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22.これはいよいよ恋ですね
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「とりあえずここじゃなんだし、早いとこ俺んち行こ」
「飯どうすんの」
「この前の中華料理屋は?」
「分かったよ。あそこ美味いし、良いよ」
アプリでタクシーを手配するまでもなく、大通りに出るとすぐにタクシーが捕まった。
慣れた様子でタクシーに乗り込む絋亮とは裏腹に、悠仁はこれでよく驚かれないなと感心してしまう。
タクシーの中では取り止めのない会話だけに済ませて、30分ほどの距離を移動すると、マンションの手前のコンビニで降りてタクシーが走り去るのを見送る。
悠仁はコンビニで適当に買い物を済ませると、先に家に戻った絋亮を追う形でマンションに向かう。
インターホンを鳴らしてロックが解除されたエントランスを抜けると、最上階の8階までエレベーターで上がり、ようやく辿り着いた部屋の玄関のインターホンを鳴らす。
「おかえり」
「ただいま?」
玄関に入るなり熱烈なキスを受け、唇に口紅の感触が残る。
「あらやだ」
「……わざとだろ」
衣装は脱いだようだが、メイクとウィッグはこれからのようだ。
「下着買ってきた?お風呂一緒に入ろうよ」
「一緒に?風呂でメイク落とすの?」
「いや、先に入ってて。落としたらすぐ入るから」
そうしてまた悠仁の頬にリップ音を立ててキスをする。
「俺もメイク落とし貸して」
「いいよ」
楽しげに笑って絋亮が答えると、ようやく玄関から移動して、前回は入ることのなかったヘドニス子の衣装部屋に案内される。
「ここが彼女の部屋。ちょっとこのままウィッグ外しちゃうね」
シンプルなドレッサーの前は、行く前に化粧をした名残なのか、お世辞にも片付いているとは言えない——いや、ぐちゃぐちゃに散らかって目も当てられない状況だ。
そんな中で椅子に座ってウィッグを器用に外すと、その辺に投げてあったブラシを掴んで適当に櫛を通し、消臭スプレーをありったけ吹きかけると、そのままフックに引っ掛けて吊るした。
「他の部屋見て信じてなかったけど、お前は本当に片付けとか苦手なんだな」
「信じてなかったの?俺本当にダメよ?」
言いながらネットを固定しているテープを外して、くしゃくしゃと丸めると、ドレッサーの横のゴミ箱に無造作に投げ捨てる。
「なんで部屋見せなかったか、なんとなく分かるわ」
「えー。散らかってるのもあるけどさー」
「この部屋も整頓したら維持できるものなの?」
「んーそうだね。この部屋は定期的に整理整頓しないと無理だろうね。だから諦めてる」
「諦めんなよ……」
せめて散らかった服と、投げ捨てられたストッキングや網タイツを回収すると、洗えそうな物を選り分ける。
「触って大丈夫なら、俺が片付けようか?」
「え、うそ!なに。本当に良いの?」
つけまつげを外してようやくドレッサーから立ち上がった絋亮が、そんな程度のことではしゃぎ出す。
「その代わり、体よくお手伝いしてくれる立場ならお断りするけど」
「え、うそ!なに。それって恋人になるってこと?彼氏??付き合ってくれるの!?悠仁それマジで言ってるの?」
「恐い怖い。いや顔面の圧がすげえから離れて?」
グッと力を入れて肩を押すと、今にも泣きそうな顔で絋亮が悠仁を見つめている。
「本当に良いの?俺こんなだよ?だらしないよ?」
「めっちゃ食いつくじゃん」
「あーん。俺、悠仁がイイよぉ」
「分かったよ。分かったから!泣くならメイク落としてから泣こうな」
「んー大好きぃ」
強烈なハグで抱きしめられると、また口紅でマーキングするような荒っぽいキスをする。
