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39.急がなくていいこともある
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朝食を食べ終えると、ひと風呂浴びてから宿を出て車でゲレンデまで向かう。
やはりその間も絋亮はテンションが高く、悠仁は何度笑わされたか分からない。
ウェアなどを一式レンタルしてスノーチューブで雪山を堪能すると、一度ランチで休憩を取る。
「なんでこういうところのカレーって美味く感じるのかな」
「腹減ってる時はなんでも美味いだろ」
「それは言い過ぎでしょ」
昼食もそんな調子で賑やかに済ませると、絋亮がどうしてもスノボで遊びたいと言い出して、悠仁が根負けした形でスノボを楽しむことになった。
鎮痛剤が効いていることも手伝ってか、好きだというだけあって絋亮はやたらとスノボが上手く、悠仁はハラハラしつつも感化されてスマホで何枚も写真を撮った。
大丈夫だと言うのでリフトで頂上付近まで登り、それを5、6回は楽しんだと思う。
「楽しいだろうけど、そろそろ脚の負担が心配」
「えー。あと一回!」
「だめ。それさっきも言ってただろ。あとはスライダー使ってチューブで遊ぶだけにするぞ」
「じゃあまた一緒に来るって約束してよ」
「そんなのなくても毎年連れてくるよ」
人目も憚らずキスをすると、案の定、絋亮は顔を真っ赤にしている。
「絋亮、本当にこっちからいくと照れるよな」
「……デレた時の振り幅がヤバいんだよ、悠仁は」
「そうかな」
答えるとまたキスをして口角を上げる。
シーズンとはいえ平日の昼間に利用客はそこまで多くないし、みんな遊ぶのに夢中で悠仁や絋亮を見ている様子はない。
「そういうのがズルいんだよ……」
「はい。じゃあボード返してチューブで遊ぶぞ」
一人にさせないように二人でボードを返却すると、最後にまたチューブを借りて、バカみたいに写真を撮りまくって日が暮れるまで遊び倒した。
宿に帰るとすぐに温泉で温まって、夕飯を堪能してまた温泉に浸かる。
「明日もう帰るとか寂しすぎる」
「毎年冬は来るし、ゆっくり遊ぶ時間作ればいいだろ。今年が最後って訳じゃないんだから」
「そうなんだけどね。なんか寂しいワケですよ」
「なに。もっとこういうことしたかったとか?」
絋亮を抱き寄せて膝の上に抱くと、背後からゆっくりと手を伸ばして胸元で指先を遊ばせる。
くすぐったがりながらも、時折蕩けたような甘い息を吐いて、絋亮の手が所在なげに動いて湯船の縁を掴む。
「硬くなってきた」
「んん」
ぷくりと隆起した尖端を摘むと、そのまま捻って指先で弄ぶ。
「お湯汚しちゃうから出ようか」
「……ん」
絋亮の昂りが熱を持ち始めたのを確認すると、うなじにキスをして抱きしめたまま風呂を出る。
身体を拭きながら浅いキスを繰り返すと、絋亮の身体が昂揚とは別に震えているのを感じる。
「疲れたし、このまま一緒に寝ようか」
「え……でも」
「うん、俺が抱きしめて眠りたくなっただけだから」
啄むキスをして絋亮を強く抱き寄せると、落ち着かせるように背中をさする。
絋亮の中で、悠仁と愛し合いたい気持ちがない訳ではないことが分かるからこそ、今はただ抱き合って眠るだけの選択が正しいと思う。
だから抱きしめる腕に力を込めて、陳腐に聞こえる言葉の代わりに想いを込める。
「どうしてかな……」
「どうしてだろうな」
「悠仁、愛してるよ」
「奇遇だな。俺も愛してるよ」
優しく笑ってキスをすると、ベッドに入って普段は寝苦しいと嫌がる腕枕で抱きしめると、悠仁の腕の中で絋亮は大人しくしている。
