据え膳食わぬは男の恥だが喰っていいとは言ってない!!

藜-LAI-

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12.思わぬ人からのメッセージ

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 メールを開くと、投稿型のSNSに個別メッセージが来ていると通知が入っている。基本的にトラブルを避けたいので個別メッセージはロックを掛けていたはずだが、誰からだろうか。
 よくよくメールを見てみると、届いているのはHaL宛に、喰らいMAX・ヘドニス子さんからと書いてある。
「えっ」
 悠仁は思わず動揺して声を上げる。
 今までフリースペースでは気軽にやり取りしていたが、個別メッセージなんて初めてのことだ。本人を装った悪質なイタズラかも知れない。
 そう思って悠仁は咄嗟にスマホでHaLのアカウントにログインする。
 いつもは家に置いてあるタブレットでしかログインしないので、設定したアカウント名やメールアドレス、パスワードの入力に手こずりながら、なんとかログインすると、確かに未読の個別メッセージがある。
「ん?返信溜まってるな」
 個別メッセージを開く前に、投稿へのリアクションコメントが来ている方を先に確認して目を通す。
 大半は慶太郎や仲のいいフォロワーからで、内容も中身もないふざけた返信コメントが多い。そしてその中にヘドニス子からの返信コメントもいくつかあった。
 昨夜、彼女を気遣っておやすみコメントを入れたすぐ後に、返信コメントが返ってきていたようだ。
 とても落ち込んでいたのでほっこりしたとか、少しコメントのやり取りが出来ないかと続き、最後にノミしますねと書かれている。
 ノミ——ノミネーション、つまり指名。個別メッセージを送るという隠語だ。
 それらを確認してから手紙のマークをタップすると、ヘドニス子からの個別メッセージが表示された。
〔急にごめんね。いつも色々と気に掛けてくださってありがとうございます。少しフォロワーも増えて、前みたいな会話のやり取りが気軽に出来なくなって来たので、今度からはこっちも使わせてもらいますね〕
〔忙しいのかな。ごめんね。ノミネーションが嫌だったら言ってくださいね〕
 何件か、悠仁に配慮するようなメッセージが並んだ後に、謎のオッサンが踊り狂ってるGIF画像が添付されている。
 これはどういう意味だろうか?
 ジワジワとツボになってくる画像を見つめながら、悠仁は慌てて返信を打つ。
〔返信遅くなってしまってすみません。個別わざわざありがとうございます。昨日は仕事が忙しくてすぐ寝てしまいました。今日も少し忙しくてログイン出来ず、今頃になってすみません。またお話ししましょうね〕
 何度か内容を確認して送信ボタンをタップする。
「あー。ビビった」
 確かに知り合った時に比べたら、ヘドニス子のフォロワーは2倍以上に増えて、今やかなりの売れっ子なんだと思う。
 最初の頃は普通に出来た会話も、確かに少しオブラートに包んだり、以前よりも他人行儀なやり取りが増えていたのは事実だ。
 悠仁は忘れないうちにスマホからHaLのアカウントをログアウトさせると、表アカウントに表示を切り替えてSNSをザッと流し見する。
「うっす。お待たせー。久々に湯船に浸かった」
「お。もう良いの?ちゃんと温まってきたのか」
「うん。凄いポカポカしてるよ。手握る?」
 風呂上がりの絋亮はキッチンでグラスに炭酸水を注いでくると、すぐに悠仁の隣に座って手を握る。
「本当だ、温かいな。ラーメン屋何時までなんだろ」
「ラーメン屋っていうか、夜中の3時くらいまで空いてる中華料理屋。何食べても美味しいよ」
「へえ。それは楽しみ。でも服借りないと、これじゃ寒いよ。まだ乾いてないよな」
「そうだね。よくて今まだ乾燥中。よし、じゃあ着替えて出よう」
 炭酸水を飲み切った絋亮は立ち上がると、サッとグラスを洗って片付け、そのまま二人で着替えて食事を食べに外に出た。
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