「じゃあ、続きはお風呂でね」
すっかりご機嫌な様子の絋亮の目が、ギラギラしているのは気のせいだろうか。
「飯どうすんの」
「この前の中華料理屋は?」
「分かったよ。あそこ美味いし、良いよ」
アプリでタクシーを手配するまでもなく、大通りに出るとすぐにタクシーが捕まった。
慣れた様子でタクシーに乗り込む絋亮とは裏腹に、悠仁はこれでよく驚かれないなと感心してしまう。
タクシーの中では取り止めのない会話だけに済ませて、30分ほどの距離を移動すると、マンションの手前のコンビニで降りてタクシーが走り去るのを見送る。
悠仁はコンビニで適当に買い物を済ませると、先に家に戻った絋亮を追う形でマンションに向かう。
インターホンを鳴らしてロックが解除されたエントランスを抜けると、最上階の8階までエレベーターで上がり、ようやく辿り着いた部屋の玄関のインターホンを鳴らす。
「おかえり」
「ただいま?」
玄関に入るなり熱烈なキスを受け、唇に口紅の感触が残る。
「あらやだ」
「……わざとだろ」
衣装は脱いだようだが、メイクとウィッグはこれからのようだ。
「下着買ってきた?お風呂一緒に入ろうよ」
「一緒に?風呂でメイク落とすの?」
「いや、先に入ってて。落としたらすぐ入るから」
そうしてまた悠仁の頬にリップ音を立ててキスをする。
「俺もメイク落とし貸して」
「いいよ」
楽しげに笑って絋亮が答えると、ようやく玄関から移動して、前回は入ることのなかったヘドニス子の衣装部屋に案内される。
「ここが彼女の部屋。ちょっとこのままウィッグ外しちゃうね」
シンプルなドレッサーの前は、行く前に化粧をした名残なのか、お世辞にも片付いているとは言えない——いや、ぐちゃぐちゃに散らかって目も当てられない状況だ。
そんな中で椅子に座ってウィッグを器用に外すと、その辺に投げてあったブラシを掴んで適当に櫛を通し、消臭スプレーをありったけ吹きかけると、そのままフックに引っ掛けて吊るした。
「他の部屋見て信じてなかったけど、お前は本当に片付けとか苦手なんだな」
「信じてなかったの?俺本当にダメよ?」
言いながらネットを固定しているテープを外して、くしゃくしゃと丸めると、ドレッサーの横のゴミ箱に無造作に投げ捨てる。
「なんで部屋見せなかったか、なんとなく分かるわ」
「えー。散らかってるのもあるけどさー」
「この部屋も整頓したら維持できるものなの?」
「んーそうだね。この部屋は定期的に整理整頓しないと無理だろうね。だから諦めてる」
「諦めんなよ……」
せめて散らかった服と、投げ捨てられたストッキングや網タイツを回収すると、洗えそうな物を選り分ける。
「触って大丈夫なら、俺が片付けようか?」
「え、うそ!なに。本当に良いの?」
つけまつげを外してようやくドレッサーから立ち上がった絋亮が、そんな程度のことではしゃぎ出す。
「その代わり、体よくお手伝いしてくれる立場ならお断りするけど」
「え、うそ!なに。それって恋人になるってこと?彼氏??付き合ってくれるの!?悠仁それマジで言ってるの?」
「恐い怖い。いや顔面の圧がすげえから離れて?」
グッと力を入れて肩を押すと、今にも泣きそうな顔で絋亮が悠仁を見つめている。
「本当に良いの?俺こんなだよ?だらしないよ?」
「めっちゃ食いつくじゃん」
「あーん。俺、悠仁がイイよぉ」
「分かったよ。分かったから!泣くならメイク落としてから泣こうな」
「んー大好きぃ」
強烈なハグで抱きしめられると、また口紅でマーキングするような荒っぽいキスをする。
「じゃあ、続きはお風呂でね」
すっかりご機嫌な様子の絋亮の目が、ギラギラしているのは気のせいだろうか。
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