「俺さ、絋亮」
「ん?」
「好きとか、そういう感情に振り回される自分を、全然想像出来たことないんだわ」
悠仁は、自分が女の子に興味が持てないことに小学生の時には既に気が付いていた。
妹が居るからか、そういう意味でならば女の子が可愛らしいと感じることはあっても、それは決して恋愛感情でないことも自覚していた。
「自分が第一だし、誰かのためにとか。訳分かんないし、そういうのは理解も出来なかった」
「……なにかあったの?」
「いや、元々単純に感情が希薄なんだと思う」
「今は違うってことかな」
「そうだな。絋亮と親しくなってかなり変わった」
悠仁以外の誰かに向ける絋亮の笑顔に狼狽して嫉妬して、誰かを好きになる感情を初めて覚えた。
それを言うと絋亮は意外そうに目を見開く。
「チョロいよな。たった一度アクシデントで抱き合っただけの関係だったし、もっと割り切れると思ってたのにさ」
「ほだされた?」
「そうなのかな、分かんないけど。でも今はさ、絋亮のために出来ることがあるなら全部やってやりたい。もちろんお前のためじゃなくて、自己満足の方が強いんだけどね」
「悠仁……」
「望まれてなかったとしてもさ、俺が出来ることなら本当、なんでもやってやりたい。だけど実際は無力で不甲斐なさを痛感してる」
「そんなことないよ」
打ち消すように否定して絋亮が言葉を遮ると、悠仁はそんな強さに救われてると呟く。
「絋亮は立派に大人で、俺なんか居なくても立てちゃう。ふとした時にそう勘違いしそうになる自分が情けないんだ」
「…………」
「お前だって脆い部分があるし、それをそばで支えられるのって俺の特権なのに、こんなに誰かを好きになるのは初めてだから、どこまで踏み込んでいいのか分からない」
「悠仁……」
「俺はお前を愛してるよ、絋亮」
腕の中の絋亮を見つめると、思いが溢れ出して堪らない様子でそのままキスをした。
やはりその間も絋亮はテンションが高く、悠仁は何度笑わされたか分からない。
ウェアなどを一式レンタルしてスノーチューブで雪山を堪能すると、一度ランチで休憩を取る。
「なんでこういうところのカレーって美味く感じるのかな」
「腹減ってる時はなんでも美味いだろ」
「それは言い過ぎでしょ」
昼食もそんな調子で賑やかに済ませると、絋亮がどうしてもスノボで遊びたいと言い出して、悠仁が根負けした形でスノボを楽しむことになった。
鎮痛剤が効いていることも手伝ってか、好きだというだけあって絋亮はやたらとスノボが上手く、悠仁はハラハラしつつも感化されてスマホで何枚も写真を撮った。
大丈夫だと言うのでリフトで頂上付近まで登り、それを5、6回は楽しんだと思う。
「楽しいだろうけど、そろそろ脚の負担が心配」
「えー。あと一回!」
「だめ。それさっきも言ってただろ。あとはスライダー使ってチューブで遊ぶだけにするぞ」
「じゃあまた一緒に来るって約束してよ」
「そんなのなくても毎年連れてくるよ」
人目も憚らずキスをすると、案の定、絋亮は顔を真っ赤にしている。
「絋亮、本当にこっちからいくと照れるよな」
「……デレた時の振り幅がヤバいんだよ、悠仁は」
「そうかな」
答えるとまたキスをして口角を上げる。
シーズンとはいえ平日の昼間に利用客はそこまで多くないし、みんな遊ぶのに夢中で悠仁や絋亮を見ている様子はない。
「そういうのがズルいんだよ……」
「はい。じゃあボード返してチューブで遊ぶぞ」
一人にさせないように二人でボードを返却すると、最後にまたチューブを借りて、バカみたいに写真を撮りまくって日が暮れるまで遊び倒した。
