修を抱き寄せた。
「またイタズラしようとしたのかい?」
「残念ながら気持ちだけな」
 二人で笑うと、抱き合ったまま手を重ねて次の休みはなにをしようかと他愛無い言葉のやりとりをする。
 
「そういえば龍弥はこのラダーブレスレットを着けっぱなしにしているのかい」
「ああ。これか?そうだな、いちいち外すのが面倒だから着けっぱなしだな」
 鈍く光るパイライトがあしらわれた、少し擦り切れたコレはいつから着けていたものだっただろうか。
「これはパイライトかい?」
「そうだな。前に石に詳しい奴が、石言葉が恋の戯れだって言ってたな」
 いつだったか、そんなことを聞いて自分らしくて笑いも出なかったことを思い出す。
「そうか。確かにそんな意味もあったね。ふふ、だけどパイライトの本当の石言葉はそうじゃないよ」
「……?」
 龍弥の手首にはまったラダーブレスレットを愛おしそうに撫でると、修は龍弥を振り返ってにっこりと笑う。
「修は石に詳しいのか?」
「少しね。知り合いが宝石を扱う仕事をしてて、一時期興味を持っていたから」
「じゃあ、修のバングルにも意味があるのか?」
 修の手首をなぞってバングルに指を掛ける。これはプラチナのはずだ。商品は永遠を意味する名前が付けられているが、プラチナにも石言葉のようなものがあるのだろうか。
「プラチナにも様々な意味合いがあるね。強い絆、多感な心、忠誠なる愛。とかね」
 結婚指輪なんかに使われるくらいだからねと、修は龍弥の手をなぞるようにバングルを掴む。
「僕の場合は、父から貰ったものだから、強い絆だろうね」
 そう言って修は前に向き直ると、手元の炭酸水を口に含む。
「なるほどな。で?パイライトの石言葉はなんなんだ。恋の戯れじゃないのか」
 龍弥は修のうなじにキスをしながら答えをせがむ。
「……危機からの回避、何があろうともあなたを守る。それがパイライトの石言葉だよ。とても龍弥らしくて似合ってるじゃないか」
 修は振り返って龍弥にキスをすると、柔らかく微笑んだ。
 ———何があろうともあなたを守る。
 龍弥が修に向ける心がそれを表すかどうかは分からない。
 けれど修の口からそう聞かされて、そんな風に彼を愛すことも悪くないと、龍弥は心の底から笑うことができのだった。


おわり。
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