宿に帰るとすぐに温泉で温まって、夕飯を堪能してまた温泉に浸かる。
「明日もう帰るとか寂しすぎる」
「毎年冬は来るし、ゆっくり遊ぶ時間作ればいいだろ。今年が最後って訳じゃないんだから」
「そうなんだけどね。なんか寂しいワケですよ」
「なに。もっとこういうことしたかったとか?」
絋亮を抱き寄せて膝の上に抱くと、背後からゆっくりと手を伸ばして胸元で指先を遊ばせる。
くすぐったがりながらも、時折蕩けたような甘い息を吐いて、絋亮の手が所在なげに動いて湯船の縁を掴む。
「硬くなってきた」
「んん」
ぷくりと隆起した尖端を摘むと、そのまま捻って指先で弄ぶ。
「お湯汚しちゃうから出ようか」
「……ん」
絋亮の昂りが熱を持ち始めたのを確認すると、うなじにキスをして抱きしめたまま風呂を出る。
身体を拭きながら浅いキスを繰り返すと、絋亮の身体が昂揚とは別に震えているのを感じる。
「疲れたし、このまま一緒に寝ようか」
「え……でも」
「うん、俺が抱きしめて眠りたくなっただけだから」
啄むキスをして絋亮を強く抱き寄せると、落ち着かせるように背中をさする。
絋亮の中で、悠仁と愛し合いたい気持ちがない訳ではないことが分かるからこそ、今はただ抱き合って眠るだけの選択が正しいと思う。
だから抱きしめる腕に力を込めて、陳腐に聞こえる言葉の代わりに想いを込める。
「どうしてかな……」
「どうしてだろうな」
「悠仁、愛してるよ」
「奇遇だな。俺も愛してるよ」
優しく笑ってキスをすると、ベッドに入って普段は寝苦しいと嫌がる腕枕で抱きしめると、悠仁の腕の中で絋亮は大人しくしている。
「俺さ、絋亮」
「ん?」
「好きとか、そういう感情に振り回される自分を、全然想像出来たことないんだわ」
悠仁は、自分が女の子に興味が持てないことに小学生の時には既に気が付いていた。
妹が居るからか、そういう意味でならば女の子が可愛らしいと感じることはあっても、それは決して恋愛感情でないことも自覚していた。
「自分が第一だし、誰かのためにとか。訳分かんないし、そういうのは理解も出来なかった」
「……なにかあったの?」
「いや、元々単純に感情が希薄なんだと思う」
「今は違うってことかな」
「そうだな。絋亮と親しくなってかなり変わった」
悠仁以外の誰かに向ける絋亮の笑顔に狼狽して嫉妬して、誰かを好きになる感情を初めて覚えた。
それを言うと絋亮は意外そうに目を見開く。
「チョロいよな。たった一度アクシデントで抱き合っただけの関係だったし、もっと割り切れると思ってたのにさ」
「ほだされた?」
「そうなのかな、分かんないけど。でも今はさ、絋亮のために出来ることがあるなら全部やってやりたい。もちろんお前のためじゃなくて、自己満足の方が強いんだけどね」
「悠仁……」
「望まれてなかったとしてもさ、俺が出来ることなら本当、なんでもやってやりたい。だけど実際は無力で不甲斐なさを痛感してる」
「そんなことないよ」
打ち消すように否定して絋亮が言葉を遮ると、悠仁はそんな強さに救われてると呟く。
「絋亮は立派に大人で、俺なんか居なくても立てちゃう。ふとした時にそう勘違いしそうになる自分が情けないんだ」
「…………」
「お前だって脆い部分があるし、それをそばで支えられるのって俺の特権なのに、こんなに誰かを好きになるのは初めてだから、どこまで踏み込んでいいのか分からない」
「悠仁……」
「俺はお前を愛してるよ、絋亮」
腕の中の絋亮を見つめると、思いが溢れ出して堪らない様子でそのままキスをした。
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